ひみつのひ34 | ナノ





ひみつのひ34

 息が詰まる。呼吸を忘れていると、智章が背中に覆いかぶさる形で耳元でささやいた。
「ほら、息を吐いて」
 言われるがままに息を吐き、吐きつくした後、ゆっくり息を吸う。自分の中に智章を感じた。痛みはなく、圧迫感だけだ。ずっと後になって催淫効果のある潤滑ジェルを使われていたと知ることになるが、稔はまだ自分が淫らだからあまり痛みがないのだと信じていた。
「動くよ」
 アナルの中で智章のペニスが動きだす。大きく縁まで出ていっては、深く中まで突いてくる。時おり、強い衝撃が稔の前立腺を襲い、その度に稔はひときわ大きな声を上げた。
「アァ、ぅ、ア……ん、あ、ふ……ぁ」
 もういきたい。稔がいきそうになっていることに気づいた智章が、激しく突き上げてくる。ベッドのスプリングが鈍い音を立てた。
「っあ、ン、や、もう、っア、ああっ!」
 明るい陽射しがカーテンの隙間から差し込む。稔は目の端にその眩しさを捕らえた。快感がすべてを支配していく。自分のアナルが智章のペニスを離したくないとでも言いたげに締めつけているのが分かる。
「……すき」
 本当に小さくささやいた言葉は、ちゃんと智章の耳にまで届いていた。ほんのりと汗ばんでいる背中を彼の手がなでていく。余韻を楽しむように、彼は数回、稔の中でペニスを動かしてから、出ていった。ベッドの上で横になった稔は寝転んだまま、コンドーム外す彼を見つめる。
「おまえがずっと秀崇を見てたの知ってる。俺もずっとおまえを見てたから。こんなこと言わなくても、おまえはきっと許してくれるだろうけど、俺、また失くしたくないから言うよ」
 真剣な面持ちになった智章が近づく。稔はベッドの上に座った。
「ごめん」
 隣に座った智章が肩を抱き寄せる。
「どうしても、俺だけを見て、頼って欲しくて、細田達にシカトしろって言った。教師連中へは何も言ってない、おまえに暴力振るった奴らも知らない。でも、俺のせいには違いないから。本当にごめん」
 稔は智章の温かい腕の中で、しばらくは泣かずにいた。智章がすべてに関わっていないことは知っていたし、それが稔の心を救っていた。だから、彼から謝罪がなくても、もう稔の中では終わったことだった。
「どこにも行かないで」
 祈る言葉のように響いたのは智章の本心だった。稔は肩を抱く彼の手を取って握りしめる。
「どこにも行かないよ」
 智章が笑う。ブラウンの瞳がきらきらと輝いている。どんなに大人びて見えても、こういう時はやっぱり自分と同じだ。稔はほほ笑んで、見ないふりをするために目を閉じた。そっと押し倒される。優しいキスが温かい雨とともに落ちてくる。
「もっとしようか?」
 智章の言葉を拒否する理由はどこにもない。稔が目を開けて頷くと、智章がぺろりと稔の乳首をなめた。
 
 午後の授業をサボって、自由気ままに智章と愛し合える日がいつまで続くだろう。卒業したら、違う大学に行くかもしれない。智章はいずれ会社を継がなくちゃいけない。どこまで自分達は、この秘密の恋の火を絶やさず燃やし続けられるんだろう。離しちゃいけない。稔は智章の手をぎゅっと握る。智章の熱が稔の中で爆ぜる。稔はその爆ぜた炎が自分の中へ火をともし続ける気がした。

【終】

33 番外編1(2年生の二人)

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