vanish 番外編6 | ナノ





vanish番外編6

 タカは要司の家から帰る時にコンビニへ寄った。同居人がいるから、要司の家にいたらいいと言った時、慎也の表情が少しかげった。タカは慎也の戸惑いを理解していたが、あの二人がうまくいくためには一緒に暮らすことがいちばんだと思えた。
 慎也の恋が叶うといいと思いながら、タカはコンビニへ寄り、適当に買い物を済ませた。修が部屋にいたため、鍵はかけなかったが、玄関扉の鍵は閉まっていた。開けて中へ入ると、電気はついているが、修の気配がない。リビングまで行くと、奥の部屋で眠っている姿が目に入り、タカは安堵した。
 自分がいない間に出て行ってしまったら、と考えて少し不安だった。コンビニ袋をテーブルに置き、上着を脱いでいると修が起き上がってリビングまで来る。
「慎也君、見つかった?」
「見つかった。ありがとうな」
 弁当を食べるように言うと、修は頷いて、トイレへ行った。

「ふーん。じゃ、慎也君はヨウちゃんが好きなんだ」
 ハンバーグ弁当を頬張りながら、修がこちらを見た。
「でも、ヨウちゃんじゃ、望み薄くない? 俺の時、すっげぇ冷たくあしらってたよ」
「俺もそう言ってたんだけど、たぶんうまくいくと思うぜ。あの二人」
 デザートに買っておいたプリンを食べようとふたを開けると、修が声を上げた。
「俺、そっちがいい」
 タカはふたを開けたプリンを修へ差し出し、自分は袋の中から別のプリンを出した。そういえば、こういう奴だったなと思い出す。同じものを二つ買ってくると、どうして同じものにするのかと言われ、違うものだと自分が食べようとしたものを欲しがる。
「何で笑ってんの?」
 修に聞かれて、タカは首を横に振った。昔から変わらない。
「おまえ、どうしてたんだ?」
 追い出してからのことを聞こうと思ったのは、気まぐれでもなんでもなく、もう水に流したことだからだ。あの時は頭に血が上って、修をこの部屋から出すことしか考えていなかった。その後、冷静になっても、修から詫びを入れてくるのが当然だと思っていた。だが、修はずっと連絡を取らなかった。それがひょっこり帰ってくるなんて、何かあったに違いない。
 修はプリンを口に運びながらわざとらしく溜息をついた。
「散々だったよ。タカがあの時、俺の話も聞かずに追い出したから」
「……浮気したからだろ」
「あんなの、浮気じゃない」
 タカは言い返しそうになるのをこらえた。口論をしたいわけではない。修は口をとがらせると、タカのタバコを手にした。
「あの男とはあれ一回だけだし、ほんとはただ……」
「何だよ?」
 修はくわえていたタバコに火をつけず、灰皿へ置いた。
「嫉妬して欲しかっただけ」
 少し赤くなった修に、タカは腹の底から声を出した。
「はぁ?」
「部屋、出された後、電話したけど出てくれないし、泊まるとこなかったし、仕方なく前の仕事に戻ったけど、ほら、俺ももう年だから、色々過激なことしないと売れなくてさぁ。それでふらっとここに来てみただけ。さすがに二年経てば許してくれると思って」
 タカはへらっと笑った修の顔を見た瞬間、立ち上がって、彼の前に立った。
「馬鹿やろうっ!」
 タカはしゃがんで修の肩をつかんだ。本当は殴ってもいいくらいだった。それくらい、タカは修に対して腹が立っていた。怒鳴られた理由が分からないようで、修は唖然としている。修の前の仕事というのは、体を売ることだった。ふらふらしている修の手を取ったのは自分なのに、不安から彼が自分を試すことは分かっていたのに、追い出してしまった。
「馬鹿は俺か……」
 修のことを抱き締めながら、タカは独白する。変な意地を張らずに電話してやればよかったと思った。

番外編5 番外編7

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