夢小説「La mia utopia」 | ナノ


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「アレ?どこ置いたっけ?」
「ペッシさん、目の前の机に出しておきましたよ」

「名前!靴下に穴ァ!」
「またですか?ギアッチョさん、あとで繕っておきますから捨てないでくださいな」

「…今日は少し帰るのが遅くなる」
「はい、リゾットさん。夜食を冷蔵庫に入れておきます」

「名前、腹減った」
「まだオヤツには早いですよ、プロシュートさん」

「どっちのが似合うと思う?」
「さっきソルベさんが青みの服でしたし、こちらのストールを合わせてみてはいかがですか」
「ああ、それが良さそうだね、
Grazie」

「俺も腹が減ったなぁ…」
「もう、イルーゾォさんまで…わかりました、少し早いですがお茶にしましょう」

なにかと忙しく慌ただしい日常は、私の普通に落ち着いた。

釣り用のタオルがないと慌てるペッシは、任務がない日は朝から釣りに出かけることが多い。それで得た獲物は食卓に並べられるため、少しでも節約したい私としては万々歳だ。ギアッチョは今日任務に出かける日らしく、その為に準備を急いでいる。スーツケースに比較的真新しい衣服を詰めていたが、帰って来る頃にはボロボロになっているかもしれない。彼の仕事は中々に粗っぽいようだ。リゾットは日帰りの任務のようで、夜食に何が食べたいか絶賛悩み中である。昨日はパスタを夕食に出したので、スープ系か魚系か…。サンドイッチが手軽でいいのだが、まだリクエストをもらった事はない。ジェラートは度々ファッションチェックを私に委ねて来るようになった。どうやら私が少ない衣服をうまく着まわしていることを知り、なおかつ感性が合ったらしい。花の刺繍が入った青いストールを首にかけて行ってきますと軽やかな足取りで出かけて行った。ソルベはソルベで数分前に出ている。待ち合わせでもしているのか、それとも別の目的があるのか…そこまでは私も聞いていなかった。プロシュートとイルーゾォに至っては、腹が減ったと騒ぎ始める始末。やれやれと大量に作っておいたクッキーを皿に出してやる。子どもかと嫌味のつもりで、牛乳をコップになみなみと注いで出してやったが、ありがとうと嬉しそうに2人とも受け取るものだから何となく悔しい。

これが私の日常の一例。
そして平和すぎるなと感じてしまうほど、本当に穏やかだった。メローネとホルマジオが帰ってこない、そのことが気掛かりで、毎日少しずつ不安が募る。不安がっていてもしょうがないのだけれど、私がここにいる事で帰って来づらいなら、とても心苦しい。

「…お」
「どうした?」
「あいつら帰って来るってよ」
「マジか、長かったなァ」

クッキーを食べ終えてご満悦なイルーゾォが、小さな携帯を眺めて呟いた。

“あいつら”……
つまり、もうそろそろ私の不安も解消されるという事だ。
ああよかった。

床掃除用のモップを手に取りながら、安堵のため息を吐いた。

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