ひみつのひ24 | ナノ





ひみつのひ24

 稔は学園の外に出ると、タクシーで智章の家まで行った。外出の届出を心配した稔に、智章は後から直接理事長へ電話すると告げた。どうして学園の外に出たのか、稔には分からなかった。
 だが、屋敷と言っていいほどの大きな家に着き、医者を呼んだと言われた時、ようやく理解した。智章は自分の傷の具合を心配しているんだろう。
 稔はソファーの隣に座り、紅茶を飲んでいる智章を横目に見た。秀崇達の言う通り、彼は不器用なのかもしれない。まだピョンと跳ねている寝癖にそっと手を伸ばした。彼が驚いてこちらを見ている。
「何?」
 稔は首を横に振る。本当に秀崇達が言ったことが正しいなら、智章は意外に可愛いと稔は思う。好きな子には意地悪してしまうなんて子どもっぽくていじらしい。

 手当ての後に飲み薬と塗り薬をもらった稔は、それをガラステーブルの上に置いた。アナルの傷をかばい、客室のシャワールームでシャワーを浴びてすっきりした稔は、用意されていたシャツとパンツを着た。少し大きいサイズだったが、今の体にはこれくらいが負担もなくていい。
 ぼんやりと窓から庭を眺めた。稔の家にも庭はあるが、ここは規模が違う。夕暮れの朱が緑を照らしていた。
「稔」
 智章もシャワーを浴びたようだ。まだ完全に乾いていないブラウンの髪が輝いている。
「何か飲む?」
 頷くと、智章は一度開いた扉を閉じた。しばらくすると、トレイに飲み物とお菓子をのせた智章が戻ってくる。
「もうすぐ夕ご飯だけど、食べたくなかったら、食べなくていいから」
 智章はソファーの前のガラステーブルにトレイを置き、ジュースとお菓子を並べる。そして、彼はクッキーを一つ食べた。もう一つ手に取り、窓際に立っていた稔に差しだす。
「あ、ありがと」
 稔がそれを口へ運ぶと、智章はカーテンを閉めた。テーブルから薬の入った袋を持って、視線だけで奥にあるベッドを示す。
「自分でやる」
 稔の言葉を無視して、智章は稔の腕を引いた。
「俺に薬を塗ってもらうのと俺の前でオナニー見せるのと、どっちがいい?」
 どちらも嫌だったが、稔がはっきりと選べずにいると、智章の手がパンツと下着を下ろした。
「ベッドの上でうつ伏せて」
 その格好は彼にされたことを思い出させる。
「っ、や、ふ、ふじ、お……お、れ」
 怖い、と言いたくても、体が異常に震えるだけで、言葉は出てこない。智章はいつになく真剣な表情で稔を見つめていた。ベッドに上がり、稔の隣に来ると、智章は空気にさらされている稔の臀部にそっと触れる。稔の体が大きく揺れた。
「大丈夫。薬を塗るだけだよ。ひどいことはしない。痛いこともしない」
 稔は目の前の智章を見返す。完全に信じることはできないが、智章が悪い人間でないことは知っている。考え込んでいると、智章は吹きだした。
「俺は嫌われてるんだね。この手が秀崇の手なら受け入れた?」
 どうして今、秀崇の名前を出すんだろう。だが、その問いの答を稔は理解していた。

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