twilight番外編3 | ナノ





twilight 番外編3

 家へ帰る前に、州都を散歩した。夕方のバスで帰っても、三十分程度で帰路へつけるため、チトセは昼食を取って帰ろうと提案する。
「十四時までには帰りたいから、パパスで持ち帰りにしよう」
 パパスというのは、近所のレストランだった。週に一回はパパスへ食べに行くか、持ち帰りで済ませている。
「いいけど、十四時に何かあったっけ?」
「あぁ。注文してた物が届くんだ」
 チトセが、「何?」と聞いても、ルカは教えてくれない。あと二時間ほど経てば、分かるから、とチトセは諦めた。そのまま、近くの雑貨店が出している食器類へ目を留める。白磁に青い線の入ったティーポットへ手を伸ばすと、隣の男性の指先へ当たった。
「あ、すみません」
「いえ、こちらこそ、すみません」
 柔らかなそうな髪を風に揺らした青年は、親しみのある笑みを見せた。
「ソラ、どうした?」
 ルカよりも低いが、チトセよりははるかに背の高い別の青年が、目の前に立つ。ソラと呼ばれた青年の連れのようだ。
「うううん、何でもない。このティーポット、可愛いなって思って」
 ソラがティーポットを掲げると、青年は、「そうだな。いかにもおまえ好みだ」とほほ笑んだ。チトセは失礼だと分かっているが、青年を凝視せずにはいられなかった。彼とどこかで会っている気がしてならない。
「チトセ」
 振り向くと、ルカが立っていた。
「何かいい物、見つけたのか?」
「あ、ごめんなさい。あなたもこれ、見てましたよね?」
 ソラがティーポットを元の場所へ戻す。
「あぁ、いいんです。本当に、ただ見てただけですから」
 チトセはそう言いながら、青年から視線を外す。不意に二人の指にある指輪を見た。
「……新婚旅行ですか?」
「そうなんです!」
 ソラが頬を緩ませる。青年もソラの手を握り、笑った。その澄んだ黒い瞳に、チトセは息を飲む。少しうしろへよろめくと、すぐにルカが肩を抱いた。
「大丈夫か?」
「う、ん。大丈夫。あ、あの、お幸せに」
 チトセはソラ達へ軽く会釈して、ルカの手を取り、踵を返す。
「チトセさん」
 青年に呼びとめられ、振り返った。彼はあの時と同じように優しい闇色の瞳で、こちらを見ている。
「俺達もお二人の幸せを祈っています」
 パレードでばらまかれたアメ玉が二つ、飛んできた。チトセが受け取る前にルカが反応して、受け取る。ルカはアメ玉を確認して笑い、チトセは、「ありがとう」と伝えた。
 
 チトセはリビングで持ち帰りの食事を取った後、少し休んでいた。あの青年は軍事学校にいた青年だ。チトセに、「何があっても死ぬな、求めていたものは手に入る」と言っていた青年に間違いない。
 彼からもらったアメ玉を取り出す。彼の言った通りになったと思う。自分が求めていたものが何か、よく分からなかったが、今はとても幸せだった。彼は帝国の人間だが、チトセは何となく彼の口から自分の居場所が漏れることはないと感じた。


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