ゆらゆら8 | ナノ





ゆらゆら8

 提供される日本酒はもちろん、料理も洗練されたものだった。孝巳は酒に弱くはないが、さすがに飲み過ぎてしまった。顔の火照りを感じながら、一成が先ほど頼んでくれた水を飲み干す。
 最初の一杯はとてもおいしく、つい他の酒も試してしまった。そのどれもが孝巳の口に合い、今、グラスにある酒も最後の一滴まで飲みたいところだが、これ以上は立てなくなりそうだと思い、水にした。
「すまない。飲ませ過ぎたか?」
 向かいに座っていた一成が、肩に手を置き、彼の分の水を置いてくれる。
「だい、じょうぶです。俺のほうこそ、すみません」
 酩酊はしていない。まだ自力で立って帰れる酔い具合だ。立ち上がろうとした孝巳を、一成が押さえた。少し強い力だったが、孝巳は手を貸してくれるのだと思い、彼を見る。
「茅野さん、俺、ほんと、まだ、だいじょ……っん」
 肩を押さえていた手が、腕から手首へ移動し、孝巳の上半身を押し倒した。一成はすかさず、孝巳の上にまたがり、くちびるへキスを仕掛けてくる。あまりの速さに、思考がついていかない。
「っん、ンー、ぅ、ん」
 抵抗らしい抵抗はできなかった。上半身を倒された時点で、くるくると視界が回り、涙で世界がにじむ。くちびるの間から、自分か彼の唾液が流れていった。うなっても、一成はキスをやめず、口内を犯す舌を噛もうとしても、力が入らない。
 一成は孝巳の舌をなめ、口内をまさぐり、くちびるを食んだ。そのキスに応酬しているわけでもないのに、孝巳のくちびるはしだいに麻痺してくる。一成は味わうかのように、孝巳のくちびると口内を楽しんだ後、頬をつたう涙をなめ始めた。
「っや、や、め、いや」
 顔をそらすと、今度は右耳ごと一成の口の中へ入る。彼は舌先を耳の奥へ差し込み、ゆっくりと耳朶をなめた。
「っあ、や……ひゃ」
 ぞわりとするその感覚が何か、孝巳は知っている。孝巳にまたがっていた一成は、意図を持って、かすかに体を揺らした。彼にも分かっている。うなじを滑る舌に、孝巳のペニスはさらに熱を持った。
 一成はキスや愛撫を続けながら、孝巳のベルトへ手をかけ、下半身をあらわにさせる。ぎゅっと目を閉じた孝巳は、思わず、幸喜の名前を呼んだ。すぐにキスをくちびるへ受け、言葉をつむげなくなる。掘り炬燵から足を引っ張られ、畳の上に仰向けになった孝巳のアナルへ、一成が指を入れた。
 先ほどまで飲むか迷っていた日本酒が、コンドームをつけた一成の指先へ垂らされる。声を出せば、助けが来るかもしれないという考えはなかった。ここは彼のテリトリーだ。孝巳は震える声で、「やめて」と言った。
 雄の顔つきになっている一成は、乱暴なことはしていない。彼の大きな手が、額から髪をなでていく。
「ア、ゃ……ん、あ」
 酒のせいか、孝巳はいつもより快感に弱くなっていた。愛撫を受けながら、アナルを解された。窓からは月しか見えない。逃げなければ、と思うのに、体は受ける快感におぼれていた。一成は何度も指先へ酒を垂らしては、アナルの中を探る。
 まだうしろだけではいけない孝巳は、もどかしさから、自分の手でペニスを握った。一成がすぐにその手をひとまとめにつかむ。
「は、っ、や、はな、し」
 一成は笑みを浮かべ、天井へ向かってそそり立っている孝巳のペニスを口でくわえた。
「っあ、やめ、あ、ア、っ」
 幸喜に口でしてもらったことなどなかった。いいとは聞いていたが、今の孝巳には強烈過ぎる快感だった。うごめく舌と温かい口内の感触に、頭が真っ白になる。だが、いきそうになると、一成は口淫をやめ、アナルの中の指先を動かした。
「ひ、ぁ、ア、やめっ、ン、あ、もっ」
 孝巳は絶頂へ向かって駆け上がろうとする欲望を、何度も引き戻されて、息もろくにできないほど疲弊していた。いかせて、と言っても一成はいかせてくれない。何を言えばいいか分からず、涙を流して、彼の瞳を見つめた。


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