新社長就任式典パレード



「ミッドガル第七歩兵連隊、到着いたしました!」





第七歩兵連隊隊長ことクラウドは声を張る。
無事に全部隊を集め、指揮官と副官の元へと集合した。

ずらりと後ろに整列する隊を見て、指揮官殿は満足気に口角を上げた。





「今度は間に合ったようだな。フッ…パレードが程なく始まる。心残りはないだろうな」





隊は全部集めたし、フォーメーションも決めた。
もう準備は完璧はなず。

クラウドは己の部隊に振り返る。

すると、先頭の隊員が叫んだ。





「ミッドガル第七歩兵連隊、気をつけ!」





ピシッと一斉に揃う。
その光景はなかなか圧巻だ。

あたし、エアリス、ティファはクラウドの後ろに立ち、その様子を見守る。
なんか隊長の側近って感じ?

こういう時、隊長は部隊の士気を高めるようなことを言うのだろう。

でもクラウドは黙ったまま、言葉に悩んでいる様子。
そんな背中をエアリスがせっつき、クラウドはやっと口を開いた。





「これから、俺たちは、世界中が注目する中、行進することになる。そしてー…」





たどたどしい口調。
ついには悩んで言葉が止まる。

ああ…クラウドー…。

まあこんなの言い慣れないだろうし、気持ちはわかるんだけどね…。

こうなったら、助け船が必要か。
あたしとエアリスとティファは、後ろでうんと顔を合わせた。





「我々の肩には、ミッドガル市民の期待がかかっている。失敗は、許されないだろう。しかし、恐れることは無い!」

「隊長が先頭に立ち、皆を引っ張って下さる。我々は隊長を信じ、ついていけばいいのだ」





エアリスとティファが援護する。
ふたりともなかなかいい言葉選びますな〜。





「ですよね!隊長!」

「あ、ああ…!」





エアリスにもう一度せっつかれ、頷くクラウド。

んじゃこのへんであたしもいっちょ続いちゃう!





「皆、見たであろう、今の力強い頷きを!こんなにも心強いことはない!我々には隊長がついている!さあ、隊長!」





あたしはクラウドに隊員たちの前に出るよう手を広げて促す。

その時クラウドと目があったから、少し微笑んで頷く。

だって、あたしたちの役目はここまで。
やっぱり最後は隊長に締めて貰わないとね。





「最後に、決めて」





ティファが小声で言う。
そこで覚悟を決めたらしいクラウドは、前に出て力強く隊員たちを励まし始めた。





「俺たちは優勝するためにここに来た!勿論、社長賞も頂く!それ以外に、このパレードのゴールはない!」

「「「「イエッサー!!!」」」」





拳を握るクラウドの言葉に隊員たちも応える。

どうやらクラウドもやっとノッてきたらしい。





「俺たちは、誰にも負けない!」

「「「「イエッサー!!!」」」」

「俺たちは最強だ!!」





……ちょっと、ノリすぎ?

凄い拳突き上げてるし…。
凄い隊員に近づいているし…。

これ…ちょっと気持ちよくなってきちゃってるな…。





「隊長、そろそろ会場へ」





察したティファが止まらなくなる前にグイッと腕を引く。
急に腕を引かれたクラウドは振り向きざま「へ」みたいな顔してた。

…吹き出すからやめてくれ。





「エルジュノンへ行きましょう」

「本番はここからです、隊長」





エアリスとあたしも声を掛ける。
社長賞狙うのに、ここで燃えすぎても困るのですよ。





「はい…」





何故か敬語で従うクラウド。

いや、本当笑い堪えるの辛いんだが。
思わずちょっと耐えきれず「ふっ」と小さく零したら、エアリスにちょいと肘で突かれた。

はい、すみません。

そんなこんなで、あたしたちはパレードの会場エルジュノンへと移動したのだった。





『ただいま、私はエルジュノンに来ております。ご覧ください、この人の数、そして熱気』





スピーカーから流れるレポーターの声。

パレートの様子はテレビ中継されている。
エルジュノンには観客が大勢集まり、物凄い賑わいを見せていた。

ルーファウスが登場すると熱気はさらに上がる。
ジュノンのシンボルでもある魔晄キャノン砲も発射され、盛り上がりは正に最高潮だった。

そんな盛り上がりの中で、ミッドガル第七歩兵連隊のパフォーマンスは最後になる。

ただでさえ緊張してるのに、まさかトリを飾るなんて思わないよねえ…。

でもやるからには全力を尽くすのみ…!





『エルジュノンで開催中のパレードも次が最後の部隊となります。ミッドガルの精鋭、第七歩兵連隊の登場です!』





テレビから流れるアナウンサーの声。
遂に出番がやってきた。

銃を持つ手に思わず力がこもる。

でも、さっき言ったよね。

恐れることは無い。
隊長を信じてついていけばいい。

こんなにも、心強いことは無いってさ。

先頭に立つクラウドの背中を見つめる。

よし、頑張るぞ…!





「左向け、左!第1演舞、はじめ!」





クラウドの声が響く。

隊長の指示は的確。
クラウド凄い。

パフォーマンスの最中は必死だったから、あまりアナウンサーの言葉は耳に入ってこなかったけど、評価は上々だったように思う。

それは観客たちの歓声からもよくわかった。

パフォーマンスは3部構成。
あたしたちはそれを一気に駆け抜ける。

そのすべてをやり切った時、あたしは物言えぬ達成感を覚えていた。

なんだろう…。
隊がひとつになって、全員でやり切ったような、そんな感覚。

大袈裟ではなく、感動。
本当にそんな感じだった。





『ミッドガル第七歩兵連隊に割れんばかりの拍手と歓声が送られています。彼らのパフォーマンスは、神羅の歴史に刻まれることでしょう。はたして社長賞はどの部隊が手にするのか、注目の表彰式はこのあとすぐです!』





やりきって落ち着いた時、やっと耳に入ってきたアナウンサーの声。

さあ、狙いの社長賞は取れるだろうか。
表彰台の上でルーファウスと対面して、なんとしても話を聞く。

パレードが終わり、参加した全部隊が整列する。
いよいよ表彰式の始まりだ。





「さて、諸君。ルーファウス新社長就任祝賀パレード、ご苦労であった。みなの情熱と忠誠心を目の当たりにして、新社長も大変喜ばれている」





壇上に上がりそう話すのは、治安維持部門統括のハイデッカー。

ガハハと笑って神羅ビルのエントランスで追い詰めてきたの忘れてないぞ。
でも兵隊って治安維持部門の所属になるのかな。





「それでは、これより表彰式を執り行う。まずは総合部門より、最優秀パフォーマンス賞を発表する」





まずは、優勝チームの発表。

パレードが始まる前、クラウドは「優勝を頂く!」と言って隊員たちを盛り上げた。
出来たら有言実行したい。

でもあたしたち、それに手が届くくらいの評判はきっと収めたよ。

ハイデッカーは赤い封筒から紙を取り出す。





「最優秀パフォーマンス賞は…」





生演奏のドラムロール。
大人しく整列したまま、ドキドキする。

ハイデッカーは紙から視線を上げ、その隊の名を口にした。





「ミッドガル第七歩兵連隊!」





ミッドガル…第七歩兵連隊…!
その瞬間、ワッ…と歓声が巻き起こる。





「やった…!」

「やったね!」

「うん…!」





あたしはエアリスとティファと思わず3人でハグした。
勝った、勝てちゃった…!!

あ、どうしよう、これすごくすごく嬉しいかも…!

クラウドは指揮官殿や副官殿と熱く握手を交わしてる。





「指揮官、前へ」





指揮官殿が呼ばれ、壇上に上がっていく。

ハイデッカーより指揮官殿の盾が授与され、指揮官殿は盾を掲げてこちらに手を振る。
厳しい人だったけど、今ばかりは笑顔を浮かべて声援に応えてる。

観客からも、盛大な拍手が贈られていた。





「続いて、社長賞を発表する。それでは若、どうぞ」





さあ、そして社長賞。
あたしたちにとっての本番はここからだ。

今度はルーファウスがマイク前に立ち、そしてまずは演説を始めた。





「私の父であるプレジデントは、ただの兵器開発会社でしかなかった神羅を世界一の企業へと発展させ、みなに、魔晄という名の富をもたらした。そんな、偉大な父にまずは感謝の意を表したい」





兵士たちは一斉に敬礼する。
勿論、あたしたちも。

演説は、流石…という感心だった。

どこまでが本心なのか。
綺麗な、真っ直ぐなスピーチ。

兵士の中には感動して、感化される人もきっといるんだろうなと思う。

観客でさえ、聞き惚れている。
そうさせる力みたいなものが、多分ルーファウスにはあったのかもしれない。





「さあ、諸君。新たな世界を一緒に創ろうではないか」





再び拍手が辺りを包む。





「それでは、社長賞を発表する」





そして遂に、社長賞発表の時。
先程同様、鳴り響くドラムロール。





「社長賞は…ミッドガル第七歩兵連隊!」





ルーファウスの口から発せられた、第七歩兵連隊の名前。

その瞬間、後ろの兵士たちが拳を上げてワッと喜び出す。
あたし、エアリス、ティファは先頭に立つクラウドに駆け寄った。

やった…!やったよ、あたしたち…!
本当に社長賞取れちゃった!!

エアリス、ティファとハイタッチして、手を握り合って万歳する。

でもそうして喜びあった直後、あたしたちの間に少し緊張が走った。






「それでは隊を代表し、そこの4名、上がりたまえ」





急にモニターに、あたしたち4人の姿が抜かれた。
そしてルーファウス直々に、壇上に来るよう指示される。

え…っ?
4、名…?

先頭に立っていたから…?





「どうした?」





戸惑いを汲んだかのように、呼びかけて来るルーファウス。

いや、展開としては願ったり叶ったりだ。
でもわざわざ4名と指名されたことが気になって…。

でもここで引くわけにはいかない。
そもそものあたしたちの目的でもある。

あたしたちは歩き出したクラウドに続き、4人で壇上へと上がった。





「敬礼!」





ルーファウスの前に立つと、ハイデッカーの声で敬礼をする。
本当に、ルーファウスの目の前まで来られた…。





「貴殿たちの力強いパフォーマンスを称え、ミッドガル第七歩兵連隊に社長賞を授与する。おめでとう」





労い言葉。
また会場中からの拍手が贈られる。

その直後、ルーファウスはカチッ…とマイクの電源を切った。





「この者たちと直接話をしたい。放送を止めてくれ」





そしてルーファウスは中継を切るように指示する。

…あたしたちと、直接話すため?
なんだかちょっと、嫌な予感がする。





「折角の晴れ舞台だ。メットを取ったらどうだ?クラウド・ストライフ」





ルーファウスはそう言って微笑む。

…バレてる。
微笑む社長を前に、あたしたちは静かに壇上でメットを外した。



To be continued


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