vanish それから3 | ナノ





vanish それから3

 はっきりと言葉にするのが恥ずかしくて、慎也はキスを繰り返しながら、手を要司の部屋着の裾から中へと入れる。熱い肌の上を指先が滑った。
「っぶ」
 要司が笑って身をよじる。
「待って、待って。くすぐったいって」
 要司はそう言って、慎也の腕をつかんだ。慎也が彼を見つめると、彼は笑顔を消す。真剣な面持ちで胸のほうへ引き寄せられて、慎也は目を閉じた。キスをもらいながら、彼の手が脇腹辺りから服の中へ侵入してくるのを感じる。
 乳首を見られるのが怖かった。ピアスを外しても、慎也の乳首は男性のそれよりぷっくりと膨れている。要司は写真を見たと言っていた。きっとピアスの存在も知っているだろう。今さらだと思う自分がいる。ここまで待たせたんだから、ここにきてまだ服を脱がされたくないと意思表示するのは嫌だった。慎也だって本当は抱かれたいと思っている。
 要司の指先が探るように慎也の乳首をそばを行き来した。こらえられない声が漏れる。慎也は恥ずかしくて、要司の腕をつかんだ。
「怖いか?」
 首を横に振ると、要司が安心させようと、額にキスを落とした。キスをしながら、彼はそっと乳首の上をなでて、その指先が腹の上や脇腹の上を滑っていった。好きな人に触れている。そう思うと慎也は嬉しいような恥ずかしいような気持ちで満たされて、まっすぐに彼を見上げた。ちょうど彼の足の間に体を横たえる姿勢になっている。慎也は自分の右腰辺りに感じる熱に視線を落とした。
 要司の手が慎也の中心へ触れる。緩くたち上がったペニスは彼の手が布越しに触れただけで脈打った。その反応で、要司のペニスも大きくなっていく。気まずい表情で要司が視線をそらした。慎也は彼の服を引っ張る。
「要司さん……」
 求めるように名前を呼ぶと、要司は短い息を吐いた後、慎也を見ながら、ズボンに手をかけた。居間は温かいが、肌をさらすと少し寒い。下着まで下ろされた後、要司自身も服を脱いだ。彼はこたつテーブルを押して、慎也をカーペットの上に寝かせる。電気カーペットは温かい。だが、それ以上に、体を抱き締めてきた要司の腹が熱かった。
 緊張してくちびるを噛んでいると、要司が体を離して見下ろしてくる。明かりの下、金髪がきらきらと輝いていた。
「慎也、上も脱がせていいか? 見たいんだ、おまえのこと全部」
 噛んでいるくちびるに要司の指先が触れた。互いのペニスが当たる。慎也は自分がおそらくいちばん恐れていることを話すかどうか迷っていた。乳首を見ても、要司は慎也を淫らだと罵ったりはしないだろう。ここでやめたいと言っても怒らないだろう。慎也が恐れているのはセックスの後のことだ。慎也は勃起している自分のペニスと要司のペニスを見つめた。
「要司さん、俺、口で、してもいい?」
 我慢していた涙があふれる。唐突な申出に要司が困惑しているのが分かる。ここまできて口でしたいなんて、おかしいと思われているに違いない。
「あー、慎也。ここまでならここまででいいだろ?」
 要司が立ち上がろうとする。慎也は慌てて、その腕をつかんだ。にじんだ視界を拭って、深く息を吸い込む。
「俺……」
 慎也はぎゅっと要司の腕を握った。
「俺がいちばん怖いのは、この、体で……要司さんを、満足させられるか、どうか……普通の、俺、普通に……」
 自分がこれまでしてきたセックスはアブノーマルだったと言えなくて、慎也はうつむいた。アナルにローターを入れた上、ペニスを受け入れたり、ペニスを縛られたまま射精したり、そんなことをしてきたから、普通のセックスで要司が満たされるのか、自分がいけるのか分からない。さんざん待たせておいて、待たせた割に安い体だと思われるのがいちばん怖かった。もちろん、要司がそんなこと思わないということは分かっている。だが、事実として彼を満足させられなかったら、慎也はもう付き合っていけないと思った。

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