脱出への道筋



「クラウドッ!!!」





屋上の足場が崩れ、クラウドが落ちてしまった。

嘘っ…嘘…!!!

あたしは慌てて駆け寄る。
そうして見た先には何とか鉄骨を掴みその場に留まるクラウドの姿があった。





「クラウド…!」





クラウドは腕一本で鉄骨を掴んでいた。
人ひとりの重さを支えるには細く、その鉄骨はしなっている。

そして少しずつ、ずるずると手が滑り落ちていく。





「っ…」

「ちょ!嘘嘘嘘!?待ってやだっ!クラウド!」





何とか生きた足場から手を伸ばしてクラウドの手を掴んだ。
だけど、鉄骨のしなりは少しずつ、確実に酷くなる。





「ナマエ…っ、いい…、下手したらあんたが落ちる!」

「よくないっ!クラウドが落ちたら何にもよくないからね!?」

「俺なら大丈夫だ…!それよりあんたを巻き込む方が…っ」

「ミッドガルの外、連れてってくれるって約束した!!」

「っ…」

「約束、破ったらクラウドと言えど許さない!」





少し、強気に笑いながら。

諦めない!
諦めてたまるか !

絶対、どうにかする!

何か、何かない?
どうにかして引き上げる方法!

クラウドの手を掴み、力を込めながら考える。

だけど無情に、鉄骨はどんどん下へとしなっていく。





「クラウド…っ」





手、すり抜けちゃう…!

そう、恐怖したその時だった。





「ナマエ!!」





名前を呼ばれた。
誰かの走ってくる足音。

えっ…と思ったその時、パシッと新たにクラウドの手を掴む手があった。

そこに揺れたのは、艶やかに長い黒髪。





「ティファ!!」





あたしは現れた彼女の名前を叫んだ。

驚くあたしの声にティファはニコリと笑う。
そしてそのままクラウドに視線を向け、声を掛けた。





「だらしないぞ。ヒーローなのに!」





ヒーロー…。
その言葉にクラウドはふっと小さく笑った。

前に、少しだけ聞いた。

クラウドとティファの、子供の頃にした小さな約束。

ソルジャーに…、強くなったら…。
ヒーローになってピンチの時に助けに来てって。

ああ…これじゃ逆だよね。
ピンチに駆けつけてくれたのはティファになっちゃった。

そう思ったらあたしも思わず笑ってしまった。





「ナマエ、引き上げるよ!」

「うん!了解」





ティファとふたりなら引き上げられるだろう。
クラウドも、あたしたちの手を離さないように力を込める。

こうしてティファと懸命に力を込め、クラウドの体を何とか引き上げることが出来た。





「クラウド…!」

「ナマエ…」





無事に助かったクラウドを見つめる。

ああ、よかった…!よかった…!
だって強がってはいたけど、ずっと心臓痛かったもん!

ああ、もう…本当、目尻がじわりと熱くなってくる…!





「ティファ!ありがとー!!」

「ふふっ、間に合ってよかった」





あたしはガバッとティファに抱き着いた。

もう本当ティファ!
ティファ様様すぎるでしょ!!

感謝しまくるあたしをティファも笑顔で抱きしめ返してくれる。

この辺はもういつものじゃれあいテンションだ。
ふたりでキャッキャウフフしてるあれ。

でもその時、ティファがどこか違うところを見てクスクスしてることに気が付いた。





「ティファ?」

「ふふふっ…ナマエ、クラウドの手、泳いじゃってるよ?」

「ん?」





クラウド?
そう言われ、クラウドの方に振り返る。

するとクラウドはふいっと顔を逸らした。
そして同時にその時、腕をスッ…と下ろすような仕草をしていたのも見えた。

…はて。





「ふふっ…ごめんね、クラウド。私が取っちゃった」

「…別に。それより、行くぞ。バレット達と合流する」

「おおっと、そうだね、急がなきゃ」





あたしはこくっと頷いた。

忘れてたわけじゃないけど、思い直したと言うか。
うん、バレットとエアリスとレッド、先に行ったチームを早く追いかけないと。

あたしたちも急いで屋上を出た。





「ティファ、先に行かなかったんだね」

「うん…なんか、ナマエとクラウドの方が気になって。途中で引き返したの」

「ティファ、それ、ナイス判断」

「ふふ、まあね」





道中、ティファに話を聞いた。

バレットたちを先に向かわせ、ティファだけこちらに引き返してくれたと言う。
結果、そのおかげであたしたちは助かった。

本当、ティファが戻ってきてくれなかったらどうなったか、だよね。

そうして先を急いでいると、ふとクラウドが足を止めた。
あたしとティファは振り向く。





「ん?クラウド?」

「どうかしたの?」

「ナマエ、ティファ。あれ、使うぞ」

「「え?」」





あれ?
そうクラウドが指差した先を見る。

そこにはバイクやトラックなどの展示があった。

おお!





「これ盗んでトンズラってことだね!」

「…まあ、そうだな。ティファ、トラックを頼む。合流したらエアリスたちを拾ってくれ」

「うん。わかった」

「ナマエも、とりあえずトラックに乗ってくれ。万一、運転中に襲われたら厄介だからな。魔法あたりでティファのフォローを頼む」

「了解!でも、とりあえず?」





とりあえずって何だ?
意味がわからず首を傾げると、クラウドはフッと笑った。





「エアリスたちを拾ったら、トラックから降りてくれ」

「え?」

「そしたら俺の方に来い。神羅が大人しく逃がしてくれるはずはないからな。俺たちはバイクで…」

「あっ!バイクでトラックを護衛しながら逃げるんだね!」

「そういうことだ」





なるほど、理解した!

確かに神羅が追ってこないわけないもんね!

あたしとクラウドは追手を払いのけながら逃げる。
うん、なかなか燃えてきた!





「それじゃ、急ぎましょ。ナマエ、乗って」

「あいさー!」





あたしはティファに促され、トラックの助手席に乗り込んだ。
ティファも運転席に乗り込み、クラウドはバイクに向かう。





「よーし、ティファ、よろしく!」

「任せて!」





ブゥン…とエンジンの音がする。
ティファはアクセルを踏み込んだ。

エアリスたちはもう、出口であるエントランスまで辿り着けただろうか。 

足も確保出来た。
あとはもう、本当に投げるだけ。

あたしたちは急ぎ、1階のエントランスに向かった。


To be continued

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