夢小説「La mia utopia」 | ナノ


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メローネとホルマジオが帰ってきた。
今日はギアッチョも早めに任務を終わらせたらしく、すでに帰宅済み。自室で任務の報告書と格闘しているのか、二階から度々物が壊れる音が降ってくる。どうか幽波紋を使わずに修復可能な程度の破壊でありますように、と私はただ祈るしかできない。
ペッシはプロシュートのお使いに出掛けているものの、仕事自体は入っていない。彼はそもそもプロシュートとセットなので、ソファーでふんぞりかえっている“兄貴”が休みなら自動的に休みである。そんなペッシがお使いのついでに魚をいくつか釣ってきてくれるらしく、なんて優しい子だろうと涙が出そうだ。散らかすことだけは十分やってくれる“兄貴”とは大違い。
イルーゾォはソルベとジェラート相手にチェスを楽しんでいて、今は2勝7敗中。少し機嫌が悪くなっているので、夕飯には彼の好きそうな一品を加えてあげよう。
ボスはボスで休みの日だというのに自室で事務仕事をしている。ワーカーホリックではないと思うが、丸一日休んでいる姿も見たことがないので、いつかしっかりと休んでほしい。

こうして全員がアジトに集まるのも珍しいということで、盛大にパーティがしたいと言い出したのは誰だったのか。
私は早速酒盛りを始めようとしているプロシュート達を横目に、料理を用意すべく台所へと向かった。どうせすぐつまみがないだの、お腹が減っただの騒ぎ出すのだから。

さて、一体何を作ろうか。
ペッシがまだ帰ってきてないのでメインディッシュには取りかかれない。となれば軽くつまめる物を先に作った方がいいだろう。

冷蔵庫を開いてピザ用チーズとトマトソースを取り出す。最近育てているバジルもいくつか摘み取り、軽く洗ってよく水気をきっておく。大きめの平皿にクッキングシートを敷いて、そこへピザ用チーズを薄く広げ、軽く加熱すれば簡単にチーズ煎餅の出来上がり。熱いうちに包丁で一口大に切り分けて、バジルとトマトソースを乗せればお手軽なおつまみが完成。ニンニクのみじん切りとオリーブオイルを和えただけのソースも一応は用意した。私には必要のないものではあるが、これだけ人数がいれば味覚もバラバラ。全員を満足させるとなれば、ちょい足しの香味は必要不可欠だ。
テーブルの上に持っていけば、すでに赤も白もボトルが複数本開けられていて、ついついため息がこぼれてしまう。

「つまみか。気が効くじゃねぇか、名前」
「なんだこれ?美味そうだが…クラッカーではないな」
「チーズで作ったんです。味が足りなければこっちの塩と胡椒使ってください」
「ディ・モールト・ベネ!こいつぁ凄い!いいお嫁さんになれるね」

突然声を掛けられた事には驚いたが、すぐにそれをニッコリと微笑んで受け流し、彼の舐め回すような、はたまた“母親”にするための品定めをしている視線を振り払うように背を向けてやる。

「ありがとうございます、メローネさん。あとご挨拶遅れましたが、名前です。ご厄介になります」

半身振り返ってのシェイクハンドで挨拶は済ませ、私は次の料理に取り掛かる。キョトンとした表情で佇むメローネに、笑いを噛み殺すのが大変だった。

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