ひかりのあめ26 | ナノ





ひかりのあめ26

 決して乱暴にではなく、だが、強い力でソファに押し倒された俊治は、目の前の博人を見つめた。
「俺、すごく嫉妬深いよ」
 博人の手が脇腹から胸へと這い上がってくる。一度、胸まで上がった手は背中へ回り、俊治の体を少し持ち上げた。今までの優しいキスとは異なる、激しい口づけを受ける。しだいに息が苦しくなり、俊治は喘いだ。
「愛してもいい?」
 俊治は答える代わりに博人を抱き寄せた。博人の中心と自分の中心が触れ合う。互いに勃起しているのが分かった。博人が体を抱えて、寝室まで連れていってくれる。主寝室には博人が使っているクイーンサイズのベッドがあった。ベッドの上で服を脱ぎ、全裸になって抱き合うと、中心の熱がより感じられた。
 俊治にとって、こんなふうにセックスをするのは初めてのことだった。透は彼本位の抱き方しかしなかった。オーナーとは本当に心を通わせて寝ているわけではなかった。俊治は何度もくちびるや体にキスを受けながら、博人が欲しいと思った。
 博人はいったんベッドを下りて、クローゼットを開けると、中からコンドームとジェルを取ってきた。
「ごめん、余裕ない」
 博人はそう言ってかすかに笑うと、すぐにジェルを彼の指へ絡めて、俊治のアナルを解す。
「うしろからのほうがいい?」
 負担を考えたのか、博人は指を抜いた後、仰向けになっている俊治に聞いてくれた。
「……顔が、見えるほうがいい」
 俊治がそう言うと、博人は俊治の両足首を引いて、体を近づける。
「俊治君」
 体を前へ傾けた博人はコンドームを被せたペニスを俊治のアナルへ立てた。少しでも挿入がきつくないように、彼は名前を呼びながら、上半身へキスを落としてくれる。
「っあ、ぅ……ん、い……あ、ア」
 浅い呼吸を繰り返している俊治の額を、博人の指先がなでていく。
「動くよ」
 室内は一定の温度に保たれているが、緩く動き出した博人の額からは汗が流れていた。それが動くたびに、きらきらと光に反射する。俊治が手を伸ばそうとすると、彼はその手を握り返してくれた。
「ア、アァ……っ」
 突かれるたびに頭の奥で快感が弾けるようだった。
「っあ、ひ、ひろ、と……さん。っも、もっと」
 快感だけを追いかけながら、欲しいものを口にすると、博人が深く激しく突いてくれる。俊治が自分の腹の上に射精すると、博人もひときわ大きく突いて中で止めた。上がった呼吸をおさめながら、博人がそっと出ていく。
 俊治の右側に転んだ博人は、俊治の体を抱き寄せた。
「あぁ、もう」
 博人の右手が俊治の左尻をなでる。
「やっと、だ。出会った時からずっとこうしたかった。もう必死で下心隠して、いい大人の振りをしてたんだよ」
 そう言って、博人が笑う。俊治も小さく笑った。とても幸せだった。

 俊治は水曜の定休日と他に土曜と月曜に休みをもらっている。三ヶ月も経てば、慣れてきて、バーで働いていた時のように落ち着いて接客できるようになった。早上がりでジャケットを着込んでいると、「失礼しまーす」と言いながら、慎也が入ってきた。
「俊治君、お疲れさま」
 慎也は頭に被せていたスカーフキャップとソースや油で汚れたエプロンを取ると、椅子に座った。コックコートのボタンを外しながら、こちらへ視線を向けている。
「ホールの皆から覚えがいいって聞いてるよ」
「そんなことないです。皆さんの教え方がうまいんです」
 ロッカーを閉めて、慎也を見ると、彼はコックコートの下に長袖の下着を着ていた。寒がりだな、としか思わなかったが、それよりも首筋に光るネックレスのほうが気になった。シルバー色の鎖の先にはどう見ても指輪が通っている。

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