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はかないねがい


「いねぇじゃん…」
必死で走ってきたのにさっきの女はいない。イライラが増してくる。机をみるとタオルがおいてある。やっぱりあの女が隠してバレそうになったから返したんじゃーねか。近づくとそれはピンク色のタオルで俺のじゃなかった。タオルを持つとひらりと一枚のメモ用紙が落ちる。それをひろう。そこには可愛らしいきっちりとした字で


-…-…-…-…-…-…-…-…-…-
タオルを探していたようなので。
よかったらお使いください。
返さなくていいです。
-…-…-…-…-…-…-…-…-…-


罪悪感が押し上げてくる。くそっ!タオルに顔を埋めるとふんわりと桜の匂いがした。



早く帰らないとお母さんが心配しちゃう。家に着くとせーくんの部屋を見る。もう灯りがついてるのを見たのは随分前だったきがする。少しさみしいな。「ただいま」後ろ髪を引かれる思いで玄関をあける。おかえりなさいと母が出迎えてくれた。「学校はどう?」『うん、なんとかやっていけそうだよ?』「でも、最近は精市くんとはいないのね。まぁ、中学生になったんだしあたりまえかもね。さ、ごはん出来てるわ」ご飯を食べ自室に戻ると電気もつけずにベランダに出てせーくんの部屋をじーっと眺める。おはな、ししたいな。ほろりと頬を涙が伝う。

「丸井、そのタオル」「幸村くん、机の上にあったんだよ。」一瞬、名前の匂いがしたような…。やばいな、本格的に名前不足だ。俺が帰るころには名前の部屋は電気がついている。だけど、今日は電気すらついてない。なにかあったのだろうか…。急いで階段を上がると部屋に入りがらりとベランダをあける。そこにはびっくりした顔の名前。頬が濡れている名前。

せーくん。顔がみたいよ。せーくん。声が聞きたいよ。せーくんいまなにしてるの?せーくん、せーくん。がらりという音にびっくりして顔を上げるとそこにはせーくんがいた。『せー….くん?』しゅたっとこっちにジャンプしてくる。「誰かになにかされた?」そういって涙をぬぐってくれた。ふんわりと鼻腔を刺激する優しい香りに涙腺が緩んでまた泣いてしまう。『ち、がうのぅ…せーくんに会いたくて…』

やっぱり名前はかわいい。俺に会いたくて泣いているんだ。「顔をおあげ。可愛い顔が台無しだ。」しゃくりながら泣いている名前は月の光に照らされてキラキラとしていて天使かと思った。

『せー、くん』『離れないで』
「いきなりどうしたの?」
『これからは、教室でまってても、いい?』

上目遣いでそう聞いてくる名前にだめだ。とはいえなかった。名前が泣くなんてよっぽどのことなんだ。「その代わり」

『その代わり?』

「君をずっと僕に守らせて」

名前は優しく微笑むと


『もうずっと前からせーくんに守られてるよ』

なんだか救われたきがした


20151225