ひみつのひ20 | ナノ





ひみつのひ20

 何で、どうして、自分がこんな目にあうのか。
 稔はぐるぐると回る視界の中で思考さえ奪われそうになる。突きだした腰から臀部にかけてが空気にさらされる。いくらローションで濡らしても、何の準備もなくアナルへ入れれば裂けてしまう。
 涙と鼻水で顔面を汚しながら、稔はその瞬間が永遠に来ないことを祈った。
「っ!」
 彼に背を向ける形だから、稔にはどのタイミングで張り型がアナルに入ってくるのか分からない。ぐっと詰まり、背筋を伸ばすように腰を引くと、彼が笑った。
「そうすると、よけい締まるよ? それとも、こじ開けられるのが趣味なわけ?」
 アナルから脳天を駆け抜けた衝撃は声にならなかった。痛いというより熱い。彼は押し込むだけ押し込むと、悶えている稔には構わず、足で張り型を押した。
「っぅ、んっ、……んーっう、っう、ん」
 下着とズボンがちょうどひざの上あたりまで下ろされた状態で、稔はそれ以上足を開くことはできない。彼は張り型を足で押して、稔を苦しめた後、手で一度張り型を取りだした。稔のアナルは当然傷ついていて、張り型には血がついている。
 彼はもう一度それをアナルへ突っ込んだ。稔はもう拘束されていなくても動くことはできない状態だ。床に頬をつけたまま、目を閉じる。たぶん、これは夢で自分はまだ寝ているだけだと思った。

 息が苦しい。鼻の奥が痛くて、稔は目を覚ました。右手が口に伸びる。その時ようやくアナルの激しい痛みに気づいた。少しでも体を動かすと、痛みは全身を貫くように駆けめぐる。
 ガムテープをはがすと、堪えていた吐き気が一気に押し寄せた。そのまま床の上に嘔吐する。稔は四つ這いになり、右手をうしろへ回した。アナルに突き刺さっている張り型に触れる。 ぼろぼろと涙が落ちた。息を止めて、張り型を引っ張るが、なかなか抜けない。もしかしてずっとこのままなのかと混乱した稔は、無理やり体を立たせた。ぐっと締まるアナルに張り型が食い込んで、稔は意味のない悲鳴を上げる。
 机に手を伸ばすと電気スタンドがついた。稔は足を開き、手前から張り型を引く。目を閉じて、指先で思いきり引き抜く。張り型の落下した音があまりにも大きくて、稔は体をすくませた。無意識のうちに下着とズボンを上げた後、稔はベッドまでたどり着けず、その場に崩れた。

 次に目が覚めた時、稔ははっきりと風邪を引いたと自覚した。扉をノックする音に、慌てて起きあがる。部屋の中を誰にも見せられない。
「菅谷、すごく顔色悪い。熱は?」
 秀崇が扉の隙間から手を伸ばしてくる。
「へ、へい、き」
 短く速い呼吸を繰り返しながら、稔は笑う。最近笑えなかったのに、今は驚くほど簡単に笑えた。秀崇の手が額に当てられる。
「嘘つくな。熱、かなり高い。ちょっと待ってて」
 もう着替えている秀崇は財布と鍵を持って扉から出ていく。きっと売店へ行ったんだろう。
 稔は扉に背を向け鍵をかけると、床の汚れをタオルを出して拭いた。血のついた張り型はごみ箱へ入れてから、ごみ袋ごと縛ってクローゼットの中へと隠す。
 熱があるのは確かだ。ふらつきながら、ベッドへダイブする。目を閉じると、頭痛が激しくなった。

19 21

main
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -