生徒会室前の廊下についた時には、教室の前は人だかりでいっぱいだった。 教師から、生徒たちから様々だ。 さすがに今回の件はかなりの騒動になっているらしい。 いつもは生徒会とそれに対抗する生徒だけの抗争に、一般生徒も巻き込まれるという形になった身体。 十代はその人だかりをかき分ける。 「舞姫っ!」 ようやく生徒会室の中に入ると、目当ての人物を見つけることが出来た。 だが、その人物は自分の呼びかけに反応することはなかった。 ただ、床にごろりと死体のように転がっていた。 唯一の救いだったのが、小さくぴくりと動いた指。 生きてはいる。 「なんだよお前。コイツみたいになりてーのか?」 生徒たちの集りから出てきた十代の存在に気がついた生徒会のメンバーの一人が、舞姫の身体を蹴ってから十代に近づいてくる。 蹴られた拍子に舞姫が小さく「うっ」と呻いたのを十代は聞き逃さなかった。 「お前らが…舞姫をこんなにしたのかよ!」 「お前もこんなになりたくなきゃ生徒会に逆ら…」 「お前らがやったのかって聞いてんだよ!!」 ガッ 近づいてきた生徒会の男の胸倉を掴んで十代はその頬に拳を振りおろした。 刹那 それまで騒がしかった周りがシンと静まりかえる。 「舞姫が何やったって言うんだよ…コイツは、お前らに従ったりも、逆らったりも…何もしてねーだろうが!!」 倒れ込んだ男の顔にまた拳を振りおろす。 だが、それを黙っている生徒会ではなく、彼らは十代に殴りかかってくる。 「お前ら…絶対許さねぇ!!」 最早十代には何が善で何が悪なのか。 理解できないまでに怒りと憎しみに支配されていた。 殴りかかって来た生徒、止めに入ってきた者すべてが彼の敵だった。 何もかもが。 過去編A |