花丸満点のご褒美



バイクとトラックを頂戴し、1階のエントランスまで降りたあたし、クラウド、ティファ。
そこではエアリスたちが敵に囲まれていたけど、引っ掻き回して無事に皆をトラックに乗せた。

あたしは助手席をエアリスに譲り、クラウドのバイクの後ろに移動する。





「ナマエ、行くぞ」

「りょーかいっ」





ガラスを突き破り、ハイウェイに出たバイクとトラック。

読み通り神羅は追手を放ってきたけど、あたしはクラウドと一緒にバイクでそれを払い退けた。
だけどそうして走り抜ける中、あたしたちを守る様な力が何度か働いた。

…フィーラー。

あたしたちの前に現れては、邪魔をすることも多かった奴ら。
でもそれはここに来て、あたしたちを敵の手から守ってくれた。

レッド曰く、守っているのはあたしたちではなく、世界の運命…らしいけど。

あたしたちを救うことが世界の運命を守ることに繋がる?

そんなことを言われても、よくわからなかった。

考えたって、わからない。
ならもう、今は皆が無事ならそれでいい。

そう思って、余計なことは考えなかった。





「…ナマエ?」

「えっ…?」





そんな時、バイクを運転してるクラウドの声を掛けられた。

そこではっとする。
どうやら考え事して、無意識にクラウドの腰を回した手に力を込めていたらしい。





「あ、ごめん、なんでもない。フィーラーの事考えてぼーっとしてた」

「ああ、敵は落ち着いたが気をつけろ」

「うん、ごめん。でも、良いペースで逃げられてるよね」

「そうだな、悪くない」

「うん!」





敵は落ち着いた。
まだ油断は出来ないけど。

でも今は、少し話せるくらいには余裕がある。

そういえばチーム分け、初めて一緒になったな。
前のバイクは別チームだったし、パラシュートも別だったから。

…クラウドの運転するバイクの後ろに乗る。
うん。すんごい幸せシチュエーションだ!

