ひかりのあめ7 | ナノ





ひかりのあめ7

 問いかけに答えずにいると、透が両肩をつかんだ。
「最近、金がやばいんだ」
「……うん」
 俊治は透を見上げる。困惑顔の彼の役に立つなら、何を言われても頷くしかないのかと思う。
「でさ、思ったんだけど、おまえ、こいつらとやれよ」
 俊治はうつむいた。
「一人、一万円くれるって」
 頷くのはたぶん馬鹿だ。高校の時の恩はもう十分に返しているはずだ。だから、断っていい。透を好きなことと、彼のために何でもすることは別だと言っていい。
 去来したのは、クラスメート達から、「くさい」と言われた時のことだった。
 こいつの家、ゴミだらけなんだ。風呂も入ってないんじゃない? 近寄るな。母親が病気らしい。変な菌、持ってるだろ。汚い。くさい。ゴミ。
 殴られるほうがずっとましだった。傷が目に見えるほうが、治す方法だって分かる。だが、言葉の暴力はどこを傷つけているのか分からないのに傷ついていく。俊治はもう限界だった。
 そんな時に透がたった一言で助けてくれた。きっとその時の俊治の気持ちは誰にも分からない。縁を切れと言われても切れるわけがなかった。叩き続けたドアを、透は開けてくれた。それなのに、自分は開けないなんて、できるわけがない。
「やるだろう、俊治?」
 透が上半身を傾けて、顔をのぞき込んでくる。頷こうとした。だが、頷いたら、オーナーや店長に顔向けできなくなる。迷っていると、透がもう一度聞いた。
「本当に優柔不断だな。俊治、俺のことが好きなら、こいつらとやれよ。俺のために金、稼いでくれるんだろ?」
 拳を握り締めた俊治の体を透が抱き締めてくれる。そんなことをされたことは今まで一度もなかった。透が耳元で甘くささやく。
「俊治、おまえはきれいだ。くさくなんかない」
 俊治が服を脱ぐと、男達がその肌の白さに口笛を吹いた。洋間は狭かったが、彼らはこたつテーブルをダイニングキッチンへ押しやり、俊治を押し倒す。前髪が流れて、俊治の顔が現れると、彼らが異様に盛り上がった。
 潤滑ジェルで適当に慣らした後、一人目の男がすぐにペニスを突き刺した。痛みでせき込みながらうつむくと、もう一人の男が緩く熱を持ったペニスをいきなり口へ押し込んでくる。
「あれ? こいつ、たってないよ?」
 上と下でペニスを受け入れいている俊治は泣いていた。その姿を写真に収めていた男が透を振り返る。
「あ、それいつもだから。そいつ、扱いてやらないといけないんだ」
「えー、じゃ、おまえ、今まで開発もしてやらないで、ずっと突っ込んでたの?」
「そうだけど」
「まじで? 俊治君、かわいそう、つーか、マゾ?」
 笑い声の後、俊治の意識は急に遠のいた。だが、気を失うことはなく、俊治は自分のアナルの中が切れたことも、男達から体中に精液をかけられたこともすべて覚えていた。五人全員が満足する頃、明るかった外はすでに日が暮れており、男達は最後にペニスをきれいになめることを命じた。ひざ立ちした状態で、全員のペニスをなめ終わると、しゃがみ込んだ透が笑みを見せた。
「俊治、ありがとう。また今度、頼むな」
 全部、初めて言われた言葉だった。きれい。くさくない。ありがとう。全部、言われたかった言葉だった。
「……っ……ぅ」
 嗚咽を漏らした俊治は、ひざ立ちのまま涙をこぼした。全部、嘘の言葉だった。どこも傷ついてなんかいないのに、見えないどこかが傷ついていた。

 俊治は泣き疲れてそのまま眠り、翌朝、シャワーを浴びた。体調はとても悪かったが、昨日が定休日でよかったと思った。今日は遅番で入っているため、二十二時からの出勤になる。熱っぽい体はだるく、水だけ飲んだ俊治はダイニングキッチンに移動されていたこたつ布団の中に入り、そのまま目を閉じる。
 洋室にある小さなじゅうたんは男達の精液と自分の血で汚れていた。そこで眠ることは考えられなかった。

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