一番頼りにしてるから



エアリス救出のため、あたしたちはプレートの上に行く方法を探すことにした。

七番街が崩壊した今、列車などの通常ルートは厳戒態勢だろう。
そうなると別の…何か裏ルートのようなものを探さなくてはならない。

そういうことに詳しい人といえば…。
そう考えた時、浮かんでしまった人物がひとり…それは。





「相変わらず、でっかい屋敷だなあ…」





前まで来て、その金ぴかゴテゴテのバカでかい建物を見上げる。

正直、あたしもティファもクラウドも気乗りはしなかった。
でも可能性があるのならと来るだけ来てみた。

訪れたのは、ウォール・マーケット。
浮かんだ人物は…ドン・コルネオ。

骨折り損にならなきゃいいけど…と願いながら、あたしたちはコルネオの屋敷に入った。





「見張りが全然いない…」





屋敷に入ったあたしはきょろきょろとあたりを見渡した。
それは屋敷があまりに静かだったからだ。

だって前に来たときはコルネオの部下がいっぱいいたのに。
というか、門番がいてそもそも入るのだって困難だったわけで。





「ナマエ、コルネオの部屋、行ってみるぞ」

「あ、うん」





クラウドに呼ばれて追いかける。

コルネオ、自室にいるんだろうか。
とりあえず来たからには探してみようと、あたしたちは2階にあるコルネオの部屋に向かった。





「2階も人の気配なさそう…」





上がった階段の先で、あたしはまたきょろっと辺りを見た。
でも、2階も何も変わらず人の気配はない。

クラウドを先頭に、コルネオの部屋のひとつ手前のオーディションをした部屋まで来る。

ここにもいないか…とあたしは思った。
だけど部屋に足を踏み入れたその瞬間、クラウドは突然背中の剣をびゅっと勢い良く振るった。

え、なに!?と、ちょっとビビるとその剣先を見てすぐに納得した。





「レズリー!」

「…お前たちか」





あたしはそこにいた彼の名を口にした。
クラウドの剣の先にいたのは、銃を構えたレズリー。

相手の顔を確認したクラウドとレズリーは互いに武器を引く。





「何の用だ」





再びここを訪れたあたしたちに、レズリーは尋ねてきた。

まあレズリーからすれば、もう用は済んだだろうって感じだよね。
少なくとも、レズリーはここがロクでもない場所だって認識は持ってそうだから。

一先ず、あたしたちはレズリーにプレートの上に行く方法を探していることを話した。

するとレズリーもここを訪れた理由に納得する。
そしてその方法ならコルネオではなく自分も知っていると。





「この先に用がある。あんたたちが手伝ってくれるなら、上に行く方法を教えてもいい」





彼はコルネオの部屋まであたしたちを通し、前に落とされたあの下水道へと繋がる穴の先に付き合えと言ってきた。
なんでも、この先にはコルネオの隠れ家があるのだとか。

まあ、罠の可能性は捨てきれない話ではあった。
だからバレットとかはまずその辺を気にしてた。

でも、あたしはレズリーなら乗ってみてもいいんじゃないかと思った。

クラウドはどうだろう?
そう思い、あたしはクラウドをちらりと見た。





「わかった。手を貸そう」





するとクラウドも結構すんなり了承した。

裏切れば、斬る。
ただそれだけの話だと、そんな風にも言っていた。

でも、クラウドもレズリーが他の部下たちとは違うことは感じていたと思う。





「信じるよ?」





そしてティファもレズリーにそう声をかけた。
ティファもレズリーがサポートしてくれたのは見ているから、特に異存はないのだと思う。

だからあたしも笑って頷いた。





「うん。あたしも、レズリーは信じてみてもいいと思う」





わりとストレートだったかな。
そんなトーンだったから、レズリーは面を食らったような顔をしていた。





「おい、ナマエ。おめえ、えらく軽いな」

「そう?でも大丈夫だろうなって思うから」





バレットにもそんな風に言われたけど、けろりとそう返す。
だってそう言える理由は、指折り数えられるくらいにはあるから。

こうして、あたしたちはレズリーに手を貸すことを決めた。

レズリーは先に下水道へ降りていく。
バレットやティファもすぐにそれに続いていった。





