ひみつのひ12 | ナノ





ひみつのひ12

 何度も信号が青になり、そのたびに稔は渡ることができずに、ただ点滅を見つめる。智章は帰ってしまったんだろうか。稔は近くの植え込みへ腰を降ろして、なるべく動かないでいた。
 ひざを抱えるようにして心を落ち着かせようと目を閉じる。智章こそが今、稔をこんな目にあわせているのに、稔は彼のことしか考えられなかった。どうしてひどいことばかりするのか聞きたいと思っている。だが、本人を前にしたら、言葉なんか出てこない。
 不意に悠紀のことを思い浮かべた稔は、携帯電話を出した。彼なら迎えに来てくれるはずだ。連絡を取るため、携帯電話をいじっていると、目の前に影ができる。
「誰にかけるの?」
 答えを待たずに智章が腕を引っ張る。無理やり立たされて、稔は小さな声を漏らした。
「まだたってるの?」
 智章が笑った。まるでいたずらを見つけたような笑みで、もともと整った顔だちの彼がそういう笑みを見せると、思わず目を奪われる。
「で、誰にかけるの?」
「あ、悠紀に……」
「星川?」
 智章の確認に稔は頷いた。
「へぇ。星川は平気な人なんだ?」
「え?」
「大通りの真ん中で、チンコたてながら、腰振っちゃうような人間を迎えにこれるんだねって、聞いたんだけど」
「っちが! あ、やっ」
 オナホールが動きだす。稔は前のめりになり、智章の胸元へ倒れ込んだ。
「腰、動いてる」
 智章の言葉に、稔は彼のシャツを握る手に力を込めた。
「とめて、とめてっ」
 人目なんて気にしていられない。稔は智章にすがった。
「何でもしてくれるんだろう?」
 稔は頷いた。
「じゃあ、俺のものになって」
 意味が分からなかった。だが、一秒でも早くとめて欲しくて稔は何度も首を縦に振る。
「体だけじゃないよ? 心もだよ?」
「っあ、アァ、わかっん、なっ、なるか、ら、ア、とめ、っ」
 何度目の絶頂だろう。稔はいっそう智章のシャツを握り、その胸元へ顔を埋めた。甘い香りがする。眼鏡をかけたまま、稔は現実から逃避するために目を閉じた。
 優しく髪をなでられる。
「そのままでいい。タクシーで戻ろう」

 稔はタクシー内でも、ずっと智章の胸に頭をあずけた。やがて、学園前に着き、寮へ戻る時でさえ、彼は抱える形でゆっくりと歩いてくれた。
「脱いで」
 智章の個室は稔の個室と似ている。カーテンを好きな色につけ替える生徒もいる。壁に好きなグラビアアイドルやバンドのポスターを貼る生徒もいる。智章の部屋は何もなかった。稔の部屋と大して変わらない。それが自分達の共通点のように思えて、稔は怖くなった。
 さっきはオナホールに与えられる快感でおかしくなり、智章の要求に頷いた。だが、冷静になると、自分は大きな過ちを犯したのではないかと思う。
「稔」
 初めて下の名前で呼ばれて、稔は視線を上げた。

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