マッドサイエンティストの我儘



クラウドとレッドと逸れた仲間を探す途中、扉を見つけてその中に入ってみた。

中にあったのは階段と通路。
でも一本道。

真っ直ぐに進んでいくと、奥の方から音が聞こえてきた。





「銃の音が、する…?」





あたしは耳を澄ませた。
すると、やっぱり聞こえた銃声。

銃声って事は、もしかしたら。

そう思ったのはあたしだけじゃない。

音に気が付いたクラウドは一足先に駆けだした。
あたしとレッドもすぐに後を追う。

奥には半開きになった扉があった。

そしてその中から聞こえてきたひとりの男の声。





「気持ち悪ぃもんばっか作りやがって!近寄んじゃねえ!」






その声を聞いて確信。
クラウドを先頭に、急いで中に入る。

怒声と共に、見えた姿。

そこには予想通り、モンスター相手に腕の銃を振りかざすバレットの姿があった。





「苦戦だな」





一番に中に入ったクラウドはそう軽口を叩きながら剣を構える。
するとバレットもすぐにこちらの存在に気が付き軽く笑った。





「はは、遊んでやってんだよ。ちーっとな!」

「続けるのか?」

「ギア上げてくぜ!」





わりといつもつまらない衝突してるイメージだけど、実はそんなに相性悪くないよね、クラウドとバレット。
あたしも剣を抜いて、レッドと一緒にふたりのもとへ向かった。





「ナマエ、奥の奴を頼む」

「お任せを!」






クラウドの指示で、あたしは奥に向かう。

バレットがひとりで相手にしていたのは、ふよふよと浮かぶ小型の生物兵器だった。
ギョロっとした眼球みたいな。その姿は確かにキモチワルイ。

複数体いるそれを手分けして片付ける。

でもそうすると、また次から次へと新たなモンスターが投入されてきた。





「うわ!なんかロボ出てきた!」

「ったく!モンスター工場かよ!」

「あながち間違いではない」





ガタンッと格納庫が開き、中から飛び出してきた大型の兵器。
刃物のついた球体が脚がわりになっている。体当たりでもかまされたら大変なことになりそう。

まさにバレットが言う様にモンスター工場。
間違いじゃないとレッドが言ったけど、本当にねって感じ。





「おらあああ!!!」

「はあッ!!」





トドメはバレットとクラウドのふたり掛かりだった。
バレットが途切れることなく攻撃を浴びせ、その逆からクラウドが剣を思いっきり突き刺す。

全員で蓄積させたダメージ分もあり、兵器はドンッと破裂した。





「クラウド!」

「ああ、悪いな」





破裂した際、クラウドに破片が飛んだ。
鉄の破片がこすれ、痛々しく血がにじむ。

あたしはすぐに駆け寄り、回復のマテリアを発動させた。

そんなこともあり、その場の全員がなんとなくクラウドの周りに集まった。





「お前ら、大丈夫か」

「ああ、問題ない」

「うん、クラウドとあたしは落ちたとこ近かったみたいだし、レッドともすぐ再会出来たから」

「なら、いいけどよ」





あたしたちはバレットに自分たちの状況とここまでの経緯を軽く話した。
こちらはすぐに合流出来ていた組だから、さほど心配はいらないと。

バレットの方は、まだ誰とも合流出来ていなかったみたいだ。

ティファとエアリス、大丈夫かな…。
ふたりはふたりで合流出来てたらいいんだけど。

するとその時、プシュー…と音を立てながら扉の開く音がした。





「出口か」

「タイミングいいね…バトルが終わったの見計らってって感じ」





回復を終え、手を離す。
クラウドが呟いた言葉を聞きながら、あたしはやれやれと息をついた。

こんなタイミングで出口が開いたってことは、多分宝条博士はこっちの様子を観察してるんだろうなと…そんな予想がついてしまったからだ。





「これからどうする」





レッドが静かに問う。

まあとりあえず開いた出口以外に出られそうなところはないからそこは通るとして。
最優先事項はやっぱりティファとエアリスを見つける事だ。





「まず、ティファとエアリスを見つける。それから屋上だ。どっかにエレベーターがあんだろ。邪魔は入ったがやることは変わらねえ。行くぞ」





バレットはそう言って歩き出す。
あたしたちもその後を追った。

全員が扉の外に出ると、扉は自動的に閉じてしまった。





「え!閉じた!…ふぬぬっ、と…まあ、開かないよね」

「扉がロックされたようだ。引き返すのは無理だな」





最後に出たあたしとレッドは、扉に触れて開くかどうかを確かめてみた。
そんなに力いっぱいにやったわけじゃないけど、まあロックされてるのはわかった。

本当、宝条博士に誘導されてる感がありありだ…。

ともかく進むしかないのでそのまま道なりに進んでいく。

するとまた、レッドに金網を伝ってもらう感じのアレが出てきた。





「レッド〜…」

「任せろ」





あたしが声を掛けると、レッドはすぐさま駆け出してまた器用に金網を渡ってみせた。
おおー、何度見ても流石だ。

はじめて見たバレットも「大したもんだな」と感心しているようだった。

さて、と。
あとはまたレッドにレバーと下ろしてもらえれば…。

そう思って向こう側のレッドを眺めていると、今回はちょっと異変が起きた。





「えっ、あ!」





急に飛び退いたレッドに驚く。
今回は、ひとりきりのレッドの元にサンプルモンスターが数体襲い掛かってきた。

まずい、どうしよう…!!

数は4体。
1、2体ならともかく、これじゃレッドに分が悪すぎる…!

でも、その危機はすぐに脱せた。



ガランッ…!!