いや追われてるんだしそんなお花畑脳じゃあかんのだけども…。
まあ少しだけだ、許してくれ。

そんな中で、あたしはジェシーが言っていたことを思い出していた。





「あっ!そういえばジェシーがクラウドの運転上手だったって言ってたよ!」

「え?」

「あたしも今乗って納得した!本当運転上手いね、クラウド!あたしバイクに詳しくないけどそれはわかったよ」

「まあ…ソルジャーはバイクの任務も多かったからな」

「そっか!」

「そんな話してたんだな」

「うん。ごうかーく!って言ってた」

「……。」

「クラウド?」





クラウドは急に黙った。
ちょんちょん、って肩を突いてみても無言。





「おーい。どしたの?」

「…いや、他に何か言ってたか」

「他?何かあったの?」

「……。」

「いやだからなぜ無言!?」





どうもクラウドがおかしい。

ジェシーと何かあったのかな?
いやまあ、この様子的に十中八九あったんだろうけど。





「なになに、どうしたの?」

「…別に、どうもしない」

「いや絶対嘘!わかるよそれは!」

「……。」

「うーん?あっ、もしかして特別なご褒美!?」

「っ!」

「あー、家の前でされてたハグ!そういうことか!それなら納得だ、うんうん」

「違う、それじゃない」

「それじゃない?ってことは、ご褒美は正解ってこと?」

「……。」

「また無言!あははっ!クラウド結構わかりやすいよね!」





成る程。
クラウドが口を閉ざす理由はわかった。

家の前のハグで特別なご褒美って言ってたから、そうかなと思ったけど、それはハズレか。
でも多分それに近しいことがあったのだろう。

そうだなあ…パッと思いつくのだと…。





「んー、ほっぺにチューでもされた?」

「な…っ、見えてたのか…?」

「え、嘘!正解?」

「いや…っ」

「まじか!!あはは!やばーい!一発正解!」

「……ナマエ」





墓穴を掘ったクラウド。

今適当に言っただけだったけど、まじでか…!
まあハグとか見てるし、他だと何だろうって浮かんだやつではあるんだけど。

後ろで笑ってるあたしにクラウドはちょっとバツが悪そうだった。





「…悪かった」

「え?あは、なんで謝るの?クラウド悪いことしてないじゃん。別に気にしてないよ!ジェシーのことよーく知ってるし、想像つくし!」

「…気に、しないのか?」

「うーん、まあ気にしないってのは少し違うか。ごめん、言い方違うね。気にはしてる。多分、多少のやきもちはあるよ。でも面白いなぁって気持ちもあるって言うか」

「…おい」

「あはははっ!」





ケラケラ笑う。
そりゃまあ、多少思う事もありますが。

でも、クラウドが謝る様なことじゃないよね。

クラウドとこんなふうになる前の事だし。

色々と想像はつくしね。

でも、じゃあ。




「ね、クラウド。どっちのほっぺにされたの?」

「……左」

「そっか。じゃあ」





あたしは少し身を乗り出し、クラウドの左頬に手を伸ばした。
そしてそこをそっと拭うと、すとん…とまた戻った。





「へへ!じゃあこれでチャラ!」

「……。」





へらりと笑ってそう言った。

うん、これでOK!
ごめんね、ジェシー。

でも、恋人だもんね。
これくらい、してもいいよね?




「…ナマエ」

「ふふっ、はーい?」

「…採点、あんた的にはどうだ」

「採点?」





すると、クラウドは話題を探すみたいにそんなことを聞いてきた。

ん?採点?
それはつまり。





「バイクの?」

「ああ…」

「んー、そうだなぁ…うん!それは花丸満点、かな!」

「ふっ…そうか」





あたしの採点。
そりゃ勿論合格だ!

ぶっちゃけジェシーの話で結構ハードル上がってたと思うのね?
でも、それでも納得というか、見事飛び越えてくれちゃったっていうかね!

その答えにはクラウドも満更でもなさそうだった。





「それなら、何かご褒美、くれるか?」

「えっ?」

「花丸満点、か。だったら期待してもいいよな」

「ん!?」





花丸満点のご褒美…!?

え、ま、まあ確かに最高の評価してしまったわけですけど…。
期待…期待って。





「え、えと…まあ…あ、あんまり高いモノは買えませんが…」

「…金で買えなんて言ってないだろ」

「え?じゃあ…」

「……。」





いやなんとなく浮かぶのがマテリアとかで。
完全に戦闘民脳してるな…。

でも、お金以外が言ってなると…。





「…クラウドは何かしてほしいことあるの?」





まっすぐに聞いてみる。

いやだってわざわざ言ってきたってことは…してほしいことがあるのかな、と。

聞いてしまった方が外れないだろう。
あたしだってどうせだったらちゃんと喜んでくれるものあげたい…とは思う。

ただ少し、心臓は早さを増す。

するとクラウドはまた少し黙った。
でも程なく口を開いて。





「…キス」

「ん?」

「キス、してくれ。あんたから」

「へ?」





最初は小さな声だった。
風や、エンジン音に紛れて…。

でも、二言目ははっきりと聞こえた。

キ…っ、あたし、から…?
ぶわっと身体が熱を帯びた。

だけどその時、不穏な気配に気が付いた。





「何か来る!」





トラックのティファも叫んだ。
皆もすぐに反応した。

大きな音。
なにか、凄く大きなものがこちらに向かってくる音。

そしてそれはあたしたちの真横までやってくる。





「うわ…」





それを見上げたあたしは目を見開いた。

そこに現れたのは、馬鹿でかい装甲車のようなモノ。

頑丈なタイヤがいくつも付いていて、ドリルや火炎装置が搭載されている。
これ…また神羅の最新鋭の機械兵器?

何とかして倒さないと…。
あたしはそう思いながら、クラウドの腰に回す手にきゅっと力を込めた。





「ナマエ?」

「クラウド…じゃあ、これ、倒せたら…ご褒美、でどうですか」





逃げ切るためには、こいつを倒さなきゃ。
クラウドなら、やれる…よね?

するとクラウドはヒュッ…と大剣を振るった。





「聞いたからな」





少し、楽しそうな声。
あたしは冷たい風が当たっても、冷めることのない頬の熱を覚える。

そして自分も、一度腰に戻していた剣に手を伸ばした。





「行くぞ」

「おっけー…!」





クラウドはギュンッと、バイクの速める。

きっとコイツが追っ手の最終兵器。
これを倒せたら、終わる!

ご褒美のお手伝い、あたしがするのもちょっと変な話だけど。
でも、まあ細かいことはいいってことで。

あたしたちは、機械兵器に向かっていったのだった。



To be continued

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