「随分とはっきり信じたな」

「え?」





さて、じゃあ次はあたしかな〜なんて、しゃがんで穴をのぞき込んでいると、傍で一緒にしゃがんでいるクラウドにそう声を掛けられた。

あたしはぱっと顔を上げる。

もうここに残っているのはあたしとクラウドだけだ。
クラウドはじっとこちらを見ていた。





「うーん、まあ助けてもらったしね」

「助け?」

「そう。アニヤンから服預かって、渡してくれてたのレズリーだよ」

「ああ…」

「あの時ね、上手くやりなって言ってくれたの。レズリー」

「……。」

「…クラウド?」





そこまで話して、なんだかクラウドの顔がちょっと不機嫌そうなことに気が付く。

う、うん…?
なぜに不機嫌…?





「…気に入ったのか」

「ん?」

「…あいつのこと」

「え?」





じっと見つめられたまま。
聞かれた言葉にきょとんとする。

気に入った?レズリーのことを?

すると、クラウドはちょっと悩んだみたいに視線を揺らした。
でもすぐにまたじっと見つめられて、そしてそっと手をこちらに伸ばしてきた。

びっくり。

その指先は、ちょっと控えめにあたしの頬に触れた。





「クラウ、ド…?」

「……。」





少しの間。
戸惑っていたような指先は、ゆっくりと頬に落とされてぴたりと手のひらが触れる。

…まるで、触れていいのか、確かめてたみたい。

そんなこと思うの、自惚れ…?

でも。





「…あまり、俺以外の男を褒めるな」

「へ…」





そう一言だけ言うと、クラウドは頬から手を離した。
一緒に視線も逸らされる。

その横顔は、なんだか気恥ずかしそうにしていた。

俺以外の男と褒めるな…。

言われた言葉の意味…。
それって、もしかして…。

ぽっと頭に浮かんだこと。

あたしはそっとクラウドに近づき、その顔を覗き込んだ。





「もしかして…やきもち?」

「っ…」





聞いてみる。
するとクラウドはビクリとした。





「…恋人が他の男を褒めていたら、面白くないなんて当たり前だろ」

「……。」





恋人。他の男を褒めたら。面白くない。
結構はっきりと紡がれた言葉。

ああ、どうしよう。
胸に溢れかえっていく。

これは、嬉しいって気持ち。

ああ、頬…緩む。
抑えられそうにないや。

あたしはふっと笑った。





「えへへっ…恋人…へへ、そっかあ…!」

「…あんたは俺の恋人だろ」

「うんっ!でも、クラウドもどっかしらで信用してみてもいいって思ったから手伝おうって言ったんじゃないの?」

「…別に、信用はしてない。裏切れば、言った通り斬る。まあ、ワケありのように見えたのは確かだが…」

「うん、あたしもワケありって、そう思った!でも、確かにレズリーのことは信用しても大丈夫そうだなとは思ったけど、でもね、もしクラウドが反対したら、あたしは素直に頷いたよ」

「え?」

「クラウドが信用しなかったり、何か懸念を抱いたら、そっちを信じたってこと。きっとそれ相応の理由があるだろうし、それに納得する。だって、一番頼りにしてるのはクラウドだもん」

「ナマエ…」





にこりと笑う。
するとクラウドは少しだけ目を丸くして、でもすぐに同じように微笑んでくれた。

そうだよ。
だって誰より信じて頼りにしてるのはクラウドだから。





「あたしさ、腹の探り合いとか苦手なんだよね。駆け引きとかそういうの全然ダメだなー」

「ああ、まあ得意そうではないな」

「うわ…ぐさり」

「…自分で言ったんだろ」

「あはは、まあね!でもだから何かあったら、クラウドのこと一番に頼るからね!よろしくね!」

「ふっ…ああ。任せてくれ」

「わは、頼もしいー!」





きゃー、と盛り上がる。
だって、任せてくれとかカッコいいもん!

それに、頼っていいって言ってくれてるのが嬉しくて。

クラウドも、もう機嫌良そうだ。





「おい!!ナマエ!クラウド!お前らなにしてんだ!!さっさと降りてこい!!」





わーい、なんて喜んでた。
でもそれは地下から聞こえたバレットのドでかい声によってスパーンと切り裂かれたのだった。



To be continued

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