ひかりのあめ27 | ナノ





ひかりのあめ27

「それ、指輪ですか?」
「うん」
 少し顔を赤らめた慎也が、すぐに下着の中へ指輪ごとネックレスをしまう。リーダーは二十七歳だとホールの先輩から教えられていたが、彼は自分と同い年くらいにしか見えなかった。噂によると、彼にはビールが大好きな年上の恋人がいるようだ。まだ知り合って短いが、指輪を手にはめず、ネックレスにして隠すのは彼らしいと思った。
「きれいな指輪ですね。慎也さんにぴったりです。それじゃ、お先です」
 何となくいい気分で裏口から外へ出た俊治は、表へ回って自転車を押した。風は冷たいが、晴れていて、このまま帰るのはもったいないと思う。俊治は以前に聞いたショッピングモールの方向へ自転車をこいだ。
 博人は二月生まれで、もうすぐ誕生日だった。初めて体を重ねてから、一緒にクリスマスと正月を過ごして、二人の関係はより深くなった。ほんの半年前まで、自分にこんな幸福が訪れるとは夢にも思っていなかった。

 日曜ということもあって、ショッピングモールは混んでいた。メンズファッションフロアへ行こうと、案内板を見ていると、いきなり、右腕をつかまれる。驚いて顔を上げると、オーナーが笑って立っていた。
 俊治は突然のことに言葉を失っていた。無理やり犯されてから、会うことは初めてだ。
「店、辞めた後から浅井さん来なくなったけど、おまえ、あいつのところにいるのか?」
 つかまれた腕を強く引かれる。一階の奥にあるレストルームへ着くまで、オーナーは腕を離してくれなかった。
「辞めたんじゃないです。オーナーがクビにした……っ」
 出入り口から離れているからか、レストルームには俊治達しかいなかった。俊治は殴られた頬へ手をやる。口の中を噛んでしまい、血の味が広がった。
「何でだ? 俺を選ばずにあいつを選んだ。何で……?」
 俊治はもう一度振り上げられた拳を避けようと目を閉じて腕で顔を隠す。衝撃の後に目を開いて、レストルームから出る方法を考えた。オーナーが道をふさいでいるが、まっすぐに走るしかない。覚悟を決めて、駆けると、ダウンジャケットのフード部分を引っ張られてムチウチのような状態になった。オーナーがそのままフード部分を引っ張って、俊治を右奥の個室へ押し込む。
「逃げようなんて、いい覚悟だな。優しくしてやった俺を捨てて、よくあいつを選べたもんだ。金か? 有名外資系企業の弁護士様だもんな。いくらもらったんだ?」
 頭を殴られて、個室の壁にまた逆の頭部をぶつけた俊治はくらくらしながら、目の前のオーナーを見た。博人と自分の関係は金ではない、と言いたいが、うまく言葉が出てこない。オーナーは不気味な笑みを浮かべると、俊治の頭を流水レバー付近まで押した。右手でジーンズの前ボタンを外され、下着ごと、下ろされる。両足の間にちょうど便座が入るように足を開かされた。
「っ、や、やだ」
 暴力に放心していたが、「すごく嫉妬深いよ」と言った博人の言葉を思い出す。俊治が頭を上げようとすると、強く押された。右目がレバーに当たる。
「拒否できないだろ。もし、あいつが男を囲ってるってリークされたらどうするんだ? それも十三歳も年下の男だ。しかも、その男はアパートの部屋をゴミ溜め場にして、男に体を売ってた。考えてみろよ。おまえがあいつに釣り合うような人間かどうか」
 脅しだと分かっている。だが、言われたことは事実だった。
「っあ、や、いたっ、ぃ……」
「大きな声を出すな」
 オーナーのペニスが無理やりアナルを押し開く。あまりの痛みに涙があふれ、声を押さえることができなかった。オーナーが体を揺するたびに、右目がレバーへ当たる。
「一週間以内に、俺のところへ来い」
 体内へ放たれた精液に震えながら、俊治はその場へ崩れた。オーナーが扉を開けて出ていく。陽気な館内アナウンスを聞きながら、俊治は小さくすすり泣いた。

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