ひみつのひ28 | ナノ





ひみつのひ28

 すでに先走りが流れている稔のペニスはぬるぬるとした指先で擦られ、絶頂寸前だった。智章はわざと稔の指先とは違う動きで、彼の指を動かす。
「っア、ぃ、や、やっ、アァ、ん、ふ、ふっじ」
 稔は腹筋を使って体を少し起こすと、智章のズボンのチャックを下ろした。彼のペニスも大きく膨らんでいる。稔は彼のペニスに指先を絡めた。
「……欲しい?」
 智章の問いかけに稔は視線を上げた。アナルの傷は治っていないから入れないと言っていたが、気が変わったんだろうか。稔は痛いのは嫌だが、智章が入れたいなら、と頷いた。
「藤の……」
 指先に智章のペニスの脈打つ感覚が伝わってくる。
「藤が、いい。藤だけがいい」
 強い力で押さえつけられて、激しくくちびるを奪われた。離れた時に息を吸っても追いつかない。智章は何度もキスをして、舌で稔を翻弄する。
「っあ、ン、あッ」
 互いのペニスが触れ合い、稔はその触れ合いだけでいってしまいそうになる。せめて自分の手で、と稔が手を伸ばすと、智章がそおの手ごと互いのペニスをつかんだ。
「っや、ふ、っ藤、も、アァ、ぁ、アァっ」
 ペニス同士を擦り合わすように動かされて、稔は白い液体を吐きだした。智章も何度か腰を振り、擦った後、射精する。恍惚としながら智章を見上げた。うっすら額に浮かんだ汗が光る。どんな時でも、彼はきれいだ。

 ひどいことを言われた。ひどいことをされた。嫌われていると思った。
「稔」
 サイドボードからティッシュを数枚、取った智章が汚れを拭ってくれる。濡れてしまった衣服は脱がされた。クローゼットから新しい衣服を渡される。もうすぐ大浴場も開くから、汗も流せるだろう。智章が着替えるのを待って、ベッドから立ち上がると、彼が抱きしめてきた。
「あ、あの、藤、俺」
 藤のこと、嫌いじゃない、と言おうとしたら、ついばむようなキスをされた。
「言葉にしなくていいよ。目を見たら、分かる」
 智章はそう言ってほほ笑んだ。
「泣き虫だね」
 ぽんぽんと背中を叩かれる。悲しくて泣いているわけじゃない。智章の優しさが単純に嬉しかった。
「購買で何か買ってこようか?」
 稔は首を横に振る。
「俺、お金返さなきゃ」
「今度でいいよ」
 稔が眼鏡と汚れた衣服を持って扉のほうへ行こうとると、智章が先に立った。さっきの彼がまだいるんだろうか。急に怖くなり立ちすくむ。
「シャワー浴びたら、そっちに行っていい?」
 智章は振り返らず、同室者の扉を見据えている。
「……うん」
 きっと秀崇のところへ行くんだろうと思い、稔は頷いた。

 扉をノックすると、中から開けてもらえた。秀崇が笑って、おかえりと言ってくれる。稔は洗濯物を隠して、小さな声でただいまと告げた。稔の部屋の扉はすでに直っている。
「はい」
 秀崇から財布と携帯電話を渡された。朝も彼とは会っていたが、互いに急いでいて、本しか持っていく時間しかなかった。
「ありがとう」
「眼鏡、新しくしたんだ?」
「うん……藤が選んでくれて……」
「そっか」
「後で来るって言ってたよ」
「菅谷に会いに?」
 秀崇が茶化すように笑う。
「ち、違うよ! 遠峰に会いにくるんだよ」
 そんな自信過剰なことを、稔は考えられなかった。笑っている秀崇に背を向けて、部屋の中へ入った稔は携帯電話を見た。

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