ひみつのひ19 | ナノ





ひみつのひ19

 智章は小さな笑みを浮かべた。
「そうだよ。言っただろ、後悔するって」
 稔の頬を涙が滑っていく。違うと言ってくれると、どこかで信じていた。関与していないと言って欲しかった。稔は嗚咽を堪えて、拳を握りしめる。
「っ、す、セックス、し……て」
 これでいい。これでもう痛い思いはしないで済む。白い指先があごをへ触れた。無理やり上を向かされる。智章のブラウンの瞳が輝いている。それは喜んでいるように見える輝きだった。だが、次の言葉で智章は稔を地に叩きつけた。
「嫌だね。おまえとするなんて罰ゲームじゃあるまいし」
 顔を歪めた稔に智章はにこりと笑った。
「でも、明日、おまえが俺をその気にさせてくれるなら、抱いてやってもいいよ?」
 何も言えず、嗚咽を上げて涙を流した。悔しいのか、悲しいのか分からない。
「そんなに泣くな。そういう顔は俺の前だけにしてくれないと」
 稔の涙を智章はポケットから取りだしたハンカチで拭う。
「明日、俺の部屋ね」
 ハンカチを握らされ、智章は教室内に戻った。稔はぎゅっとハンカチを握る。廊下の角を曲がり、人気がなくなったところで、しゃがみ込んで新しい涙を流した。ハンカチからは彼と同じ甘い香りがした。

 稔は読書数は多いが、そんなに成績がいいほうではない。最近は授業も上の空だったから、遅れが出ていた。それを取り戻すために机にノートと教科書を広げる。その前に、と携帯電話をチェックした。悠紀からメールがあった。
 何かあったら隠さずに言って欲しい、自分達は親友だと書いてある。稔は目を擦って、ありがとうと返す。親友だから言えないと思った。

 寮には呼び鈴はなく、訪問者はたいてい扉をノックする。勉強を始めて少しした頃、ノックが聞こえた。稔は秀崇が出てくれるだろうと思い、そのまま視線を教科書へ落とす。またノックされた。秀崇はいないんだろう。仕方なしに扉を開けにいく。
 開けた瞬間、大柄な生徒達が中へ入ってきた。
「っあ」
 扉の前から、自分の部屋の扉へ押さえつけられる。目の前には彼がいた。
「見た目と違って大胆なんだ? 聞こえたよ、智章にセックスしてって言ってたの」
 サァッと血の気が引くのを感じて、稔は小さく震える。その言葉が出るまでの経緯を話したかったが、聞く耳を持ってくれないだろう。
 左右を生徒達に拘束されたまま、稔は自分の部屋に無理やり押し込まれた。
「あー、心配しないで。こいつらもおまえに入れたいとか思えないらしいから」
 彼は袋からグロテスクな張り型を取りだした。
「や、やだ、な……なん、で……」
 それをどこに入れられるか、稔はすぐに悟った。体をねじっても、足をばたつかせても、彼らの拘束は外れない。うつ伏せにされ、尻だけを突きだすような格好をとらされる。
「やだ! 誰かっ、だっ、ん、ぅ、ぐ」
 彼が前に回り込み、稔の口にガムテープをはる。抵抗した際に、眼鏡はどこかへ飛んでいった。
「いちおう、ローションくらいは使ってあげる」
 稔の前で彼が張り型にローションをかけた。黒い張り型は光っている。怖くて、胃を握り締められるような気持ちになる。助けを呼びたくても、ガムテープがそれを阻んだ。

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