その手を離さずに



運命の分かれ道。
意を決して通ったその先は、変わらぬハイウェイの景色が続いていた。

別に普通。
なんだか、拍子抜け?

最初はそう思った。

だけど、その空には…大量のフィーラーが渦巻いていた。
それは竜巻のようにうねり、あまりの威力にハイウェイを壊しながら迫ってくる。

あんなのに巻き込まれたら死ぬでしょ!?!?

あたしたちは急いで後方に走った。
しかしその後方にも、同じ竜巻が発生していた。

挟み撃ち。
あたしたちは完全に逃げ場を失った。





「ナマエ…!」

「クラウド…っ」





クラウドに肩を引かれ、抱き寄せられた。
あたしも思わずきゅっとクラウドにしがみつく。

耐えられない。
皆、竜巻に体を持っていかれる。

あたしも、足がぶわっと地面から離れるのを感じた。





「…っうわ」

「ひゃっ…!」





耳の近くで聞こえたクラウドの声。
あたしはぎゅっと目を閉じる。

身体が回る。
風に煽られ、宙でどうなっているかわからない。

ただ、クラウドと離れないようにしがみつく。
クラウドも同じように身体を抱いていてくれた。





「ナマエ」

「う…」





しばらくすると、クラウドに声を掛けられた。
そこであたしは浮遊感こそあれ、身体がぐるぐると煽られていないことに気が付きそっと目を開けた。





「落ち着いた…?」

「ああ…。でも…」





ふたりで下を見る。

遠く遠く…。
そこには、空から見るミッドガルの景色があった。

ただ、落ちてはいない。
パラシュートとも違う。

本当に、空に浮かんでいるような…そんな感覚。





「大丈夫だ。離れない」

「う、うん。ありがと」





抱きしめられたまま。
あたしも手に力を込めて頷く。

か、カッコいい…。
こんな状況でもときめくのはもう…。

だって離れないで、傍にいてくれるって…こんなに心強いことないじゃん。

どうしたらいいかはわからない。
だけど、それは確かに安心をくれた。

でも、そこで気が付く。

大量の、フィーラーの存在。
フィーラー達は大きな波を作り、どこかを目指している。

それはひとつにかたまって…何かを形づくる。

大きな…大きな…。
すごく、大きな怪物…。





「なに、あれ…」





怪物は、まるで重力でも操っているみたいだった。
手の中にある黒い球が、ブラックホールみたいに辺りの瓦礫を集めていく。

そしてそれを、無造作に投げつける。

その破片が漂う瓦礫とぶつかり、砕け、あたしたちの方にも飛んできた。





「ナマエ!!」

「ひいっ!?」





クラウドは近く瓦礫を蹴り、飛んできた瓦礫から逃げてくれた。

び、びっくりした…!!

でも、助けてもらうのはその最初だけ。
名前を呼ばれたのは、行くぞって合図だってちゃんとわかってる。

体を離し、クラウドは剣を手にする。
そして新たに飛んできた瓦礫を切り崩した。

あたしも、魔法を放って同じように壊した。





「来いッ!」

「うん!」





クラウドが手を伸ばしてくれる。
あたしもそれを掴む。

そしてまた漂う瓦礫を蹴り、ある程度形が残っている道路の上に着地した。





「行くぞ!」

「ううっ…もう!根性…!」





形が残っていると言っても、この道路も瓦礫に過ぎない。

うかうかしているとすぐに崩れ、足場なんて無くなっていく。
走って、飛び移って、飛び降りて。

もう、恐ろしいことこの上ないわ!!

でも、立ち止まるわけにはいかない。
根性!!度胸!!

もうちょっとやけくそだったかも。

とにかく、あたしたちはその空間を駆け抜けた。





「!」

「あっ!」





そうしてまた新たな足場に辿り着いた時、そこには互いに背を合わせて渦巻くフィーラーに立ち向かうバレットとティファの姿を見つけた。





「バレット!ティファ!」





あたしが名前を叫んだとほぼ同時、クラウドは駆け出してふたりを襲うフィーラーに剣を振り下ろした。
それを見たあたしも急いで傍に走り出す。





「あ?生きてたか!」

「嬉しいか?」

「ま、そこそこだな」





バレットとクラウドのそんなやり取り。
あたしはティファに駆け寄り、がばっと抱き着いた。





「ティファー!会えて良かったー!」

「うん!ナマエ、無事で良かった!」





こっちは素直に再会を喜ぶ。

でも、勿論忘れてない。
まだまだ全然、安心できる状況じゃないって事。

あたしたちは改めて、あの大きな大きな怪物を見上げた。





「あれも、フィーラーなのか」

「うーん…フィーラーの親玉って感じ?」

「運命の番人らしくなってきたじゃねえか」

「乗り越えよう」





揺るがない。
この壁を乗り越えて、未来を掴むこと。

こんなところで諦めるなんて、まっぴらごめんだ。

立ち向かう。
気丈に、皆と一緒に。

そう気持ちを固めた時、大きなフィーラーはあたしたちの元に何かを3つ、放ってきた。





「ハッ、いいね!」





バレットがニッと笑う。
あたしたちは武器を構え直す。

放たれた、あたしたちの前に現れた存在。

それは腕が武器のように特化された、見たことのないモンスター。
いや…多分これもフィーラーなんだろう。

いつものよりだいぶ厄介そう。
まあなんであれ、乗り越えるだけだけど!

目の前のフィーラーが衝撃波を放ってくる。

そういう事も出来るわけね!
でも、こっちだって手強いよ?

絶対、倒す!!

強く、決める。
剣をぐっと、握る。

そうしてあたしは、フィーラーに向かい力強く踏み込んだ。



To be continued

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