3日







「不味い」

「えー、美味しいよ、これ」

「オレの口には合わん」

「駄目だよー。その食材は、お百姓さんが心をこめて作ってくれたものなんだから、粗末にしちゃだめです」

「いつの時代の人間だ、お前は」


昼休み。今日は十代もヨハンも執行部、および監査部の代表として会議に出席するというので必然的に昼食を一緒に取る者がいないために、万丈目が彼女と昼食を取っている。こうやって十代もヨハンも居ないとき、彼女はよく一人になることが多い。というのも、舞姫は『十代のモノ』という印象が強いのか、あまり表立って彼女に近づく人間がいないのが問題なのだ。

女子はそれほどでもないが、男子は特にだ。舞姫に近づくものは排除されるのがオチだ。

だからか、十代とそれなりに交友関係のある者は、そんな舞姫の現状から二人がいない時は舞姫に気を配るようにしている。明日香、万丈目、翔などがそれにあたる。とりわけ万丈目は、彼女に気を配ると、十代ではなく想い人である明日香の中の自分の株が上がるために率先して舞姫の世話役を買って出ているようで、少し同機は不純であるが、十代としては助かっているらしい。

まぁ、その辺りの動機は舞姫絡みではないので、十代には全く関係のないもののため気にしていないというところがあるのだろう。

そんな中、二人で学食へと足を伸ばして食事を取っていると、不意に万丈目が自分が頼んだ分のランチを半分も減らないうちから食べることを放棄してしまった。しまいには食器に食べ物が入ったまま、ダストボックスにインしてしまう始末。

舞姫は彼と同じものを頼んだので、すべて味は一緒。そのため、彼が不味いといった理由が分からずに首をかしげた。


「まったくもー。これだからお金持ちは…」

「お前に言われたくはないな。お前こそ、海馬社長のお気に入りなんだ。いろいろと美味いもんを食べさせてもらってるんだろう?」

「ううん。そんなことないよ。あ、でも昔は美味しいお菓子とかいろいろ送ってきてくれたかなぁ…。だけど舞姫、そういうのよりも、こう、誰かが作った…手作りって感じのものとかのほうが好き。十代くんとか、二十代お兄ちゃんの手料理なんかは特に絶品なの。カレーとか、カレーとか」

「相変わらずカレーが好きだな、お前。それにしても、手作りか…、ふむ…さぞかし天上院くんの手料理は美味いのだろうな…」


うっとりするように、自分の世界に入り、明日香の手料理を想像する万丈目。おそらく今彼の脳内では手料理をふるまっている明日香がの映像が脳内再生されているに違いない。

だが、舞姫は万丈目のそんな妄想を余所に困ったように眉を寄せた。


「万丈目くん」

「……あぁ。天上院くん…」

「万丈目くん」

「あぁ…」

「万丈目くんてば」

「何だ」

「あーちゃん、意外にお料理下手だよ?」

「んなバカな。天上院くんに限って…」

「昨日調理実習で家庭科の先生があーちゃんの作ったもの食べて泡吹いて倒れたもん」

「…………!!?」



2月3日食べ物を粗末にしちゃ駄目

2日の続き的な。










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