力になりたくて



大きな大きな本体。
あちらを叩かなければ、きっとフィーラーたちはいくらでも復活する。

そう判断したあたしたちは、二手に分かれて戦うことにした。

今まで通り現れたフィーラーを倒すクラウド、ティファ、エアリス、あたしのチーム。
本体だけを集中して攻撃するバレット、レッドチーム。

そうして削るたび、フィーラーはあたしたちに未来を見せた。

あたしたちが捨てようとしている…本来の流れの未来の断片。





「っ…」





また、見える。

タン…と弾けるマテリア。
ぽちゃん…と落ちて、水に沈む。

それと、祈りを捧げる…女性?
なんだかエアリスに似ていた気がして。

そしてバレット達がトドメだという様に大技を放った時、またひとつ…見えた。





「え…」





森のような場所。泉がある。

その中に、誰かいる…?

よく、見えない…。
男の人…?

その人は、何かを抱いているように見えた。
…ゆっくり、泉に沈める様に、手を離す。

…男の人…いや、あれは…。





「…クラウ、ド…?」





零れた出た、彼の名前。

よく見えなかった。
でもその男の人は、クラウドに見えた。

あれ…?
何で今、声が震えたんだろう…?

震えた自分の声。
どうしてなのか、よくわからない。

だけど今、なんだかすごくすごく…悲しい気持ちになった気がして。





「やった!」

「うん」





その時、喜ぶエアリスとティファの声にハッとした。

あたしたちが戦っていたフィーラーは全部倒した。
見上げた本体も、もうかなり崩れている。

まだトドメには至らなかったのか…。

でも多分、あと一撃でも喰らえばきっと崩せる。





「はあッ!!」





クラウドが剣を振るう。
それは渾身の破攻撃だった。

飛んでいく斬撃。
それを喰らえば、今度こそ本当にトドメ。

バレットとレッドもこちらに戻ってきて、全員で崩れていくフィーラーを見届ける。

フィーラーは、今までで一番の眩い光を放った。
とても目を開けていられなくなって、光はあたしたちを飲み込む。





「ここは…?」






クラウドが呟いた。

ゆっくりと目を開けると、そこには今までいた場所とは違う景色が広がっていた。

小さな光の粒が舞う…白い空間。
足元は、ぱしゃ…っと水が跳ねる。





「…ううん」





エアリスはゆっくりと首を横に振った。
エアリスにも今がどういう状況なのかはわからないらしい。

全員、一緒にいるけれど…。

あたしは下を見つめ、ぱちゃ…と軽く水を蹴った。





「ナマエ…」

「え?」





その時、トンと優しく肩を叩かれた。
振り返るとそこには何か心配そうな目でこちらを見ているクラウド。





「クラウド?」

「大丈夫か…?」

「え?」

「…さっき、泣きそうな声、してたから」

「え」





そう言われて、少し驚いた。

泣きそうな声…?
そんな声、してたっけ?

もしかして…さっき、どうしてか震えた声?

それのこと言ってる?
そんなの、クラウド…気づいてくれたのか。

ちょっと、嬉しい。

気に掛けてくれること…とても。

だからあたしは、少し頬を緩ませて笑った。
それは大丈夫の意味も込めて。





「ううん、全然へっちゃらだよ」

「そうか…?」

「うーん、多分、さっき未来の光景が見えた時にちょっとだけ不安になったんだ。だからかもしれない」

「ああ…なるほどな。でも、なにかあったら言えよ」

「うん。ありがと、クラウド!」





お礼を伝えれば、クラウドの表情も柔らかくなる。
そしてクラウドも「うん」と頷いて返してくれた。

でも、ここはどこなのかは相変わらずわからない。
あたしたちは辺りを見渡す。

すると突然、クラウドがハッとしたように振り返った。





「クラウド…?」





声を掛けて、そっと腕に触れる。

でもクラウドはこちらを見ない。
何処かを見つめ、その瞳は怯えるように震えている。

エアリスもクラウドの様子に気が付いたようでそっと顔を覗くけど、クラウドの瞳は揺れたまま。

でも、それから程なく…この空間に異変が起きた。





「えっ…」





白く澄んでいた空間。
でもそれが赤く…暗く…染まっていく。

不穏な雰囲気。
その場にいた全員が感じたと思う。

その瞬間、目の前で急に大きな爆発が起きた。





「うっ…!」





衝撃に思わず目を閉じる。

そうして次に見た目を開いた時、景色は荒れていた。

ボロボロに崩れた大地。
衝撃に破壊されたまま、辺りに漂う岩。

そしてその中心にいたのは…。





「セフィロス?」





クラウドが呟く。
そこにあった人影は確かにセフィロスだった。

セフィロス…。
今の爆発は、セフィロスの仕業?

見つめていると、端正な口元がゆっくりと笑みを作る。

セフィロスは片手を軽く上げた。
そうすると、それに合わせて辺りの瓦礫が集まり出す。

…まさか。

セフィロスが手を此方に振りかざせば、瓦礫は一斉にあたしたちの元に降り注いできた。





「うわああ!!」

「きゃああ!!」





あたしたちは慌てて後方に逃げた。
その衝撃は尋常じゃない。

瓦礫の直撃こそ免れた。
だけどその衝撃で、あたしたちは全員バラバラに吹っ飛ばされてしまった。




「うっ…よ、と…!」





列車、建物の破片。
色んなものが一緒に飛ばされてる。

あたしはそれを剣と魔法でどうにかいなし、なんとか足場を見つけて着地した。





「皆…っ、どこ…」





辺りを見る。

誰もいない…。皆…どこ。
本当にバラバラになっちゃった。

なんとか合流しないと…。

何か手掛かり…。
そう考えた時、セフィロスが向かった先だけ見えた。

長い髪をなびかせてセフィロスが一直線に向かった先は…クラウドの元だった。





「クラウド…」





ぎゅっと胸のあたりで手を握る。

クラウド、セフィロスと何か因縁があるんだよね。
あんたにはちゃんと話したいって、そう言ってくれた。

あたしは、クラウドの力になりたい。
そう、心から思えるよ。

セフィロスが向かった先…。
クラウドのいる方角だけは何となくわかる。

セフィロスと戦ってるのなら、助けに行きたい。

道も、それしかわからない。
なら、迷ってる暇なんかない!





「クラウド…!」





あたしは走り出した。

クラウドが飛ばされた先。
セフィロスが向かった場所。

なによりきっと、会いたくて。

だから、ただ、真っ直ぐに。
瓦礫を飛び越えて、あたしはクラウドの元に向かった。



To be continued

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