ひみつのひ26 | ナノ





ひみつのひ26

 智章の昔の衣服を借りた稔は、二人で街を歩くことを不思議に思った。ほんの二週間ほど前、彼は稔のペニスにオナホールを装着した。あの時はこんなふうに二人で外出して買い物へいくなんて想像もしていなかった。
「大丈夫?」
 時おり、隣を歩く智章は稔の傷の具合を気にして聞いた。稔はそのたびに頷く。
 眼鏡は智章が選んだ店で作ることになり、フレームもレンズも智章が決めた。稔はどちらかといえば優柔不断で、すぐに物事を決められない。それにファッションセンスは、智章のほうがいい。彼が選べば間違いないと思い、任せた。
 ぶらぶら歩いているほうが、間が持つのに、智章は休める場所を探してカフェへ入る。街に出る時は智章の家の車を出してもらえたが、眼鏡の代金もカフェの料金も一度立て替えてもらわければならない。
 向かいの席でアイスティーを飲んでいる智章が、こちらを見ている気がした。裸眼ではよく見えないはずなのに、その分、感覚が鋭くなるのか、見られている気がするのだ。
「明日、部屋の扉、修理入ってる間、危ないから俺の部屋にいたら?」
 稔はストローから吸い上げた甘い野菜ジュースを飲み込む。
「え、でも、どうせ学校あるから、部屋にはいないけど……」
「おまえのクラス、明日、体育あるだろ? 明日はサボればいい」
 それが傷を負っている稔への気づかいだと分かるが、智章と違い、稔は成績が芳しくない。それにサボると授業の範囲のノートを見せてもらえないことが気がかりだった。
「俺、あんまり成績がよくないから、サボるなんてできないよ」
「そうなの? なら、俺が教えてあげる」
 さらりと言われて、稔は驚く。まるで友達みたいだと思った。
「だから、明日はサボって」
 にこりと笑って頼まれては、稔も断れない。小さく頷くと、智章は今まで稔の前では見せなかった優しいほほ笑みを見せた。

 新しい眼鏡はフレームが細いタイプのもので、よく見るとブルーだと分かる。すごく似合ってる、と智章に言われて、稔は照れた。そういうことをストレートに言う人間は今まで周囲にはいなかったからだ。

 智章は一時間目に遅れる形で登校した。稔は彼の部屋で机に向かって本を読みはじめる。暇だろうと思って、自分の部屋から借りていた本を持ってきていた。財布は秀崇にあずけたままなので、智章から小銭も借りた。授業が始まってから、こっそり自動販売機で飲み物を買っておいた。

 寮は校舎からそう離れていないため、チャイムの音もよく聞こえる。だが、昼を回る頃、稔の耳には何も聞こえなくなった。
 鍵を差し込む音で目が覚めた時、部屋は赤く染まっていた。いつの間に寝たんだろう、と稔は目を擦り、眼鏡をかける。開いた扉から智章が入ってきた。
「おかえ……り」
 智章は笑顔を見せたが、そのうしろにいた彼は、稔と同じように驚いていた。
「っな、何で智章の部屋にいるんだよ!」
 彼の声の大きさに、智章が振り返る。
「っあ、あ、お、おれ」
 稔は震えはじめた体を自分で抱きしめた。その反応に智章は鋭い視線を彼へやる。
「智章、何で?」
 彼は震える稔を見下して、智章に問う。
「こいつのこと、大嫌いって言ってたじゃないか!」

25 27

main
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -