過去編B(中学時代)








「舞姫…」


生徒会室ですべての人間に暴力をふるい終わった後。

舞姫を保健室まで連れていき、手当をしてからベッドに寝かせる。


十代自身も喧嘩のせいか体中ボロボロではあるが、自分のことよりも先に舞姫の手当てが先だと思った十代は、舞姫を手当てし終わると、クシャリと前髪を握って顔を押さえた。


「……ごめん。オレが…傍にいなかったから…」


濁った瞳で彼女を見つめて髪を撫でる。


「でも、オレ…お前のために、全部、片付けてやったから…はは、もう、心配ねぇから…安心していいからな」


狂気に満ちた表情。

壊れた彼の様子に、誰も気づくことはない。


眠っている彼女でさえ。


そしてそれを止める者も、もはやどこにもいなかった。














「舞姫、お昼とったの?」

「あーちゃん。えとね、まだだよ?」

「なら、一緒に学食に行きましょう?今日はあなたの好きなカレーが…」

「ごめん。舞姫ね…えと」


アレから3ヵ月、生徒会との一件で自宅謹慎となった十代が登校してきたのは2か月も前だが、十代は謹慎の解けたその日から誰とも口をきかずに一人で過ごしていた。

そして、彼の周りに居た人間も、彼を敬遠するようになった。


ただ一人を除いて。


「十代の所にいくの?」

「うん。そうだよ」

「十代のこと、怖くないの?」


あの日から彼は誰にでも暴力を振るうようになった。

この間の一件で生まれた憎しみと怒りをどうしてよいのか分からないために、そのような行為にいたっているといっていい。

そんな彼を止めることは誰にも出来ず、今まで彼と友であった人間でさえ彼から遠ざかるようになった。


だが、舞姫は違った。


「舞姫は怖くないよ。十代くん、優しいもん。舞姫が作ったお弁当、食べてくれるし…前と、確かに違うけど…それでも、舞姫は十代くんのこと、大好きだよ」


じゃあ行ってくるね、と。

舞姫は明日香に笑顔を向けて去っていく。

そんな彼女を見つめ、明日香は複雑そうな表情を浮かべていた。


「天上院くん…舞姫は?」

「万丈目君…その、今日も十代のところに…」

「そうか」

「ひどいこと、されていないとは思うんだけど…心配ね」

「あぁ。今の十代は…以前と違うからな」




過去編B








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