君と共に



何とかジェノバを倒した後、刺されたはずのバレットに変化があった。

突然ハッと起き上がったバレット。
驚いて傷を見ると、そこは跡形もなく綺麗になっていた。

そしてその傍に漂う一体のフィーラー。

定めは死よりも強い。
そう言ったのはレッドだった。

運命の番人たるフィーラーは、バレットの事を助けた。

だけど…プレジデント神羅はそこに倒れたまま。

つまり、バレットはここで死ぬ運命ではなく…プレジデント神羅は死ぬ運命だった?

バレットが助かって本当に良かった。
それは心から思う。

だけどあたしはその時、なんだか得体の知れない、居心地の悪さのようなものを感じていた。





「ナマエ。クラウドを追わないか」

「うん。屋上に出よう」





声を掛けてくれたレッドに頷いた。

ジェノバを倒した後、突如セフィロスが現れ、クラウドはひとりそれを追いかけて屋上に出ていた。

アバランチのヘリの事もあるし、もう社長室にいる理由はない。
あたしたちも屋上に出て、クラウドの姿を探した。





「クラウド!!」





クラウドは屋上の奥の方にいた。
あたしは手を振りながら見つけた彼に駆け寄った。





「クラウド、大丈夫だった?」

「ああ、なんともない。戦ったわけでもないしな」

「そっか、無事ならよかった」

「ナマエ、バレットは…」

「あ、うん」






クラウドは刺されたバレットのことを気にしていた。
その言葉を聞き振り返ると、皆もこちらに駆け寄ってきてくれていた。

勿論、その中にはバレットの姿もある。

クラウドはバレットに具合を聞いた。





「大丈夫なのか?」

「おう。で、奴は?」

「…逃げられた」





クラウドは少し悔しそうに逃げられたことを教えてくれた。

まあ、多分そうなんだろうなとは思った。
戦ったわけじゃないって言ってたし。

逃げられてしまったのならどうしようもない。
詳しいことはわからないけど、あまり深追いしても仕方がない気がする。

追いかけたクラウドも何ともなく、全員揃ってちゃんと無事だ。

それならもう、帰ることだけを考えてもいいんじゃないだろうか。





「俺たちもとっとと逃げようぜ」





バレットはそう言って空を見上げた。

そこにはバラバラ…というプロペラのヘリの音。
ウェッジが頭を下げて頼んでくれたと言うアバランチのヘリが上空を飛んでいた。

はあ…これでやっと、皆と一緒に帰れる。
正直かなりホッとしてた。

だけどその安心は、次の瞬間に一気に吹き飛んだ。



ドォン…!!!



響いた爆音。

ヘリが…銃撃された…。
プロペラから火花と煙を散らしたヘリはバランスを失い落下していく。

嘘…!なんで…!

そう思い、空を見渡せば、そこにはもう一機…神羅のヘリが飛んでいるのが見えた。

アレに、墜とされた…。





「…残念だ」






クラウドは冷静に判断し、その場を引き返していく。

そうだ…。
ここで唖然としていても、もうどうしようもない。

事態は一刻を争う。

クラウドの声で我に返り、あたしたちは急いでその場を離れた。

でも、今襲撃してきたヘリ…それが屋上に着陸して、中から人が出て来る。
その中で一際目を引いたのは、真っ白なスーツに身を包んだ男の人だった。





「ルーファウス神羅。プレジデントの息子だ」

「ああ」





バレットとクラウドの会話が聞こえた。

…ルーファウス?

