vanish9 | ナノ





vanish9

 慎也はアナルの中へ埋まったものを動かされる恐怖と戦いながら、要司の素性について正直に話すかどうか迷った。
 正直に話せば、コンビニへ寄ることさえ難しくなる。清陽の生徒ということにしておけば、学校の友達だから仕方ないと思ってもらえるかもしれない。慎也が頷くと、葵は携帯を操作して、メールを見せた。
「今週末、彼の家に行くのか?」
 慎也は首を横に振る。
「ことわっ、断る」
 葵が望む言葉を告げると、彼は満足そうに笑った。そして、バイブレーターのスイッチを入れる。先端部分は激しく上下運動を開始した。
「ぃ、アア、や、ぁあ、ンっ」
 慎也がどれだけ暴れても、動くのは体の一部だけで、腰を動かすとその分、バイブレーターも動いた。直腸の中でダイレクトに前立腺を擦り上げる先端部分の動きに、慎也のペニスが硬くなる。
 一度目の射精は早かったが、慎也はすでに葵とのセックスで二回射精していた。射精の後の怠い重たさが、ペニスの先に痛みを残す。バイブレーターは無慈悲にも一定の動きを維持するため、慎也の神経が休まることはない。
 葵は携帯電話を操作して、喘いでいる慎也の耳へ近づける。
「出たら、断るんだ」
 びくりと慎也の体が跳ねた。必死に口を閉じても、押し寄せる快感の波に抗うことができない。呼出音が続く。出ないで欲しいと願った。
「っあ、ンっア……っひ」
 耳の奥に要司の声が響く。
「ん? 慎也?」
「っ、ぅ……んぅっ、っ……」
 慎也は必死に声を殺した。涙と、下からは白濁がぼたぼたとシーツの上に落ちる。
「慎也?」
 遠くで要司を呼ぶ声がして、彼が「おかしいな」と言いながら、携帯電話を切る音が聞こえた。慎也の意識が落ちる。葵は切れた携帯電話を耳に当て、確かめてから、切電ボタンを押した。
 葵の手がうなだれている慎也の髪をつかむ。涙と汗で汚れた慎也の顔は赤く上気していた。
「慎也」
 名前を呼ばれて、慎也は濡れたまつげをまたたかせた。バイブレーターはまだ動いている。腰から引きつるような痛みがせり上がった。
「俺だけじゃ足りなくて、他の男を誘惑したのか?」
 ベッドに腰かけた葵が、指先で慎也の亀頭を擦る。敏感なそこは精液で濡れ、赤い部分が見えていた。尿道口のあたりへ葵が爪を立てる。
「っぃい、ひぃ、あ、あお、あおいっ、ごめんなさいっ、ごめんな、さっ、あ」
 誘惑をしたとか、していないとか、そんなことが問題じゃない。とにかく謝って、葵に許しを請わなければ、彼はもっとひどいことをする。それを慎也は身をもって知っていた。
「どうしたら俺だけを見る?」
 慎也はほの暗く光った瞳に気づかない。ボックスから小さなローターを取り出した葵は、まったく読めない表情で、慎也のペニスの先端へそれを装着した。外れないようにマジックテープがついたタイプのローターだった。
「もうすぐ母さんが帰ってくる」
 ローターのスイッチが入ると、慎也は狂ったように泣き叫んだ。葵がわざと部屋の扉を半分開けていく。義理の母親が二階まで上がってくることはないが、大きな声を出せば階下まで聞こえてしまう。
 大きく喘ぎ、泣きながら、慎也は出て行った葵を呼んだ。だが、葵は戻ってきてくれない。もう何度目か分からない精を吐く。快感ではなく痛みだけが体を支配する。玄関の扉が開く音がした瞬間、慎也の意識は白い闇の中へ消えた。

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