ひかりのあめ15 | ナノ





ひかりのあめ15

 明け方までゴミ袋と衣服の仕分け作業をしていた俊治は、インターホンの音に手を止めた。鍵を開けると、オーナーが立っていた。俊治は片づけ途中の部屋の中へ彼を入れる。
「おまえが、楽な道を選ばないのは分かってる。だけどな、あいつのために生きるのはやめろ」
「……はい」
 返事をすると、オーナーはいきなり俊治の肩をつかんだ。
「簡単に返事するなっ。どうせできないんだろう? 俺が何度言っても、切れないどころか、何でも聞いてる状態じゃないか。俺を選べば、幸せにしてやれるのに、どうしておまえは」
 ぐっと肩を押され、俊治は体勢を崩す。
「っい、た、お、オーナー」
 倒れるとじゅうたんの上に押さえつけられる。オーナーの手の力強さに、俊治は他の男達と同じものを感じて焦った。
「や、嫌です、オーナー、やめてください」
 力いっぱい押し返したが、俊治の力では敵わず、オーナーは腕を一つにまとめた。彼の右手が、脇から服と肌の間に滑り込んでくる。俊治が自由の利く右足で彼の足を蹴り、まだ足をばたつかせると、ひざが彼の腹に当たった。むせた彼を尻目に、俊治は四つ這いになって逃げる。
「っあ」
 足首を引かれて、床に顔を打った。痛がる暇もなく、ずるずると引っ張られて、オーナーと向かい合う形になる。
「嫌だっ」
 俊治が叫ぶと、オーナーが手を振り上げた。乾いた音の後、左の頬が熱くなる。彼から暴力を振るわれたことが信じられず、俊治は彼を見ようとした。だが、すぐにもう一度殴られる。
「っウ……ア、や、やめて……」
 嗚咽を漏らしたが、オーナーは熱い手で俊治の腹や手をまさぐり、ジーンズのボタンを外す。下着まで脱がされた時、俊治は懸命に体を動かした。彼がまた拳を振り上げる。口の中に血の味が広がり、涙と鼻水が顔を汚した。彼は俊治の体をうつ伏せに押さえつけると、アナルへ直接、怒張したペニスを当てる。
「っ、ま、まってっ、やめっ」
 慣らされずに受け入れることは、アナルを傷つける行為と同等だった。あまりの痛みにとぎれとぎれの悲鳴と涙があふれる。腰から背筋にかけて、引きつるような痛みを感じて、俊治は目を閉じた。オーナーはいつも優しかった。彼を変えてしまったのは自分だ。
 アナルの中に射精したオーナーは少し息を乱しながら、そっと俊治のうしろ髪をなでた。俊治が目を開くと、彼は頭へ顔を寄せる。
「おまえが悪いんだ」
 俊治は小さく頷く。オーナーがその肯定を見たかどうかは分からない。彼は精液と血で汚れたペニスをティッシュで拭き、立ち上がると玄関へ向かう。ちょうど、彼が出ようとした時、透が扉を開けた。
 透の声に俊治は手をついて体を起こした。
「え、何? あんたもあいつ、抱いた?」
 透は下品に笑うと、手の平を見せた。
「……と、透」
 俊治は透が何を要求しているのか分かり、声を上げた。だが、二人は玄関から外へ出てしまった。嫌な汗が流れる。しばらくして、部屋の中へ入ってきた透の手には紙幣があった。一万円札五枚を、彼がわざと俊治の目の前に差し出す。
「本当は今夜、またお客さん呼ぼうかと思ってたけど」
 透の言葉はほとんど耳に入らない。
「つーか、おまえ、部屋、何とかしろよ」
 土足で上がってきていた透は、俊治の足元に靴の裏の泥を残して去っていく。俊治はぼやけた視界にゴミと汚れた衣服と泥を映した。
「俺……」
 粗大ゴミみたい。
 視線を落とすと、左の太股の内側が血で汚れていた。瞳から落ちた涙が、その血と混ざって、じゅうたんへ染みていく。俊治は、自分をゴミと一緒に捨てたいと思った。

14 16

main
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -