ひみつのひ13 | ナノ





ひみつのひ13

 おいで、と言われて、稔はペニスに装着しているオナホールをとってもらえるのだと思った。ベッドに腰を降ろしている智章のそばへ行くと、彼は稔のジーンズと下着を奪う。それから、上のシャツにも手が伸びた。
「藤、これ」
 外して欲しいと視線で訴えると、ようやく長い指先がオナホールを固定しているガムテープに触れた。
「っつ」
 肌に張りついていたガムテープをはがされ、痛みに顔をしかめる。オナホールから解放された稔のペニスはまだ元気だった。それが恥ずかしくて隠そうとすると、両腕をつかまれる。
「見られると興奮する?」
 稔は大きく横に頭を振る。智章に引かれて、ベッドへ押し倒された。普段ならありえない角度から彼を見上げている。カーテンは引かれたままだったが、差し込む光のせいか、彼の髪も瞳も柔らかいブラウンに染まる。首筋の肌の白さがまぶしくて、稔は目を閉じた。
 智章の手が眼鏡を外す。一つ一つの部位を確かめるように、智章は稔へと触れた。他人に服で隠れている場所を触られると、くすぐったくておかしくなりそうだ。稔が体を強張らせていると、智章の小さな笑い声が聞こえた。
 稔が目を開くと、智章のつむじが見える。
「っひゃ」
 乳首をなめられて、稔は思わず声を出した。智章がやめる気配はなく、左右の乳首をなめながら、指先で優しく太股をなで上げる。稔は気持ちいいと感じた。それが自分の体質によるものなのか、智章の経験によるものなのか分からない。
 ただずっとこうされていたいと思わせる愛撫だった。時折、智章の身につけた甘い香水が控えめに香ると稔は彼との関係を錯覚しそうになる。
 彼のものになれ、という命令の真意は何だろう。嫌っている相手にこんなことはできない。だが、その逆はどう考えてもありえない。稔と智章に接点はまったくなかった。
 考え事をしていたため、キスへの反応が遅れる。さっきは気持ち悪いと感じたキスなのに、今はそう感じない。自分は彼の言う通り、誰にでも反応するようないやらしい人間なんだろうか。
「うしろを向いて」
 ベッドから降りた智章はクローゼットを開けて、中から紙袋を取りだした。
「アナル洗浄したことある?」
 稔が驚いて振り向くと、智章は楕円形のポンプの先にチューブのついた浣腸器具を見せる。
「いやだ」
 同性同士がどこを使ってどんなふうにセックスするか、稔は知っている。だが、それは好きな人としたいと思った。キスはもう奪われている。この先、秀崇と付き合うとも思えない。それでも、今、智章と寝ることは考えられなかった。
「そこに四つ這いになって」
 いやだという稔の言葉を無視して、智章が準備を始める。
「何でもするって言ったよね? 稔は嘘つくの? それともまだ、秀崇がいいと思ってる?」
 そうじゃない、と言いたくて、稔は智章を見た。裸眼だと、すべてのものの輪郭がぼやけていた。
「また?」
 それが涙についての問いかけだと気づいて、稔は目を擦った。

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