ひかりのあめ4 | ナノ





ひかりのあめ4

 透とのセックスは運動の延長にあるようで、彼はいつも乱暴に突いた。俊治がいくためには自分の右手で自分のペニスを擦らなければならない。だが、俊治はそれで満足していた。
「っあ、アア、んっ」
 ぐっと入ってくるペニスは時おり、俊治の前立腺を刺激して、俊治は声を漏らす。
「気色悪いから声、出すな」
 俊治はくちびるを噛み締めた。右手でペニスを扱いていたら、ひときわ大きく突かれた後、透が出て行く。
「っと、透」
 振り返ると、透は先の垂れたコンドームを取って、俊治へ投げて寄越した。ティッシュできれいにして、彼は服装を整える。俊治が絶頂を迎える前に終わることはよくある。彼は何も言わず、そのまま玄関から帰って行った。
 虚しい、という思いに気づかない振りをして、俊治は腹に張りついた透の精液入りのコンドームに触れた。それを手に、右手でオナニーを再開する。
「と、とお、るっ、あ、ン……ん」
 俊治は手の中に吐き出した精液をティッシュで拭い、その場で仰向けになった。悲しくもないのに涙がにじんできて、俊治はそっと目を閉じた。

 俊治が透を好きになったのは、彼が助けてくれたからだ。高校の時、俊治はクラスメート達からいじめられていた。物がなくなるのは日常茶飯事で、言葉の暴力にはただうつむくことしかできなかった。
 何がきっかけかは分からないが、ある日、いつものようにからかわれていた時、透が割って入って言った。
「家のことをからかうのはやめろ」
 透の言葉にクラスメート達は何も言わなくなった。クラスだけではなく、学年でも人気のある透の言葉だからだ。結局、彼らは家のことをからかうのをやめると同時に、いじめじたいもやめた。
 俊治はその日から透のことが気になり、邪険な扱いを受けながらもそばにいた。そのうち、透は俊治から金を取るようになり、彼にとって都合のいいように使い始めた。
 俊治だって馬鹿ではないから、都合よく使われることに満足しているわけではなかった。貯金していた金が底をつきた日、俊治は透の家を訪れた。
 俊治の家はごく普通の中流家庭で、母親は専業主婦をしていた。小学校の終わり頃から、彼女はあまり掃除しなくなり、気づいた時には家の中の秩序が消えていた。
 もともと、きれい好きな母親ではなかったが、出し忘れたゴミが玄関まであふれる頃、父親は彼女と離婚し、家はそれなりにきれいになった。だが、父親は相変わらず、あまり家には帰って来ない。
 透の家は古いアパートで、表札はなかったが、彼が時々、乗っている自転車を見つけて、俊治はそこへ近づいた。おそらく台所の窓が開いており、網戸の向こうで人影が動いた。
「おまえはあっち行ってろ!」
 男の怒鳴り声の後、物音が聞こえた。俊治は網戸の下へしゃがみ込む。透の父親と母親が金のことで言い争いをしていた。透が何度か止めに入ろうとする。
 俊治はその様子を声と音だけで聞きながら、悲しくなって、立ち上がった。金を要求する透の事情が分かり、俊治は家に帰った。
 食べるものはすべて外で出来合いのものを買い、溜まったゴミはゴミの日に出すだけだが、それでも定期的に掃除や洗濯をしなければ、家の中は汚くなる。クラスメート達の中に、俊治の家がいちばんひどかった中学生の頃の同級生がいて、彼らはそのことを面白がってからかった。一度貼られたレッテルはなかなかはがせない。
 俊治は部屋の中で声を上げて泣いた。どうしようもないことばかりで、俊治はただ泣くことしかできなかった。

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