会いたかった



あたしはとにかく走った。
セフィロスが向かった方向、クラウドの元へ。





「あっ…!」





がむしゃらに走って、そして金属のぶつかる音を聞いた。

誰かが戦ってる!
音を頼りに辺りを探ると、そこにふたつの人影を見つけた。

いた!クラウドとセフィロス!

やっぱり戦っていた。
でもまだ他の皆は誰も来てないみたい。

一対一。

英雄セフィロス…。
その名は伊達ではないのか、その時クラウドの体が弾き飛ばされた。





「っ!」





心臓がドクンと跳ねる。
セフィロスは漂う瓦礫を宙に集め、体制を崩したクラウドに落とそうとしていた。

そんなこと、させるか!!

だからあたしは走った。
剣を構えて、魔力を込めて。

その勢いのまま、剣に乗せた魔力を思いっきり斬撃として放った。



パアンッ!!!



魔力を乗せた斬撃は、瓦礫の塊を粉々に弾けさせる。

よし…!
大成功っ!

結構綺麗に決まったでしょ!
ふふん、とちょっと得意気な顔したかも?

攻撃を見たクラウドはこちらに振り向いてくれた。





「えへへっ、クラウド!会いたかったよ!」





顔を合わせた時、真っ先にそう言った。

だってなによりなにより、一番に出てきた感情はそれだったから。

するとクラウドはふっと小さく笑った。
そして頷いて、同じように返してくれた。





「ああ。俺も、ナマエに会いたかった」





ずっきゅーーーん!!!

マジで心臓がそんな音立てた。

クラウドが!
あたしに会いたかっただってー!!

きゃー!ってなった。
口に出た。

微笑みながら言ってくれるのがまたもうたまらない!

テンション高ぶった。
いやでもね、そんなこと言ってる場合じゃないのは勿論わかってるよ。





「頼む」

「喜んで!」

「でも、必ず守る」

「うん!あたしも、クラウドのこと守る!」





並べた肩。
それは信頼と、互いを守りたいという気持ち。

さあ、切り替えて。

共に見据えるのは、セフィロス。

クラウドが戦うべき相手。
そして、星の未来を脅かす…本当の敵。

あたしはクラウドと駆け出し、ふたりでセフィロスに立ち向かった。





「ナマエ!俺がやる!だからっ」

「了解!」





戦っている最中、少しずつクラウドが気を高めていたの、気が付いてるよ。

準備は整った。
その合図にあたしは頷く。

あたしの役目はクラウドが撃ち込む隙を作ること。

走り出し、そして剣を振るいながら風のマテリアを発動させた。





「ふっとべえッ!!!」





突き上げた剣。
発動させたマテリアは風を巻き起こしセフィロスの体を宙へと押し上げた。

そこに待ち構えているのは、クラウドだ。

クラウドは宙に浮いたセフィロスの体に向かい、思いっきり大剣を振り下ろした。

それは、ビリッ…とした衝撃が周囲にも伝わるほど。





「やった!?」





技を決め、タン…と傍に着地してくれたクラウド。
ふたりでセフィロスの方へ視線を向ける。

今のは結構手応えあったはず!

でも、そうして見たセフィロスもまたクラウドと同じように地にタン…と軽い足で着地した。

嘘…あの攻撃を喰らって…?

少しだけ動揺した。
そしてその背の片側からだけ…大きな漆黒の翼がパサッと広がった。

片翼の、黒い…天使…?

そんな言葉がよぎった。
その直後、セフィロスはこちらに向かい、重力の球のようなものを放ってきた。





「う…っ!」

「ひゃっ…!」





物凄い早さだった。
何が起こったのかもわからないくらい。

気付いた時、あたしとクラウドはまるで体を張り付けられたみたいに背後にあった岩に体を押し付けられていた。

なにこれ…!重力…!?
腕一本ですら動かせない。





「ぐっ…」

「…っ」





あたしは横向きでクラウドの方に顔が向く形で技を受けていた。

クラウドは仰向け。
同じように身体を動かせない彼の姿がすぐそこにある。

腕を伸ばせば、簡単に触れられるはずの距離。
だけど今はそれが叶わない。

そしてセフィロスは無情に、クラウドの顔にその長い刃を差し向けた。





「クラ…ッ」





まずい、待って、助けなきゃ…!
嫌だ、嫌…嫌…っ!!