確かに、周りにいる兵士の様子からも、かなり地位のある人物であることは伺える。
あの人…プレジデントの息子なんだ。

すると、それを見たバレットはそちらに向かっていこうとした。
でもクラウドが声を掛け止める。





「退くぞ」

「ああ?馬鹿言え!神羅をブッ潰すチャンスだろうが!」

「エアリスを家に帰す!」





戦うつもりのバレットに対し、クラウドは強く言い返した。

プレジデントが死んだ今、神羅を継ぐのはあの人なのだろうか。
だとしたら確かに、今は神羅をブッ潰すチャンスなのかもしれない。

だけど、最初から言っていた。
あたしたちの目的は、あくまでエアリスの救出。

だから今優先すべきは、どう脱出するか考える事。

そうこうしている間にルーファウスと一緒にヘリを降りてきた兵士がこちらに向かってきた。

それを見たクラウドはバレットを抜き、ひとりで兵士たちの方に歩き出した。





「俺が時間を稼ぐ」

「だったら俺も残るぜ」

「…行ってくれ、バレット。頼む」





自分が残ると言ったクラウド。
それなら自分もと言うバレットにクラウドは一度だけ振り返ってそう言った。

頼む…。
それは信頼の言葉だったと思う。

そんな風に言われてしまえば、バレットは何も言えなくなる。

バレットは後ろ頭を掻き、舌打ちした。





「わあったよ!お前もすぐに来い!」





そしてクラウドの頼みを了承し、こちらに駆け出してきた。

男手の話なら、バレットがこちらについてくれた方がいい。
それはあたしも納得だ。

でも…やっぱりここにクラウドをひとりで残すのは…。





「クラウド!」





だからあたしはクラウドに声を掛けた。

だったらあたしが残って一緒に戦う。
それがベストだろうって思ったから。

でも、その声を聞いたクラウドは首を横に振った。





「ナマエ…あんたも先に行け」

「嫌だ!」

「はっ…」





速攻で拒否した。
あまりにきっぱりはっきり言ったから、クラウドはちょっと面を食らってた。

でも、ここは譲れないもんね!





「あたし、クラウドの助手なので。だから一緒に戦います」

「いや、」

「それに、恋人ですから」

「え」

「好きな人を傍で守りたいって、当たり前の事だと思うけど」

「ナマエ…」





クラウドは何か言いかけてたけど、先に言い切ってしまう。

だって、そうでしょ?
あたしはクラウドの助手であり、それに恋人だもん。

そんなふうに言うのは少し気恥ずかしいけれど。

でも、傍にいたい、守りたいって、当然のことだよ。

そう想いを伝えれば、クラウドももう駄目とは言わなかった。





「…わかった。そうだな。俺も、あんたが俺の知らないところで傷を負うのは御免だ」

「!」

「頼るからな」

「…うん!」





伝えたものと、同じ想いを返してくれる。

あたしは頷いて、そしてふたりで向かうべき先を見つめた。

プレジデント神羅の息子…ルーファウス。
そしてその護衛である神羅兵。

徐々に近づいてくる神羅兵。
クラウドは大きく剣を振るい、それを牽制した。

その様子を見たルーファウスは小さな笑みを浮かべた。





「お前はソルジャーらしいな」

「……。」

「となれば、私は雇い主だ」

「ふ…元ソルジャーだ。世話になったな」





少し、探り合うような会話。

でも、ソルジャーらしいなって…。
クラウドの情報って、もう結構神羅の側にも周知されてるんだろうか。

神羅の人なら魔晄の瞳のことは知ってるだろうけど、今それを見たからと言うよりは、前もって誰かから聞いているような言い方だった。





「ひとりも逃がすな」





ルーファウスは傍の神羅兵に命令する。

行かせるか…!

あたしとクラウドは妨害するために兵士の方に向かった。
でも、その行動は空を飛ぶヘリからの銃撃によって阻まれてしまう。





「っ…クラウド」

「……追わなくていい」





どうしようとクラウドを見れば、首を横に振る。

確かに、これじゃ狙い撃ちされて終わりか…。

兵士たちは皆を追って建物内に入っていく。

こうなれば、バレットたちを信じるしかない。
あたしたちだって、この坊ちゃんを倒して追いかければいい。

あたしは足を戻し、クラウドの傍に戻る。
そしてふたりでルーファウスに向き直った。





「フッ…ふたりきりかと思ったが、そうとはいかないらしいな」





クラウドの傍に戻ったあたしを見て、そう笑うルーファウス。

ふたりきり…?

その言葉を聞き、あたしもクラウドもルーファウスの足元を見た。
そこにいるのは一匹のダークネイション。





「…随分と凶暴そうなペットをお持ちのようですけど?」

「細かいことは気にするな」





さらりと返された。

いや全然細かくないだろ!!
そいつは何なんだ!!

でも悔しいことに、気にしてばかりもいられない。

ルーファウスは銃を構えた。
それを見てこちらも身構える。





「すぐに終わらせる」

「了解っ」

「つれないな」





軽く肩をすくめたルーファウス。
その瞬間、ダークネイションが飛び出してきた。

戦闘開始。

こいつを倒して、さっさとみんなのところへ行く!

そう気合を入れ、あたしはクラウドと共に走り出した。



To be continued

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