「十代くんの目って綺麗だね」 「ん?」 「いつもはブラウンだけど、時々綺麗なグリーンとオレンジの瞳になるの」 「………」 オレの魂の中にはもう一つ魂が存在している。 デュエルモンスターズの精霊、ユベルだ。 ユベルはオレの中に元々あった存在らしいのだが、こうやってユベルの存在を目視することは昔から出来ていたことだが、自分の中にユベルが存在している、と感じられるようになったのはごく最近。ユベル曰く、それはオレが大人になりつつある証、らしい。だが、それと大人になることの関係性は分からないが。 そして、ユベルがオレの中に存在することでオレの身体は時々変化することがある。 だが、それは普通の人間には見せることはない。普通ならば畏怖するか気味悪がるからだ。だがオレは気が緩んでいたのか、いつの間にか舞姫にその瞳を見せてしまっていたようだ。 しかし彼女はオレの瞳を覗き込んだままその宝石のような瞳をキラキラと輝かせた。 何を言ってるんだ。お前は。お前の方がオレなんかよりももっと綺麗だというのに。 その曇りのない瞳は誰をも魅了する。 そっと手を彼女の頬に滑らせて目尻に指を這わせる。オレなんかよりもっと綺麗な瞳だ。 「気持ち悪ィとか思わねぇの?」 「うん。だって、それも十代くんだもの。少しぐらい人と違ってても、大好きな十代くんに変わりはないから」 「舞姫…」 そんなこと言われたの初めてだ。 なんだか気恥ずかしくて、俯いてみればユベルが隣で声を上げて笑っていた。くそ。人事だとおもって笑ってるな、あいつ。 もちろんそんな姿は舞姫に見えるはずもなく、突然横を向いて睨んだオレを見て首を傾げていた。 『いい子じゃないか、十代』 「(笑うなよ、ユベル)」 『だって…十代が可愛い反応するからさ』 「(男に可愛いとかいうなよな)」 小さくため息をついてみればユベルはすっと姿を消してしまった。それを機に舞姫に視線を戻すと、舞姫はまだ首を傾げていて。 そんな反応が可愛くてぽんぽんと頭を撫でてやった。 「ありがとな?」 「えへへ。あ、そうだ。十代くん。ケーキ食べよう。今お茶入れるね」 「ん、あぁ」 パタパタと使いなれたオレの家のキッチンに消えていく彼女。そう言えば今日からケーキ屋が開いているから、買って来たとか言ってたな。 テーブルに肘をついて彼女を視線で見送り、目を伏せる。相変わらず彼女は楽しそうだ。何事にも素直に取り組む姿勢が人を魅了する。 「好きだぜ、舞姫。いや、愛してる、か?」 聴こえない、聞かせないように呟いた。まるで映画のワンシーンだ。 にしてもありきたりすぎるかもしれない。 好きとか愛してる意外に何か他にないものか。そんなどっかで聞いたことのあるような台詞を並べ立てたところで彼女はオレに振り向くのか。 否。そうじゃない。違うだろ。 オレは、そんな台詞が言いたいんじゃない。 好きや愛している以前に、オレは。 彼女の傍にいたいんだ。それが愛や恋に繋がって、好きだという感情に行きつく。 オレは中学のあの時に覚悟をしたんだ。彼女を傷つけてしまった力をコントロールすることを。そしてその力を使って大事な彼女を守り抜く覚悟を。 たとえ鬼、悪魔と呼ばれようと。 好き以前に彼女を守りたいんだ。 でも今は。 「十代くん、チーズケーキ好きだったっけ?」 「あぁ。好きだぜ」 彼女の分かりやすいようにただの好きで通そうか。彼女がオレの本当の気持ちに気づいてくれるまで。 そうすれば彼女は笑ってくれるのだから。 1月5日どっかで聞いた、その台詞 守り抜く覚悟〜、たとえ鬼、悪魔と呼ばれようと〜云々のところはGXで十代が喋った台詞。実はこの台詞大好きだったり。カッコイイよねぇ。最後の好きはチーズケーキが好きだという以外にも凡骨娘が好きだよ、っていう想いも乗せております。 |