twilight14 | ナノ





twilight14

 チトセはぼんやりと天井を見た。時間の経過は分からないが、毎回同じことの繰り返しだった。薬が欲しくなり、目が覚めると、注射を打たれて、時々、男達が自分へ覆い被さってくる。
 意識のない間に、食事や排泄、着替えなどは終えているようだ。一度だけ、拘束を外され、体を浴槽へ入れられている時に目が覚めたものの、ベッドへ拘束されている時と同じく、視線しか動かすことができなかった。
 チトセのいる部屋に来る男達は、イトナミ大佐を始め、チトセの嬌態にいやらしい笑い声を漏らすことはあったが、誰一人、言葉をかけない。チトセ自身も口枷のせいで言葉を発することができないため、欲求や疑問を解決することはできなかった。
 いつものように注射を打たれ、男にアナルを犯された後、チトセはぼやけていく天井を見つめながら、眠りに落ちようとしていた。いつもと違ったのは、もう一度、扉が開いたことだ。扉が開き、格子の鍵を開ける音が聞こえ、乾いた靴音が近づく。ダークブラウンの革靴と制服の色が視界に入った瞬間、ヴェスタライヒ軍の関係者だと分かった。
 チトセは男の胸元にあるヴェスタライヒ国旗の刺しゅうに目を留め、彼の顔へ視線を移す。チトセが息を飲むと、彼はさらに一歩近づき、チトセをほぼ真上から見下ろす姿勢を取った。
「半年経っても、この状態か」
 髪も染めず、瞳の色も隠していない彼を初めて見た。ヘーゼルの瞳からは、冷たい蔑みがにじんでいる。
「薬物へ逃げたくせに、事態は想像するほど悲惨ではないなんてよく言えたな」
 チトセは口を動かす。だが、音は言葉にはならない。あの錠剤はイトナミ大佐から与えられたものだ。合法の抗不安薬だと思っていた。もちろん、薬の効果が切れた時点で、常習性の高い違法の薬だと感じていたが、自分の力でやめることはできなかった。
 そして、今も何か分からない薬を注射されている。チトセは現状を伝えたかった。半年経ったと言うなら、その間に何が起きたのか知りたかった。瞳に涙をにじませ、ヴェスタライヒ軍の制服を着ているルカを見つめる。
 ルカは、はっと声を出した。軽く額を押さえ、そのまま乱れてもいない髪をかき上げる仕草を見せる。
「そうやって看守達を誘ってるのか?」
 ルカは確認するように、チトセの体にかけられていた毛布をめくる。彼の手が上下のつながっている服の裾をつかんだ。チトセからは見えないが、チトセは下着を身につけていないばかりか、太股や性器の周辺には、先ほどの行為のあとがしっかりと残っている。
「六人部屋にされるのが嫌なのか? ここだと拘束されても、気が向いた時に気に入った相手とできるからな」
 瞬きをすると、涙が頬を流れていった。チトセはルカの口から看守という言葉を聞いた時点で、自分が囚人として扱われていることに気づいた。この現状と真実を知りたくて、チトセは手足を動かした。必死に訴えれば、せめて口枷は外してもらえると信じた。
 だが、ルカは突然、暴れ始めたチトセを見て、壁に設置されているパネルへ触れ、外にいる看守達を呼び出す。三人の看守達は、チトセを囲むようにして取り押さえた。
「薬は抜けたんだろう?」
 ルカの確認する言葉に、看守の一人が頷く。
「ええ、ただこんなふうに暴れることも多くて、困っているんです」
 説明する看守の反対に立ち、ルカに背を向けている看守が笑みを浮かべた。彼の手には注射器がある。
「鎮静剤を打ちます」
 中身はチトセがイトナミ大佐に飲まされた薬だった。チトセはにじんだ視界をルカへ向けるが、ルカは汚いものを見る目でこちらを見つめ返していた。
 絶望に沈んでいく。誰も自分の声を聞いてくれない。辛い世界から逃れるように目を閉じる。藤棚の下のベンチには、うつむいて泣いている自分の姿があった。


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