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『あら、なんで私は病院にいるのかしら?』

この言葉を聞くのは何十回目だろう。20回目?30回目?分からない。名前との会話は「体調はどう?」から始まる。昨日もこの言葉から始まったし明日も必ずこの言葉で始まるんだ。明日も明後日も明明後日も。俺がこう言うと名前はこういうんだ。

『あら、なんで私は病院にいるのかしら?』

「検査入院だよ」

『そうなんだ、早く退院したい。』

もう、半年も前から名前はこの状態だ。名前の記憶は1日しか持たない。事故の日から名前は止まったまま。事故の後遺症だった。記憶を溜めてるところがなんらかの原因で正常に働かないそうなんだ。シャマルにも直せなかった。シャマルは「これは、病気じゃない。俺には治せねぇな。これは名前の問題だ。」察するに多分心の問題なのだろう。ねぇ、いつになったら一緒に寝てくれるの?隣にいてくれるの?笑いかけてくれるの?ねぇ、どうしたら君を救い出せるの?君の手を握りながら時々こう思うんだ。俺と一緒じゃなかったら名前は事故にも会うことはなかったしこんなふうに今頃はなってなかったんじゃないかって。

「ごめんね、名前」

『綱吉は何も悪くないじゃない!』

この言葉を聞くと俺の中の罪悪感が少しづつ薄れる気がするんだ。毎日謝って毎日許しの言葉を聞いて安心するんだ。大した話ではないけど、その一つ一つが俺にとっては大切なんだ。けど、その会話すら名前は朝になったら忘れてしまうんだ。いつかプロポーズをしようと心に決めていたけど今のままじゃプロポーズしても、明日にはなにも覚えていないんだ。多分これは俺に対する罰なんだ。名前を守れなかった罰なんだ。いつまでこのループを続ければいいのか、わからない。名前と別れるとき必ず明日には覚えていますようにと祈るけど、なんの意味すらなかった。また次の日に名前が言うんだ。

『あら、なんで私病院にいるのかしら?』

20160318