vanish14 | ナノ





vanish14

 いつもより三十分ほど遅くなっただけだ。それなのに、葵はひどく冷めた目で慎也を見た。
「じ、自習室で寝ちゃって……」
 慎也が言い訳すると、葵は腕をつかんで引いた。階段でつまづかないように、葵のペースで二階へと上がる。乱暴にベッドへ押さえつけられ、慎也は鞄を手放す。
 殴られると思い、腕で顔を隠した。だが、葵は部屋を出ていく。何をされるのか分からなくて、慎也は立ち上がると、部屋の扉を閉めようとした。
「慎也」
 鍵を閉める前に勢いよく扉を押されて、慎也はうしろへ倒れそうになる。
「またタバコのにおいなんかさせて……足りなかったのか?」
 不敵に笑った葵の手には、小さなボトルがあった。彼はピンク色の不自然な液体のキャップを開けると、慎也の上に馬乗りになり、口の中へその液体を入れた。慎也が飲むように、あごを押さえつけて、液体を注いだ後、口と鼻を押さえる。
 息を止められて、慎也は喉を動かすしかなかった。液体を飲み干すと、ようやく手が離れる。何を飲んだのか分からない。液体は甘ったるいピーチ味だった。葵が嬉しそうに笑う。慎也はベッドの上で、静かに泣いた。

 熱くなった体に葵の手が触れるだけで、慎也は狂いそうになる。まだ軽く勃起していた時に装着されたペニスリングが、肉に食い込んでいた。
 勢いのない射精は、絶頂を長引かせ、慎也の体を内側からただれさせる。この快感の痛みから解放されるなら、何でもしようという気になる。だが、それすら言葉にできなかった。
 慎也の口にはゴム製のギャグがはめられ、飲み込めない唾液が垂れ流しになっていた。媚薬で性的興奮が高まっている慎也は、アナルの中でうごめくローターに苦しんでいた。
 葵の手が勃起しているペニスをつかむ。ペニスリングが食い込んだペニスは赤くなっていた。精液で濡れたペニスに彼の指先が這うだけで、慎也は涙をこぼしながら絶頂を迎える。
 何度も何度も、慎也は心の中で謝罪していた。いくたびに胃が縮むようなきつい快感が突き抜ける。その射精は長く、どろどろとした精液が狭い尿道から押し出された。
 助けて。もう許して。
 視線で訴えても、葵はまったく慎也を見てくれない。どうしたら楽になれるか、慎也はただれた意識の中で考えた。だが、敏感になっている体も意識も、そう簡単には落ちない。
「俺だけを見ればいい」
 葵が耳元でささやいて、慎也にとっては凶器でしかないペニスを突っ込んでくる。アナルにはまだローターが入っており、その侵入は慎也に拷問を与える。
 声にならない悲鳴が喉を裂くように出る。
 おまえ、がんばり過ぎたんだよ、と要司が言った。がんばらなきゃ、ここで存在を認めてもらえない。手も足も拘束され、自由にならない状態で慎也はこらえていたものが噴出していくのを感じた。
 慎也は涙を流しているのに、小さく笑った。悲鳴は笑い声に変わっていく。笑っていても泣いているように見えた。
 葵が精を中へ放つ。彼はペニスをアナルへ突っ込んだまま、慎也の上で呼吸を整えた。ギャグを外される。慎也は涙を流しながら笑った。
「慎也、誰を愛してるんだ?」
 誰も愛してなんかいない。誰にも愛されていない。
 とても気になる人ならいる。だが、きっとこの思いは告げてはいけない。
 闇の中にきらきら光るピアスが見えた。きれいだと思う。思うだけなら許される。慎也は答えずに目を閉じた。

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