ひみつのひ32 | ナノ





ひみつのひ32

 稔の日常が戻ってきた。机も椅子も元の位置に戻り、無視されることも暴力を振るわれることもない。クラスメート達は一定の距離を保っているが、それは智章を恐れてのことだった。

 智章の過保護ぶりは周囲を驚かせている。稔は休み時間のチャイムが鳴ると、廊下のほうへ視線を向けた。十分の休み時間ごとに智章はやって来る。彼の姿を見つけると、自然と立ち上がり、廊下のほうへ向かう。
 智章は今日もオシャレだ。ピンクのシャツを制服のシャツの下に着込み、その色に合わせて、ピンク色のヘアピンで前髪をとめている。
 休憩中、特に話すことがなければ、毎回互いの体に触れているだけだった。稔はそっと智章のシャツを握り、彼の甘い香りを楽しむ。
 稔の部屋に来た夜から、智章はほとんど毎夜、稔の部屋に泊まる。智章の口からは聞いていないが、稔にひどい行為をした彼は智章の同室者らしい。悠紀が教えてくれた。
 智章は稔のアナルの傷を気にして、セックスをすることはなかった。だが、それに近いことはしている。ペニス同士を擦り合わせたり、口でしたり、あるいは道具を使ったりするのは、実際にセックス以上に淫らに思えた。少しでも夜のことを思い出すと、その興奮がダイレクトに下半身へ伝わる。
「はしたないよ、稔」
 言葉で言われると、よけいに熱くなる。稔は智章を見上げた。視界がにじんでいく。
「……」
 チャイムが鳴りはじめる。
「細田」
 学級委員の名前を呼んだ智章は、指先で稔の髪をもてあそびながら言った。
「稔は早退って言っておいてくれる?」
 稔の位置からは見えなかったが、細田は智章に促されて、稔の鞄を渡した。

 まだ明るい内から、授業をサボって触れ合うのは悪いことだと分かっているのにやめられない。
「おまえが誘うからいけないんだよ」
 智章が前を寛げて座る。命令などされなくても、稔は彼の前にしゃがみ込み、チャックを下ろした。彼の前で物欲しそうな目をして誘い、喘ぐ時、それを目を細めて幸せそうに見ている彼をこっそり見て、稔は満たされる。どんな意地悪をされても、それが彼の愛し方だと思い、稔は受け入れた。
 舌の上で智章のぺニスを転がし、喉の奥まで飲み込むようにして吸い上げる。智章がしてくれるように、稔は舌を動かす。彼の指先が稔の髪をすいていく。
「いいよ……稔、離して」
 白い液体がぽたりと落ちた後、勢いよく出た精液が床を汚す。稔はサイドボードの上からティッシュを取った。
「藤」
「ん?」
 催促と思ったらしい智章は、素早くペニスの先端に付着した液体を拭う。そして、稔のことを抱えてベッドへ運んだ。
「あ、あの、もう」
 稔は自分でシャツのボタンを外す。恥ずかしいが、抱いて欲しいという気持ちを抑えられなかった。
「傷、治ったんだ。だから……しよう?」
 シャツを脱いだ後、自らクローゼットを開けに行くため、ベッドを降りた。智章が彼の私服や紙袋を持ってきていることは知っている。紙袋の中には互いが楽しむためのものがたくさん入っている。
 いつだったか見せられた浣腸器具を一つ手に取った。智章が苦笑する。
「一回できれいにはならないよ。やり方は分かる?」
 稔が首を横に振ると、智章が腕を引いた。

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