不思議な縁



奇跡が起きた。

クラウドが、あたしの事を好きだと言ってくれた。

夢にまで見た、奇跡…。

布団の中に潜った後も、しばらくはドキドキしてた。

でも、やっぱり色々あったから体は疲れていたらしく、いつの間にか眠りについてしまっていた。
クラウドが話を聞いてくれたから、ちょっと気持ちが楽になったのもあったかもしれない。

そうして迎えた朝…。

階段を下りてリビングに向かうと、そこには既にクラウドの姿があった。





「あ…、クラウド…おはよう」

「あ、ああ…」





階段を降りる足音に気が付いてクラウドがこちらを向いてくれたから、あたしは挨拶を口にした。

なんかちょっとどもっちゃった気がするけど…。
でもそれはクラウドの方も同じで、どこか戸惑ったような反応に見えて…。

…そんなやり取りに、昨日の出来事が紛れも無い現実なのだと実感する。

いや、まだ疑ってるのかって感じかもだけど…。

でもやっぱりね、何度だって思っちゃうよ。





「眠れたか?」

「うん、大丈夫」

「そうか」





クラウドはそう言って優しく微笑んでくれた。

…う。
朝からトス…とハートに矢が撃ち込まれた気がする。

この人と両想いになれたとか本当にどんなミラクルだよと。

本当、不思議な感じだ…。





「あんたには世話になりっぱなしだ。この恩は忘れねえ。俺に出来ることがあったら何でも言ってくれ」

「困った時はお互い様さ」





しばらくすると全員がリビングに揃い、バレットを筆頭にあたしたちは改めてエルミナさんに感謝を告げた。

家を失ったあたしたちを泊めてくれたこと。
マリンを預かってくれたこと。
ウェッジを休ませる場所を提供してくれたこと。

本当、感謝してもし足りないくらい、お世話になってしまったから。

そして…そうして頃合いを見つつ、あたしとクラウドは顔を合わせた。

昨日、花畑から戻ってくる途中、あたしはクラウドとエアリスの事について話していた。





《ねえ、クラウド。また明日、エルミナさんにエアリスのこと話して見ようか。今度はあたしもお願いしてみるよ》

《ああ…。俺より、ナマエが言った方がエルミナも納得する気がする。あんたの方が、きっと気持ちを汲んだ言葉を選べる》

《うーん、どうかなあ。でも、あたしも助けに行きたい。それにエアリスが帰ってきたら、きっと…また少し皆で笑える気がするんだ。エアリス自身も、ね》





クラウドはエアリスを救出しに行くべきたとエルミナさんに言っていた。

だけどエルミナさんは、事を荒立てないでくれとそれを止めた。
用が済んだらきっと、すぐに帰してくれるはずだから…と。

それはエアリスを失いたくないから。
今以上の悪化を恐れての言葉だっただろう。

でも、クラウドの話を聞いていると、あたしもエアリスを助けに行った方がいいと思った。

だから、一緒に迎えに行こうと、そう話をしたのだ。





「エルミナ」





クラウドが切りだした。
するとエルミナさんは何の話をしようとしているのかを察したように、小さく息をついた。

でもそれは昨日とは違い、話を逸らそうとするような感じではなかった。





「あれから考えてみたよ」

「…呼ばれている気がするんだ。だから…」

「エルミナさん、あたしたち、エアリスのこと迎えに行きたいです。…上手く言えないですけど、誰かが迎えに来てくれるって…凄く嬉しいから。エアリスに、そうしてあげたいんです」





クラウドに合わせて、あたしも気持ちを伝えた。

理屈じゃない、本心。
エアリスだから、助けに行きたい。迎えに行きたい。

すると、それを聞いていたティファも言葉を重ねてくれた。





「私からも、お願いします。助けたいんです、友達だから」





それを聞いたエルミナさんは小さく目を伏せる。
そして少し考えた末、頷いてくれた。





「薄々わかってたのさ。いつか、こういう日がくるんじゃないかってね。それでも…、エアリスを助けてやっておくれ」





その言葉に応える様に、あたしたちは頷いた。

クラウドも、ティファも、バレットも。

これでエアリスを助けに行ける。
皆で、必ず助け出す。

こうしてあたしたちは、エアリスの家を後にすることにした。

扉を開けて、朝陽の眩しい花の溢れる庭に出る。
そしてそこで、少しだけ足を止めた。

理由は、バレットを待つため。

神羅ビルに乗りこんだら、此処には当分戻ってこられない。
またしばらくマリンには会えなくなってしまうから…。

ならば、別れを惜しむ時間があってもいいよね。

だからあたしとクラウドとティファは先に家を出て、外でバレットを待っていた。





「ねえ、クラウドとナマエ、なにかあった?」

「「え」」





バレットを待っている途中、突然ティファがそんな事を聞いてきた。

その言葉にあたしとクラウドはぴしっと固まる。
ちょっと、変な声も出た。





「……。」

「な、なにか…とは」




だんまりクラウド。
そしてどもるあたし。




「うーん…なんだかふたりとも挙動不審だから」





ティファは首を捻りながら言う。

きょ、挙動不審…!?
でも正直否定できない気がするぞその辺…!

