夢小説「La mia utopia」 | ナノ


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野菜は玉ねぎやじゃが芋、人参など基本的なものを揃え、ついでに香草と店主のお勧めを買う。今日はカブの質がいいらしく、5ついただいた。トマトは大量に買っておく。アジトでソースを作り、備蓄する為だ。あとで密閉容器も買いに行かなければいけないけれど、初期投資という事で納得してもらおう。

次に調味料と香辛料。塩胡椒と砂糖はあったからそれ以外を揃える。バルサミコ酢とローリエ、赤唐辛子とニンニク、バジルにローズマリー。カイエンペッパーも買っておこう。あれはインド料理などで辛味を足すものだけれど、意外とほかの料理にも使いやすい。パプリカパウダーでもいいけれど、あれは少しだけ甘みがあって、私は好きじゃないのだ。

続いてパスタと米。こちらも保存がきくため大目に買う。小麦粉はどこに売っているだろうかとキョロキョロしていると、リゾットが先に購入してくれていた。だいぶ最初の方の店にあったらしい。5kgとだいぶ大目に買ってくれたようだが、足りなければもう一度行ってくると真面目な顔をしていうものだから、ああ本当に生活力がないんだなと痛感できた。

ようやく肉を買いに行こうと思ったが、先にフルーツの店を見つけた為ちょっと寄り道。ベリーとプラムを1kgずつ買い込み、店主の奥様に試食させてもらった葡萄も1房買った。あとで生ハムを買うつもりだったので無花果もついでに注文しておく。お酒を嗜むであろう彼らのアテだ。おまけでりんごとレモンをタダでくれたマダムにお礼を伝え、また来ることを約束する。

さて肝心の肉は塊で買ってから家で小分けにし、冷凍しようと思う。であれば新鮮な方がいいがさて、どれも美味しそうだが…

「何を悩んでいる?」

振り返ると、後ろで荷物を台車に乗せて押していたリゾットが黒い目を細めていた。
台車はあまりの量の多さに見兼ねた御老人夫婦が貸してくださった物で、アジトへ運んだあと返しにくる約束をしている。その夫婦はオリーブやその加工品を売っているようで、感謝の意味も込めて美味しそうな黒オリーブとオイルを買った。

私はリゾットに商品が見えるように体を避けて、悩んでいる肉の塊二つを指差す。

「どちらが新鮮かなと思って」
「…それなら右だ」
「え?」
「右だ。店主、あるだけ包んで…」
「1キロで十分です!」

あるだけなんて買ったら冷凍庫どころか冷蔵庫全部使っても入りきらない。慌てて言葉をかぶせれば、大柄で恰幅の良い店主にカラカラと笑われてしまった。
肩身の狭い思いをしながら隣の魚屋でいくつかお勧めを購入し、一旦の食材の買い物は終了だ。ペッシのために牛乳なども購入できればよかったのだが、もう荷台に乗せれそうにない。そして確かまだ1本未開封のボトルがあったはずだ。暫くはそれで我慢して貰わなければ…

「もういいのか」
「はい、十分すぎるほどです」
「ならば一旦戻る」

そう言うや、行きとは別の路地へするりと進んでいくものだから、私はまた迷子にならないように小走りでついて行く他なかった。おそらく追っ手を許さない為なのだろうけど…すでに脳内の地図は全くの無意味。台車を押して進んでるとは思えないスピードのリゾットと逸れれば、一巻の終わりだ。

行きよりも僅かに時間をかけて、アジトにたどり着く。冷蔵庫に入れるものを全部入れて、他は地下室へ運んでもらった。かなり重いものもあったはずだが、リゾットは難なく運び入れてしまう。男性なら普通にできる事なのかはわからないが、とにかくすごいなと単純に感心してしまった。

「では台車を返しに行って、次は備品の購入に向かいましょう」
「まだ買うのか」
「初期投資です。こんなに買うのは今回だけですし、そもそも生活用品が殆ど無いから買いに行く事になってるのですよ?」
「…仕方がないな」

面倒だとはっきり顔に書かれているような気さえする物言いに、私はただ苦笑を返すしかなかった。

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