vanish4 | ナノ





vanish4

 ベッドに押し倒された後も、慎也はずっと泣いていた。おかしい、と思った時にはもうほとんど全裸に近い状態で、下半身に触れる冷たい空気に身をすくませた。
「何、してるの?」
 葵の手が自分のペニスに伸びている。慎也は泣くのをやめた。それほどの頻度ではないが、慎也はオナニーをしている。クラスの友達が、エッチな雑誌を持ってきて見せてくれた。どんなふうにするのか、知っているから、葵の手の動きに恐怖した。
「やだ、葵、何して……やめて」
 慎也が手を出して、葵の手に触れると、彼はようやく慎也を見た。だが、その視線に含まれる感情が危険なものだと分かり、慎也はただ見返すことしかできない。
「無理やりしたくないんだ。慎也、いい子だから、俺に任せて」
 葵の指先が再び慎也のペニスを扱きはじめる。人の手でされると、自分の手でするのとは異なり、羞恥心もあってか、すぐに射精した。
 義兄の手を汚した、という気持ちと彼の前で射精した情けなさで、慎也はまた泣きはじめる。だが、今度は泣いても、抱き締めてはもらえなかった。
 葵はポンプのついた浣腸器具を使って、慎也のアナルへ浣腸液を入れた。得体の知れない器具とアナルの中へ入ってきた液体に、泣き叫ぶ。義理の母親でもいいから気づいて欲しいと思った。
「母さんなら、買い物に出てる。夕方まで帰ってこない」
 絶望的な言葉の後、葵が慎也のアナルにポンプの注入口を突き刺したまま、体を抱える。
「やっ、やだ、葵、やめてっ」
 階段を降りている時、慎也の腹が大きな音を立てた。漏らしてはいけないという理性だけで必死にこらえる。
「あお、葵っ、は、はやくっ」
 トイレは二階にもあったが、葵は慎也をわざわざ一階へ連れていき、そこでポンプを抜いた。便座に腰を降ろした慎也は葵が扉を閉めた瞬間、気が緩み、中身を出す。扉を閉めていても音は聞こえているに違いなかった。泣きながら、自分で尻を拭い、水を流す。
 扉を開ける前に、葵が中へ入ってきた。手を引かれて今度は風呂場へ連れていかれる。
「葵、もうやめて……何で? 何でこんなこと」
 うまくお兄ちゃんと言えない慎也に、葵は名前で呼んでいいと言ってくれた。頼りになる優しい義兄が、どうしてこんなことをするのか、理解できない。
 シャワーを手にした葵は、慎也に尻を突き出すように言った。泣いて嫌がると、彼はとうとう手を上げた。殴られる痛みにさらに泣いて、やめてと懇願しても、彼はやめない。シャワーヘッドから放たれる温いお湯がアナルの中へ注がれる。
 何時間にも感じられたアナル洗浄が終わると、葵は慎也を抱えて部屋へ戻った。彼は入念にバスタオルをベッドシーツの上へ敷いた。慎也はその上に転がされる。殴られた箇所が赤くなっていた。また殴られたら、と思うと、慎也は震えながらベッドの上で待つしかなかった。
 葵が彼の部屋から戻ってくる。親指ほどの太さのローターとチューブタイプのジェルを持っていたが、慎也にはまだそれが何なのか分からない。

 大きく肩を揺さぶられた。担任教師が心配そうにこちらを見ている。
「大丈夫か、会田? 保健室、行くか?」
 成績もよく素行も問題のない慎也は教師達からの信頼もあり、顔色が優れない時はいつも保健室で休ませてくれる。
「……そうします」
 立ち上がった瞬間、アナルから背筋を抜けていくような痛みを感じた。ふらついた慎也に、驚いた担任が支えてくれる。
「すみません。大丈夫です」
 廊下から見えた空はあの日と同じくらい青かった。

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