twilight番外編2 | ナノ





twilight 番外編2

 ルカに手を引かれて、バスを降りたチトセは、街の熱気に頬を緩めた。ルカが休暇を取得した二週間、チトセも仕事を休みにしていた。今日は州都まで出て、祭りのメインになるパレードを見る予定だ。
「すごい人」
 道幅は狭くないが、パレードを見ようと集まった人達でいっぱいだった。
「ホテル、行こう」
 一度目は道路に立ち、人だかりの向こうにパレードを見た。二度目はルカが職場の人に聞いた穴場のホテルの一室から見た。今年もその部屋を予約している。最低、一泊しなければならず、日帰りできる人間にはもったいない気がするが、今年は二泊にして、夜のレストランも予約していた。
 正午前に始まるパレードの先頭が、チトセ達のいるホテル付近へ来るまで、およそ三十分はかかる。チトセはテラスへ出て、行列が来る方向を見つめた。隣へ座ったルカが、飲み物をテーブルへ置く。
「あ、来た」
 鮮やかな衣装を着た人々が、笑みを浮かべながら、手をカゴへ入れる。カゴの中には花びらが詰まっており、色とりどりの花びらが空を舞った。花びらとともに小さなアメ玉の包みが飛んでくる。
 神に感謝する祭りは、花と蜜に似せたアメ玉をばらまくことで有名だ。チトセは足元に飛んでくる花びらとアメ玉を拾った。アメ玉は近くの人へあげると幸せが訪れると言われている。
 チトセが包みを開け、アメ玉を差し出すと、ルカもアメ玉を口へ入れてくれた。ほほ笑み合った後、キスをして、パレードの最後尾が通り過ぎるのを待つ。
「このバラ、すごくいい香りがする」
 チトセは集めた花びらをカゴへ入れて、椅子の上に置いた。毎年、花びらも持ち帰り、ドライフラワーやポプリに役立てている。以前はそういったことに興味はなかったが、隣人から方法を教えてもらい、徐々に知識を蓄えていた。
 傷んでいる花びらを選っていると、うしろからルカが抱き締めてくる。
「おまえからもいい香りがする」
 チトセは小さく笑い、ルカの鼻先へ触れた。彼に体を抱えられ、そっとベッドへ下ろされる。体を重ねたのは、あの家を購入してからだ。それまでは、一軒家の一室を借りて、五人暮らしをしていた。
 もう一年半ほど経つが、ルカはいつも初めての時のように優しく愛撫してくれる。チトセを仰向けにして、丁寧に服を脱がせたルカの手が、胸や腰に触れ、性器へ触れるのを、チトセは目を閉じて感じた。
 性行為にまつわる記憶はいいものではない。薬の力で受け入れたくないものも受け入れてきたチトセにとって、快感は危険だという認識があった。だが、ルカはチトセを物のように扱わない。
 四つ這いにして、表情が見えない状態にすることもなく、準備が整わないうちに犯すこともなく、チトセが目を閉じれば、目元へキスをした。目を開けると、目尻を下げて、笑みを浮かべるルカがいる。
 ルカは左手で手をつなぎ、反対側の手でチトセの性器を愛撫した。潤滑ジェルで濡れている下半身をなで、チトセが体の緊張を解くと、そっと指先でアナルへ触れる。彼は首筋へキスを落としながら、指を増やしていった。
「チトセ」
 確認するように、声をかけられ、頷くと、ルカは手を離した。彼を受け入れやすいように、少し腰を上げる。チトセは白い喉をのけぞらせて、彼の熱いペニスを受け入れた。彼の舌が喉をなめ、チトセはくすぐったくて、小さく笑う。
 ヘーゼルの瞳がこちらを見下ろしていた。いつかの冷たい瞳ではなく、チトセを愛する優しい色だった。甘い息を漏らし、声を上げる。ルカの吐息がチトセの息と交わっていく。
 夢なら覚めないで欲しいと、チトセはルカと愛を交わすたびに願っていた。


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