過去編D(中学時代)








「十代くん、見て見て!今日はね、十代くんの大好きなエビフライをお弁当に入れてみたのっ」



ぼんやりと屋上の床に座って眠っていた十代が瞼を上げると視界にぱっと入り込んでくる蜂蜜色の髪の毛。

長い、長い夢を見ていた。


懐かしい、昔の夢。


彼女ともっと分かりあえることになったきっかけ。


それは暗く悲しいものだったが、大切な思い出だった。


「あ、ごめんね。起しちゃった?」

「いや。それより、今日はエビフライか!楽しみだな」

「えへへ。朝早く起きて静香ママと作ったんだよ」


おいでと手をひろげてやると、舞姫はそっと十代の足の間に入り込んで背を向けて座る。


あの日から数年。

自分達は高校に入学して、3年になる。

今ではずいぶん落ち着いたもので、十代を敬遠する者はもう居なくなった。


というのも、舞姫の効果が大きかったからだ。


どんなに変わっても十代の傍に居た舞姫の影響で十代は変わり、周りもその考えを改めるようになった。


誰も変わってしまった十代を元に戻すことなど出来ない。

そう思っていた。

だが、実際は違う。


想いは伝わるもの。


舞姫の純粋な思いが十代を変えた。


元に戻るだけでなく、その感情の一部をコントロールできるほど彼を大人にした。


誰もが認める舞姫の功績。


「舞姫、今日はさ、ちょっとだけ昼寝しようぜ?天気もいいし」

「授業でないと怒られちゃうよ?」

「大丈夫だって。それに、こんなに天気いいのに屋上で昼寝しないのもったいねーって」


弁当を食べ終わり、舞姫の髪を撫でて言うと苦笑する彼女。

苦笑しながらも仕方ないなーなんて言っている彼女の表情は悪戯っぽくて。

十代はつられて笑顔を零した。


「舞姫、好きだぜ」

「ん?うん、舞姫も十代くん大好きだよ?」

「そうだな、知ってる」





笑って はしゃいで 楽しい


そんな毎日が戻ってきた。


オレも、彼女も、みんな。


そして


そんな毎日はこれからも続く。


ずっと




過去編 fin.
十代の覇王時代をちょこっと。もうちょっと内容を濃くて、覇王十代のかっこよさを上手く表現したかった。が、撃沈。








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