必死に力を込めて、腕を上げようとする。
でもちっとも動いてくれない。

動いてえッ…!!!

クラウドが目の前で殺される。
そんな絶望に塗りつぶされかけたその時、傍で銃撃の音が聞こえた。





「え…っ」





その銃撃はセフィロスに向けられたものだった。
セフィロスは攻撃を軽く剣でいなすと、一度あたしたちから離れていく。

その瞬間、フッ…と抑えつけられていた力がなくなり体が軽くなった。

急いで上半身を起こすと、そこにいたのは大柄な男の人。





「バレット!!」

「派手にやってんな!」





あたしが呼べば、ギミックアームを構えてニッと笑うバレットの姿がそこにはあった。





「ナマエ…っ、大丈夫か?」

「うん、平気!」





クラウドは慌てた様にあたしを気遣ってくれた。
頷けばホッとしたように肩に触れて、一緒に立ち上がってくれる。





「バレット、ありがと、ナイスタイミング」

「おうよ!さすが俺様ってなもんだな!おいクラウド、ナマエを守んのはお前の役目だぞ。もう俺は見ねえからな」

「当然だ。行くぞ」





クラウドの声で再びセフィロスを見据える。

なんか、くすぐったいやりとりあったけど…。
ううん、でも、想いは力になるから。

よし、心機一転。
ここからは3人で戦う!

あたしとクラウドはバレットの支援を受けながら、剣を構えて走り出す。

さっきの手応えじゃダメだった。
それならふたり掛かりで技を決める。





「ハァッ!!」

「せやあッ!!」





バレットの後方支援と、ふたりで振るった剣。
当たりは悪くなかった。

確かな手ごたえを感じながら、あたしとクラウドはバレットの元へ飛び退く。

そうして見たセフィロスの体はぐらりと揺れていた。





「やったか!?」





バレットの言葉通り、少し胸に期待が浮かぶ。

その時、セフィロスの背後からいつものフィーラーが飛び出してきた。
でも、そのフィーラーたちはあたしたちに届く前に消える。

それはどこからか放たれた炎がフィーラーたちを焼き尽くしたから。

あたしたちは振り向く。
そこにあったのは、ほっとするふたつの笑顔。





「エアリス!ティファ!」





名前を呼べば、ふたりは軽く手を振ってくれた。
そして駆け寄ってくる。

それに合わせて、もうひとつ、あたしたちの傍に着地した足音があった。





「レッド!」

「おせえぞ!」





足元で揺れたのは赤毛。
あたしとバレットの声にレッドはフンと軽く笑ってくれる。

やった!
これで、全員揃った!!

それならもう、これで本当に最後!
きっと、皆が同じことを思っていた。

あたしたちは全員でセフィロスに武器を構える。





「あと、もう少し!皆で望み、叶えよう!」





エアリスの声が響いた。

そう、あと少し!
高まった気持ちに、あたしたちは駆け出す。

セフィロスはフィーラーを放ってきた。

だから蹴散らした。
近づけないように、道を開くように。

その道を通り抜けるのは、勿論クラウド。





「「クラウド!」」

「行け!」

「行っけえ!」





ティファとエアリスが彼の名を呼ぶ。
レッドとバレットが行けと叫ぶ。

皆が繋いだ一本道を、クラウドは真っ直ぐに突き進んでいく。





「クラウドーッ!!!」





あたしも叫んだ。

頑張って、倒して。

一緒に乗り越えよう。
それで、また隣で笑いたいんだ。

星を救う。
あたし、クラウドと一緒にいられる未来が欲しい。

そんな想いを乗せて、祈る。

クラウドは剣を渾身の力でセフィロスへと落とす。
その瞬間、辺りに光が満ち、眩く白く…世界を包んだ。


To be continued

prev next top



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -