第七歩兵連隊の隊長



「わーお、すんげー」

「ナマエ、離れるなよ」

「はいはーい」





アルジュノン。
メインストリート。

パレードを控える街は、まだ静かながらも人が集まり、これからの賑わいを彷彿とさせる。

ジュノンの街ってこんな感じなのかー。
あたしは初めて見る街の景色に純粋にテンションが上がっていた。

でも、きゃっきゃしてる場合じゃないのは勿論わかってますよー。





「街にいる隊員を集めるんだよね」

「ああ。ミッドガル第七歩兵連隊だ」





確認するように聞いたティファにクラウドは頷く。

ミッドガル第七歩兵連隊。
隊長に指名されたクラウドの任務は、街に散らばる自分の隊員を集めること。





「この腕章の人たち、だね」





エアリスは自分の左腕につけられた腕章に触れる。
あたしも自分の左腕を見た。

クラウドにもティファにもついている、第七歩兵連隊の証だ。





「行くぞ」





クラウドはそう言って歩き出す。
…けどその時、あたしはふと目を向けた歩道に気になる人物を発見してグイッとクラウドの腕を掴んで止めた。





「ちょーっと待って!クラウド!」

「うっ…、なんだナマエ!急に引っ張るな!」

「いや、あれ!」





歩き出したところで止めたから怒られた。

でもあれよあれ!
あれ見れば絶対わかる!!

ティファとエアリスも「ん?」とあたしの指さした先を見る。

全員で見れば、皆も納得してくれた。





「あれ、もしかしてバレット?」

「ね!絶対そうでしょ!あれ!」





目を凝らしたエアリスにうんうんと頷く。

あたしが歩道のとこで見つけたもの…というか、人。

それは真っ白な水兵の服をまとった大男。

一瞬見た時は違和感だった。
でもまじっと見て、確信に変わった。

そこにいたのは間違いなくバレットだった。

あたしたちはちょっと悪戯してやろうと、その背後からこっそり近づいた。





「こら!」





エアリスが声を少し太くして声を掛ける。
するとバレットは肩をびくりとさせて慌てたようにこちらに振り返った。





「なんだよ、俺はただの水兵だぜ?怪しいもんじゃねえ」





若干引きつりつつ、笑みを浮かべるバレット。

その発言がもはや怪しい。

エアリスと一緒にあたしとティファも銃を持ってにじりにじりとバレットに近づく。
クラウドは腕を組んで微妙な圧を掛けてる。

必死にアピールで笑みを絶やさないバレットがおかしい。
あたしたちの堪えは長く続かなかった。





「ぷ…あははははっ!」

「あは、あははははは…っ!」

「あはははははっ!」





あたしとティファとエアリスは吹き出して笑う。

そこでやっとバレットもこちらに気が付いたらしい。





「なんだ、お前らかよ、おどろかすなよ!」

「バレット、かわいい。あははは!」





ティファは真っ白な水兵姿を可愛いと言う。
そして笑う。

釣られてあたしとエアリスもまたけらけら笑ってしまった。

いやでもこれは笑うわ…!
まさかの水兵さん…!!





「俺の苦肉の策を笑うな!」

「ごめんごめん」





ティファは謝る。
いやくすくす笑ってたけど。

バレットは「たくっ…」と言いながらも、安堵したようだった。





「港の行き方は確認した。そっちは…うまくやってるみてえだな」

「ああ。意外と馴染んでいる」





クラウドもそう答える。





「あたしたち、クラウドの隊だからね!」





あたしも結構ノリノリだ。
ていうかわりと皆ノリノリだよね。





「社長賞、狙っちゃうんだよ」

「へっ、そりゃすげえな」





ポーズを決めながら言ったエアリスに「へっ」と笑うバレット。





「応援、よろしくね」





最後にティファがそう笑って、そこでバレットとは別れた。
まあ雑談はほどほどに、そろそろ隊員さんたち探さなきゃだしね。

隊員は本当に、至るとこに散らばっていた。

ルーファウスのパネルの前で写真で記念撮影していたり。
ジュノンのシンボルであるキャノン砲を眺めていたり。

そうして少しずつ隊を集めていく中、今度は見慣れた赤毛を見つける。





「隊長、隊長。自分、気になるものを見つけたであります」

「なんだその喋り方…って、あんた、さっきからよく見つけるな」

「えへへー」





今度はちょんちょん肩を突いて教える。

ワンちゃんだと思われてるのか、子供たちに囲まれてる赤い獣。
皆も気が付いたところで、あたしたちはそちらに近づいた。





「似合っているじゃないか」





近づくと、声を掛ける前に顔を上げたレッドXIII。
あれ、なんか普通にバレちゃった。





「あれ、バレてる」

「ニオイでわかる」





エアリスが笑いながら言うと、レッドは平然と答えた。

ああ、なるほど。
レッドに関しては見た目変えても意味ないわけか。





「レッド、鼻も凄いんだ」

「まあ、神羅ビルでもニオイ追ってくれてたしねー」





感心するティファと、あたしは神羅ビルでの脱出劇の事を思い出す。
宝条博士のニオイがまだ残ってるーとかなんとか、そんなこと言って道先導してくれてたもんね。





「魔晄の街を出て、本来の能力が戻りつつあるらしい。この街も、早く出たいものだな」





そんなことを言われて「へえ…」と思う。
ミッドガルでは本領発揮出来てなかったのか。

ジュノンも海底魔晄炉があるし、魔晄の力に頼って街を維持してるのは此処も同じかな。

とりあえず、バレットとレッドXIIIの無事を確認出来たのは良かった。

あたしたちはレッドXIIIとも別れ、また隊員集めに戻った。





「隊長〜…」

「…今度は何を見つけたんだ」





さっきから隊員は見つけてないのに、他のものは色々見つけるあたし。

クラウドの視線からもそれを感じる。
いや、うん…自分でもそれは思うのさ。

ついさっきもバーでしょぼーんとしてるイリーナを見つけたばかり。
「先輩の足を引っ張っちゃった…しかもそれを主任に見られたかもー…」って。

なんか色々自信満々に見えたけど、ちょっとイメージ変わった気もするなーなんて。

で、今回見つけたのも…まあ、正にそんな感じで。





「フフッ…」





御機嫌な低い笑み。
それは見慣れた強面サングラススキンヘッド。

イリーナに続き、ルード発見…!

彼は何やら地下にあるバーへと通されている様子。

ただ通される前に、なにやら店員さんみたいな人と額をぶつけあったり、頭を擦ったり…謎の行動をしてたんだけど。





「怪しい…」





あたしの肩に手を置き、じいっとその様子を見て目を細めたエアリス。

まあどう見てもちょっと怪しいよね、ということで。
あたしたちはその行動を探るべく、ちょっとそのバーを覗いてみることにした。





「秘密倶楽部…グラブレセント?」





看板を読み上げる。
秘密倶楽部、ってなんぞ…?

クラウドが扉を開ける。

すると中から軽快な音楽が響いてきた。





輝け♪磨け♪オレの太陽♪

輝け♪磨け♪キミの太陽♪





皆で楽しそうに肩を組んで歌ってる…。

ていうか、なんだろう…。
なんか、驚異のスキンヘッド率…?

クラウドを先頭にあたしたちは中へ入る。

すると、歌がぴたっと止まり、何故か全員から怪訝な目を向けられてしまった。

ええ!?なぜに!?





「ルードさん、お願いします」





ひとりの男の人がルードに何かを頼む。
するとルードは「うむ…」と頷き、こちらに声を掛けてきた。





「ここは初めてか?」





エアリスが恐る恐る頷く。





「ここで飲むなら、まずはメットを取るんだな。それが俺たちのルールだ」





そう言ったルードの言葉に合わせて、全員が自分の頭をキュッと擦る。

はっ…!
もしかしてここはスキンヘッドさん御用達のバーということ…!?

なんとなく状況が読めた気がする!

でもまさかルードの前でメットを取るわけにはいかない。
ていうかあたしたち誰ひとりスキンヘッドじゃないし!





「どうした。お前たち、もしかして…伸ばしてるんじゃないだろうな?」





ルードがサングラスを光らせながら近づいてくる。

ええ!?
そんなあかん感じなの!?

伸ばしてたら立ち入り禁止!?

ていうかメット取られたらやばくねええええ!!???

と、焦ったところで…何人かの兵士さんがルードとの間に入ってくれた。





「待ってくれ!この人は俺たちの隊長だ!」





隊長…。
あ、腕章ついてる…!

どうやらその人たちは第七歩兵連隊の人たちだったらしい。

彼らはクラウドの前に整列した。





「隊長。ここはちょっと特殊な酒場でして。メットのままじゃダメなんです」





丁寧に説明してくれたひとりの隊員さん。
やっぱなんか…そういう感じなのね…。

クラウドは若干困惑しながらも、威厳を見せるように呼び掛ける。





「自由時間は終わりだ。全員外へ出ろ」

「「「「「ハッ、了解しました!」」」」」





大勢の隊員がぞろぞろとバーを出ていく。

そういやさっきから思ってたけど…クラウドさっきから隊員さんに呼びかける声とか何気に様になってるよなあ。
ちょっといつもより声太くして張ってるの。

それっぽく見せようとしてる姿が少しおかしくて、でもわりと様になってて格好良くて。

いいなー、って。
そんなことを思うのは、恋ゆえの盲目なのかもなーなんて思った。



To be continued


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