だって変にドキドキして、平常心じゃないのは自分でわかってた。

だけど…ティファには言うべき、だよね。

前に、ティファにもし恋人が出来たとしたら…きっと教えてくれるだろうって、思ったことがある。
だからその逆…自分にそう言う人が出来たなら、きっとティファには話すだろうって、漠然と思ってた。

…でもそう言えばティファは、クラウドの事…どう思ってるのかな。

なんとなくそんな不安がよぎる。
いやでも、だからって内緒にするのはちょっと違うだろう。





「なーんかもじもじしてて…。昨日の夜、何かあったの?」

「へっ…」

「図星?うーん、もしかして…付き合い始めたりした?」

「!!!」





ティファの言葉が核心を突いた。

思わずビクッとする。

つ、付き合った…!
でもそれを聞いて我に返った。

あれ、でもあたしとクラウドって今、どういう関係なの?

恋人…でいいの?
でも、付き合って下さいとかそう言う話はしてないよ!?

え、いや…でも、いやいやいや…!?

あたしがそう混乱していると、隣でクラウドがこくんと頷いた。





「ああ…そうだ」

「え!そ、そうなの?!」

「え」





答えたクラウドにあたしが驚いた。
するとクラウドがショックそうな声を漏らす。

え、あ…。
いやあたしの反応がおかしいのはわかる。

驚くなら普通ティファだろと。

でも、そうなのって…いやでも、それでいい…のか…。





「あ…いや、えと…いいのかな、と…?」

「…嫌なのか?」

「そ、そんなわけ…!えーと…じゃあ…ふ、不束者ですが、よろしくお願いします…」

「…なんで急にそんな改まるんだ」





もうよくわからないからとりあえずお願いしますってクラウドに頭を下げたらちょっと変な顔された。
すると、そんなあたしたちの様子を見ていたティファはふっと軽く噴き出してた。





「…あははっ、もう、ふふ、何してるの。でも、両想いってことで、いいんでしょ?やっぱりそうだったんだ。仲良しだなとは思ってたんだけど…、そっかあ…」

「あ、ティファ…」





なんだか意味深に頷くティファ。

でもその意味が読めなくて、あたしは戸惑いがちにティファに声を掛ける。
するとティファは少しだけむくれ、あたしの肩をトンと叩いた。





「はーあ…寂しい。クラウドにナマエのこと取られちゃうなんて」

「え…?」

「最近ずっと思ってたの。私よりクラウドの方がナマエのこと知ってたり、なんだか悔しくて」

「く、悔しい…?」

「クラウド、ナマエのこと泣かせたら承知しないから」

「…肝に銘じておく」

「よろしい」





ティファはにっこり笑った。
え…なんか、心配とかは杞憂…だった?

するとその時、エアリスの家の方からドデカイ声がした。





「はあ!?お前らいつのまにそんな仲になってたんだよ!」





見ればそこには家から出てきたバレットの姿があった。
何処から聞いてたかはわからないけど、話を把握出来るくらいには聞いていたらしい。

うわあ…なんか、うわあ…。

こういう話題の中心に自分がいるってなんだか物凄く恥ずかしくなってくる…。

頬が熱くなって、うう…と両手で抑えれば、ティファがちょんちょんと肩を突いてきた。





「ふふ、ナマエ、おめでとう!よかったね」

「…ティファ」





その後、歩きながらこっそり聞いた。

ティファはクラウドと、子供の頃にちょっとした約束をした。
ソルジャー…強くなったら、ヒーローになって自分が困ってる時に助けに来てって。

そんな、小さな可愛らしい話。

だから村を出た後、少しだけ気にしていた。

でも、それ以上でもそれ以下でも無いのだ、と。





「うーん、でも、なんだか不思議。私の幼馴染みと、ナマエがくっつくなんて。クラウドと再会した時は、想像もしなかったよ」

「ああ…うん、まあ…縁って、不思議だね」

「ふふふ、そうだね。…ねえ、ナマエ」

「うん?」

「…ナマエは、もし、もしもクラウドが…」

「ティファ?」





ティファは何か言いかけた。
もし、クラウドが?

でも、それ以上言葉が紡がれることはない。

ティファは「ううん…」と首を振った。





「ごめんね、なんでもない」

「ええ?なーにそれー?」

「うん…ごめんね。本当に何でもない。ふふ、ただね、ナマエが幸せなら、私は嬉しい」

「ティファ…」





ティファはそう笑ってくれた。

ちなみに一方でクラウドは、いつからちょっかいかけてたんだよとか、ソルジャー様も隅に置けねえなあ、とか、バレットにからかわれてだいぶ不機嫌そうだった。



END

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