鉄の蓋



「なんか筒みたいな通路だね」





第四研究室。
特に戦闘もなく静かに進んでいく。

今いるのは、先の長いトンネル状の道。

この奥にモンスターが待ってるのかな。

そう思ってちょっと目を凝らしてみる。
いや、カーブしてるし先長くて全然よく見えないけど。

そうしていると、一番前を歩いていたクラウドが足を止めた。





「……。」

「クラウド?」





声を掛けてみる。
すると見えない奥の方から何かの音が聞こえてきた。





「ん?何の音だ?」





バレットが軽くクラウドの肩を押しのけ奥を見る。

なんだろう…。
キーン、と…金属がこすれるような音?

それがどんどんこっちに近づいて来ているような…。





「走れッ!!」





こっちに来てる。
それが確信に変わったとき、クラウドが叫んだ。

その瞬間、カーブの先に見えた。

壁を擦りながら、大きな何かがこっちに向かってる!





「なあ!?」

「ちょちょちょ!!?」

「っ…!」





あたしたちは慌てて後方に走り出した。

入り口は梯子を上った先にあったから、飛び出したら落っこちる。
でもそこまでの高さは無いし、今はそんなこと気にしていられない!

だからあたしたちはそこから飛び降りた。





「ナマエ!」

「えっ!」





でもその瞬間、クラウドに腕を掴まれて抱き寄せられた。

クラウドはあたしを抱きしめたまま、上手く受け身を取って床を転がってくれる。
バレットが隣でズデッと落っこちてたけど、おかげであたしはまったく痛みがなかった。





「っクラウド…」





あたしは慌てて体を起こしてお礼を言おうとした。
でもクラウドは大丈夫だと言うようにあたしの肩を叩く。

それはそんな暇もなかったから。

あたしたちは慌てて上を見上げる。

さっき飛び出した、筒に合わせた円形の扉が閉じていく。
そして、波打つように宙を舞う…全身に刃のついた帯状の機械生物。

扉を閉じて、このフロアでこいつと戦えって…?

さっき聞こえた壁を擦る金属音は、この刃物が壁を擦ってた音か…。





「俺たちを細切れにしようってか!」

「ほんっと悪趣味!!」





バレットと文句を言う。
そして全員で武器を構えた。

逃げられないし、戦う以外の選択なし!
ていうかこいつ倒したら研究室制覇だろうし、逃げる気もさらさらないけどね!





「ナマエ!俺が突っ込む!魔法でフォロー頼む!」

「了解!」





レッドがいなくなっちゃったから、少し戦いの分担が変わる。

さっきまではレッドが魔法でフォローも入れてくれていた。
エアリスがいれば主に担ってくれてる部分。

今回はあたしがその辺を見る。
回復、補助、それから隙を見て殴る!





「オラオラオラァッ!!」

「はあッ!!」





顔に当たる部分。
バレットがとにかく撃って、怯んだところにクラウドが剣を打撃にして叩き込む。





「よぉし!キツイの行くよ!!」





そして詠唱を終えたあたしがドデカいのを一発。

さあくらえ!
きっついガ級魔法!!





「サンダガッ!!!」





特大の雷がモンスターの体を貫く。
その衝撃で、巨大な体がぴくぴくと揺れた。

やった!?

反応に手ごたえを感じる。

だけどその時、モンスターは暴れるように大きく動いた。
まるでそこら中を無闇やたらに泳ぐみたい。

あたしたちの方にもぶつかりそうになった。
でも、狙われてない。

その体はそのまま、壁に向かって突き刺さる。
いや、壁に穴をあけて出ていこうとしてる?





「まずい」





それを見たクラウドはそう零した。

モンスターは壁を削り、そのまま外に出てしまう。
この壁の向こうって…もしかして。





「え!もしかしてティファたちのほう行った!?」





クラウドが言ったまずいの意味を察した。

え!たぶん方向的にそういう事だよね?!
それは確かにかなりまずい!





「ど、どうしよ!?助けに行かないと!?」

「そうだぜ!こうしちゃいられねえ!行くぞ!」

「だが、出口がない」

「へ…」





クラウドの言葉にぴしりと固まった。

でぐ、ち…?





「え、あ、あれ…!?」





そうだ、さっき進んでた方の扉はモンスターが迫ってきた時に閉まったのを見た。

じゃあ第四研究室の入り口は…。
そう思い振り向くと、同じようにぴしゃり。

入ってきた方も、ご丁寧に閉められてます…と。





「ええ!?じゃああたしたち閉じ込められてんの!?」





ガーンと頭を抱える。

助けに行かなきゃじゃない!
むしろ助けてくださいじゃないのかこれ!?





「とりあえず扉を調べよう。なにかスイッチがあるかもしれない」

「うう…」





ポン、とクラウドに肩を叩かれる。

まあ、今はどうにかしてここから出る方法を探す他ないよね…。
まさかこんなところで一生を終えるとか御免だし。





「うん…まあティファもエアリスも強いし、レッドも強かったし…向こうは大丈夫だよね…。うん、よし、あたしたちはとにかくここから出なくちゃね」

「ああ」

「んじゃ、進んでた方の扉調べてみるか。来た方に戻ってもティファたちとは合流出来ねえしな」





こうしてあたしたちは梯子を上って扉を調べてみることにした。

扉って言うか、もはやデカい蓋って感じだけど…。
筒状の通路を塞ぐ、まーるい蓋。





「んー…力技じゃ開く気しないんだけど…」





扉の前まで来て、コンコンと叩いてみる。
うん、まあ普通に鉄の塊だよね。





「おら!開け!」





バレットは扉を蹴り始める。

…そんなんで開くかなあ。
まあ何もしなけりゃ何も変わらないだろうけど。

その隣ではクラウドが背中から剣を外していた。





「ん?クラウド?」

「上、つまみがある」

「え?あ、真ん中の?あれ回るかな?」

「試してみる」





そう言ってクラウドは大剣をガンッと扉にぶつけた。

確かに扉の中央部分にはつまみのようなものがついている。
つまみって言っていいのかわからんデカさだけど。

まあ何か、センサーみたいものがあったらこうして叩くのも有効かもしれない。

扉を叩くふたりの傍で、あたしはスイッチ的なものが無いかを探してみることにした。

で、しばらく続けてたけど、扉はうんともすんとも言わなかった。





「なんだ、休憩か」





程なく、クラウドは剣で叩くのをやめた。
バレットもそんなクラウドを見て足を下ろす。

多分、これじゃ埒が明かない…と思ったのかな。

そう思いながら扉を見上げる。

するとその時、事件が起こった。





「え…」

「な、なんだ!?」





突然、グラッと扉が動いた。

その影は徐々にこちらに迫ってきて…。
って、ちょ…まっ、これ倒れてきてる!?





「っ…」





えっ、やばい、どうしよう。
思考が停止したみたいに、体が全然動かない。

つぶれる…!

そんな言葉が頭を過った時、3人の真ん中に立っていたクラウドだけが瞬時に反応した。





「くっ…」

「うおおおおおっ!?」

「ひゃっ」





クラウドはバレットの体を強く横に突き飛ばすと、逆隣に立っていたあたしの肩を抱いてそのまま逃げてくれた。

ガダンッ…!!!
凄まじい音を立てて倒れ、転がった扉。

あたしはクラウドに抱かれたまま、その様子を見てゾッとした。





「ナマエ、大丈夫か?」

「う、うん、クラウドありがと…」

「あんたが無事ならいい」





気遣ってくれたクラウド。
お礼を言えば、優しく微笑んで頷いてくれる。

う…。

またちょっとトスっと心臓に矢が刺さった。

でも、そんなおバカ思考ながらもそこで気が付く。





「おまたせ…」





苦笑いがち。
そう言いながら倒れこんだような形で顔を覗かせたエアリス。

それを見つけた瞬間、あたしはパッとエアリスに駆け寄った。





「エアリス!」

「ナマエ!」





声を掛けるとエアリスもこちらを向いてくれて、ふたりで手を取ってキャーっと喜んだ。

ただその駆け寄った時、後ろでクラウドの「あ…」って声が聞こえた気がした。

あ…。ちょっと助けて貰っといて素っ気なかったかな。
でもごめんクラウド。今あたしはエアリスを見つけたことを全力で喜びたい。

どうやらエアリスたちが向こう側から扉のロックを外してくれたらしい。
それでエアリスが扉を押したら、予想外の開き方をして前につんのめってしまったとか。





「ナマエ!」

「ティファー!」





エアリスがいれば、勿論ティファもいた。
ティファにもワーッと抱き着いて再会を喜ぶ。

そんなはしゃぎっぷりを、レッドが後ろでふっと笑って見てた。

うん!ちゃんと全員いるね!





「ようやく揃ったな。さっさと抜け出して、屋上へ行こうぜ」





突き飛ばされたバレットが立ち上がりながら言う。

皆も頷いた。

やっと全員が揃った。
この事実はかなり大きいよね。





「向こうにエレベーターがある。動くかどうかは、宝条次第だが」





レッドが通路の奥を見てそう教えてくれた。

確かに動くかどうかはわからない…。
でも、全部の研究室を通ったし、これで博士の気も済んだかもしれない。

とにかく望みに賭け、あたしたちはエレベーターの方に行ってみることにした。

でも、その前に。





「クラウド」

「ん?」





皆が歩いていく中、開いた通路の中に最後に入ったクラウド。
あたしはそんな彼を待ち、ちょっと声を掛けた。





「へへへ、さっきありがと、助けてくれて」

「さっきも言われたぞ」

「いいの。何度だって言うの。それに2回助けてくれたでしょ?」

「2回?」

「今と、モンスターに追っかけられた時」

「ああ…」

「ね!だからいっぱい感謝してるので!」

「大袈裟だな」

「そんなことないよー」





今の扉だけじゃなくて、モンスターに追いかけられた時も庇って落ちてくれた。

やっぱりさっきちょっと素っ気なかったかなーと思ったのもあるけど、お礼をちゃんと言いたかったのも本当。

大袈裟上等!
クラウドが笑ってくれるなら、あたしはそれで満足です。



To be continued

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