突然、上の方から人が抱えられるくらいの大きさのカプセルがいくつも転がってきた。

それはうまくレッドを避けモンスターだけに当たると、そのまま巻き込んで下に落ちていった。

え!?超絶ラッキー!?
って、そんなミラクルある!?

何事かとレッドは上を見上げる。
あたしたちも同じように、カプセルが転がってきた先を見た。

するとすぐに、レッドを助けてくれたその正体がわかった。





「あ!ティファ!!エアリスー!!」





あたし、助けてくれたふたりに向かって両手を振った。





「「ナマエー!!」」





ふたりも手を振り返してくれる。

レッドのいる場所のちょうどひとつ上の階層。
どうやらティファとエアリスがレッドを助けるためにカプセルを落としてくれたらしい。

ティファとエアリス、やっと発見!!





「待ってて、私たちもそっち、行くから」





エアリスはこちらに向かって叫んだ。

ふたりは奥にある扉へ消えていく。
多分そっちに階段があって、下に降りてきてくれるのだろう。

あたしたちもレッドにレバーを下ろしてもらい、向こう側に渡ってふたりの事を待った。

ふたりは降りて来る。
でも、ふたりが降りた部屋はバリアのような壁で覆われていた。

透明だから中は見えるけど…。

でも、互いに目の前まで来ても、声が届かない。

ふたりは中から口パクで、何かをこちらに指示した。
どうやらこちらとあちらを繋ぐ通信装置みたいなものがあるらしい。

それを察したあたしたちはすぐにPHS Terminalと書かれたその通信装置の元に向かう。

クラウドがスイッチを押し起動させれば、それはすぐに向こうと繋がった。





『もしもし、クラウド、聞こえてる?』

「ああ、そっちは無事か?」

『この通り。でも、どうしよう…この部屋、出られないみたい』





壁の向こうで、ティファは困ったように辺りを見ていた。

ティファとエアリスのいる部屋には扉がない。
あたしもそれとなく壁を見てみたけど、確かに出口がなかった。





『あー、聞こえるかね?』





そんな時、辺り一帯に宝条博士の声が響いてきた。
多分、この声は、ティファとエアリスの方にも聞こえてる。

こちらの最悪な気分とは裏腹に、宝条博士は嬉々とした声であたしたちに語り掛けてきた。





『ふふふ、どうだね、私の実験場《鑼牟》。すなわち世界の最先端の居心地は。光栄に思いたまえ。私の大いなる仮説の検証に君たちも貢献させてやろう。準備が整い次第、第三研究室の扉を開ける。いや、そこにいるならちょうどいい。準備の方も手伝って貰おうか。有益なデータを期待しているよ』





なんか、好き勝手なことをひとりで喋ってる。

貢献?準備も手伝い?
あのマッドサイエンティスト…あたしたちに何かさせるつもりらしい。





「準備だあ?あの野郎、何を勝手に」

『無視して先に進めない?』





イラつくバレットに、無視出来ないか提案するティファ。
でもそれを聞いたレッドはふるっと首を横に振った。





「奴の事だ。都合のいいデータが採れるまでここから出す気はないだろうな」

「なんちゅー迷惑な…」





あたしはレッドの隣にしゃがみ、げんなり顔を歪める。

まあここまでも誘導されてる感あったけど…。






『研究室って言ってたよね。さっき、上で扉を見た気がする』

『行ってみる?』





ティファとエアリスの方はさっきいた階で研究室の扉を見ているらしい。

都合の良いデータが取れるまでというのなら…。
逆を言えば、宝条博士が満足すれば用済みで出してもらえるのだろうか。





「手助けできないぞ。気を付けてな」

『うん、わかってる』





クラウドが気遣えば、ティファは頷く。





「俺たちはここで待ってる。何かあったらすぐに通信だ。いいな?」

『りょーかい』





バレットがこちらは此処を動かないでいる旨を伝え、エアリスが明るく答えた。

あたしは、扉の向こうを見る。
ふたりと目が合ったから、気を付けての意味で軽く手を振った。
ふたりは頷き、微笑みながら振り返してくれる。

こうしてティファとエアリスは、研究室の方に向かっていった。





「第三研究室…か」





ふたりを見送った後、あたしは宝条博士の言葉を振り返っていた。

さっき宝条は、第三研究室を開けるって言ってた。
つまりは複数の研究室があわけで、それぞれ数字が振ってあると。





「ナマエ、どうかしたか」

「あ、クラウド。いや、あたしたちがさっき出てきた部屋さ、01って番号が書いてあったの、覚えてる?」

「ああ…バレットを見つけた部屋だな」

「うん」





まだ考えの途中。
整理は出来てないけど、でもクラウドと一緒に考えた方がいいかもしれない。

あたしは気になった点をクラウドに話した。





「01って事は、もしかしたらあそこが第一研究室だったのかなと思って」

「…ティファたちが向かったのは第三研究室。それぞれの扉の上にあの番号が振ってあるってことか」

「うーん、多分だけど…そうかなあと」

「まあ、俺たちが戦わされたのもデータを取るためだろうしな」

「そうだとすると、多分ティファとエアリスも…」

「モンスターの相手をさせられるだろうな」





宝条博士の言う検証って言うのは、多分戦闘データを取る事なんだと思う。

つまり、戦闘は不可避…。
ティファとエアリスだけでバトルの線が濃くなると、クラウドの表情も険しくなる。

…ティファとエアリスも強い。
だから、ちょっとやそっとの敵なら大丈夫。

それは知ってるけれど、やっぱり心配はする。

ふたりの無事を祈り、あたしはぎゅっと手を握り締めた。



To be continued

prev next top



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -