※万丈目視点 「はいはーい。みんな席に着いてくださーい」 ウチのクラスの委員長である少女がパンパンと手を叩いてHRを始める合図をした。今日は1月8日。昨日始業式で学校が昼までだったのに対し、今日はみっちりと授業が6現まで詰まっている。 そして時間にして現在5現目。 ロングホームルームの時間だ。今日は3学期の委員ならびに係を決めることになっている。 ちなみに2年のオレ、十代、そして天上院くん、三沢、翔、1年の剣山は生徒会役員で、生徒会監査部門には2年のヨハン、オブライエン、アモン、ジム、1年のエド、早乙女レイは所属しているためにそれらに属している人間は委員や係になることはない。そしてよく誤解されがちだが舞姫はよく生徒会室には出入りするが、基本は一般生徒だ。 そんな一般生徒の彼女だが、彼女は委員会には所属せず、クラスの中で決められるただの国語係というものをしている。ちなみに言っておくと国語係の主な活動内容はほぼ無いに等しい。時々授業で配った課題プリントを回収して持って来いと言われるくらいだ。とはいえ、彼女が国語係の任務を遂行したところなどただの一度も見たことはないが。 そもそも彼女がなぜ国語係などというチンケな役職をもらっているのかが謎だ。今思い起こせば彼女は国語係以外になったことがない。1学期もそうだったし、2学期も。はたまた1年の時もだ。 かといって彼女は気にしている風でもないところも謎だ。国語係になればなぜか嬉しそうにして十代に報告しに行く。そんな十代も十代で彼女が国語係になればいい子だと頭を撫でてやっている。 何だ。コレ。 十代の策略か?舞姫を他の委員会に取られないための策略か? 「はい。城之内さん、あみだくじで決めるから、好きなところ選んでね」 「うん。えーとね、舞姫、ここがいいな」 「了解、じゃあ、ここが城之内さんのとこね」 今時あみだくじかよ。と思われがちだが、どうやらうちの学校は昔から係を決める時はクジで決めるらしい。おそらく同じ人間が同じ役職に就いてマンネリ化するのを防いでいるのだろう。 にも関わらず舞姫は毎度毎度、国語係なのだがいいのだろうか。 全員がクジに自分のしるしをつけてきたところで委員長がそれらのクジを開いて役職を発表していく。 「城之内さんは、国語係ね」 「はーい」 案の定今回も彼女は国語係だった。ちょっと待て、あみだクジでそれはない。それはないだろう。同じ役職に1、2度はつくことはあっても舞姫のように一年から通算すると6回も同じ係になるのは異常だ。 オレは席を立つとあみだくじの書いてある紙を委員長から取り上げる。だが、途中でそれはヨハンに阻止されてしまう。ちなみにチラっと見えた限り、舞姫は国語係ではなく保健委員になっていた。 「ヨハン!」 「万丈目…お前、十代に殺されて―のかよ」 「は?」 「だから、全部十代が指示してんだって」 片目を閉じてウィンクを投げ飛ばしてくるヨハンに背筋が凍る。その様子に教師や委員長でさえも固まっている。 「暗黙の了解ってことか?」 「そうそう」 「お前知ってたのか」 「万丈目、知らなかったのか?入学してからずっとだぜ?」 後ろを振り向いて生徒を見れば、ぶんぶんと首を振ってそのことには触れない方がいいと助言してくる。お前らみんな知ってたのか。 当の本人の舞姫はと言えば、何のことか分からないといった風にきょとんと首を傾げているだけ。なんともおめでたい奴だ。 「わかったわかった。お前らがそれでいいならオレも構わん」 どうであれ、結局歪められた結果を与えられるのは一部の人間だけだ。被害を被るのは結局のところ、表ざたにされることもない舞姫と係を入れ替えられた者というわけで、自分が被害をこうむるわけでもない。 何だかどうでもよくなってきた。 舞姫自身も国語係になることを喜んでいるようだし。これ以上突っ込んだ方が被害を被る確率は高くなってくるのだから、あえて危険に足を突っ込む必要などない。 オレは席に戻った。 「十代くん、舞姫ね、今回も国語係になったよ」 「そっか。いい子だな。がんばれよ」 「うん」 そしてこの光景は、また数か月すれば繰り返される。 1月8日歪められた結果 今回は万丈目さんの語りで。 教科の係りって楽だったなぁ。 普通の学校にはあるんだろうか、こういう係りって。 Rの記憶によると、古典係が一番楽だった覚えが… |