twilight10 | ナノ





twilight10

 タカサトのように受け入れたとしても、乗り越えられるはずだと思った。チトセは白い錠剤を飲まされる。十五分と経たないうちに、とても気分がよくなった。目を閉じると、虹が見える。目を見開いたチトセは、確認するように目を閉じた。
「あ、にじ……」
 体が大きく回転する。チトセは仰向けにされ、腕の拘束を解かれた。熱い手が股間をなぞる。
「っん、う」
 イトナミ大佐のにやついた笑みを目にして、チトセは事態を把握しようとした。だが、熱い体と、目を閉じれば見える虹に、他のことはどうでもよくなる。イトナミ大佐は指先へコンドームをつけると、ボトルからローションを出し、まだ解していないチトセのアナルへ指を突っ込んだ。
「っい、あ、いたっ」
 大きく目を見開き、チトセは首を横に振る。快楽に弱くなっていた体は、痛みにも敏感だった。涙を流しながら、両手でイトナミ大佐の体を押し返す。だが、彼はチトセの体を押さえつけて、指を出し入れした。
「っひ、ぁ、あぁ、や、ア」
 チトセは声を抑えることができず、イトナミ大佐の指が動くたびに大きく喘いだ。外にいる兵のことは考えられない。アナルの中を動く指の感覚だけがすべてだった。
「もっと欲しいだろう?」
 イトナミ大佐の言葉に、チトセはうっすら目を開ける。
「こいつを突っ込んで欲しいだろう?」
 足の間に押し当てられた硬いペニスを感じると、自分の内側が熱くなっていくのが分かる。チトセの目尻から涙があふれた。欲望に屈してはいけないという声が聞こえる。だが、イトナミ大佐がチトセの勃起したペニスへ触れ、愛撫を始めた瞬間、その葛藤は消えた。
「っ、あ、もう、っく、いく」
 最後に自慰行為にふけったのは、数ヶ月以上前だった。甘く重い熱が、体の中を駆けめぐる。イトナミ大佐はチトセの射精する瞬間を見極めて、ペニスを握り締めた。
「う、あぁ、やっ、いたっ、やめ、あ」
 ペニスをつかむイトナミ大佐の手に、チトセは手を伸ばして、その拘束を外そうとした。言葉にならない痛みは涙となって、チトセの頬を流れていく。
「自分だけいい思いをするのか? まずは我々を楽しませてくれないとな」
 チトセは泣きながら目を閉じる。まぶたの裏の世界では、虹がかかった空が見えた。小高い丘の上は公園になっていて、チトセは藤棚の下にあるベンチへ座る。
「アラタニ少尉、何が欲しいのか、言葉にするんだ」
 少しずつ緩んだイトナミ大佐の手の中で、チトセのペニスは再び血と熱をめぐらせる。ほんの少し、目を開ければ、獰猛な瞳がこちらを見下ろしていた。イトナミ大佐だと認識できているのに、怖い、と思う。子どものように泣くと、彼は優しく頬をなでた。その瞬間、チトセは息をとめる。
 指の背で優しくなでた後、イトナミ大佐は心得たように、チトセのことを抱き締めた。
「優しくしてやろう」
 父親と歳の近い男の手と言葉を聞いて、チトセの心は揺れた。髪へ触れた手が、頭をなで、肩から胸へ移り、腰を抱く。チトセは何度も瞬きを繰り返した。震えるくちびるが、言葉をつむぐ。
「たい、さ、これ、いじょ、は……」
 最後の理性をかき集めて、言葉を発すると、拳が左の頬へ飛んできた。簡易ベッドから落ちたチトセは、歯を食い縛って、外へ出ようとする。流されれば楽だが、チトセの自尊心はまだ失われてはいなかった。


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