逸れた仲間たち



「ナマエ、ナマエ…」

「う…うう…ん…」





誰かの呼ぶ声。
肩に触れられている、あたたかい感触。

あれ…あたし、なんで寝て…?

気づいて軽く身じろぎ、ゆっくりと瞼を開いた。





「!、ナマエ…平気か?」

「…う…クラウド…」





瞼を開くと、こちらを心配そうに覗き込むクラウドの顔が映った。

とりあえず上半身を起こす。
クラウドが肩を支えてくれた。

体を起こして、見渡してみた景色。

そこは、おどろおどろしい空間だった。

あー…そうだ。
ここ、宝条博士の研究施設でした…。

思い出してちょっとげんなり。

さっき、JENOVAとかいう生物のポッドの前で、クラウドが銀髪の男と対峙した。
でも、その男は長刀で軽く足場を斬り落として…。

多分、全員が落ちてしまったはずだ。

だけど今、クラウド以外の皆の姿は見えなかった。





「…クラウド、皆は?」

「いや…近くにはいなさそうだ。多分離れたところに落ちたんだろうな」

「…そっか。あたしはクラウドに駆け寄ったから、近くに落ちたのかも」

「そうかもな。大丈夫か?どこか痛みとか無いか?」

「うーん…うん、どこも痛くないし、平気そう。うん、あたしは全然大丈夫!」





あたしはすくっと立ち上がり、両手を広げて無事をアピールした。
うん、あたしは元気です!

するとクラウドもふっと笑い、立ち上がった。

まあ、クラウドの近くに落ちたのは、不幸中の幸い…だったかな?





「ていうかさ、あたしたちちょっと落ち過ぎじゃない?コルネオのとこでしょ、列車墓場でも横に倒れた電車の上から落ちたし、あと七番街の地下とか!」

「まあ、確かにな」

「最近ね、落ちるたびにああまたって思うの…それおかしくない?」

「俺は伍番魔晄炉から教会にも落ちたな」

「…それは一番やばいやつ」

「ふっ…かもな」

「笑い事じゃないよー…無事だったからいいものの!」

「ああ。あんたが元気そうで良かった」

「ええ!この通り!とにかく、もうこれで落下は最後にしていただきたいね!」





本当、何回落ちるんだまったくもう。
慣れたくないぞ、こんなもの。

結構な高さから落ちたし、皆も無事だと良いんだけど…。

とりあえず、皆と合流しなくちゃね。





「じゃあクラウド、早く皆のこと探そ」

「ああ」





ふたりで頷き合う。
こうしてあたしとクラウドは皆を探すべく、辺りの探索をはじめた。

皆を探しながら、ここから脱出する方法も一緒に探さないと。
元の場所には戻れるんだろうか。

そんなことを考えながら、進む。
でもその頭の隅で、あたしはちょっと気になってることがあった。





「ねえ、クラウド。頭痛は大丈夫?」

「ああ、なんともない」

「そっか。ならいいんだけどね…」

「…どうかしたか?」

「うーん…ちょっとだけ、聞いてもいい?」

「ん?」





しばらく歩くと、何かのレバーがあるところに着いた。
クラウドはそこで止まり、レバーを確かめる前に問いかけをしたあたしに振り返る。

うーん…まあ、なんとなく急いでる今聞くことでもないのかもしれないけど。

やっぱりちょっと、気になるから。





「あのさ、さっき橋の上で会った人って、セフィロス…だよね?」

「!」





セフィロス。
その名を口にすると、クラウドの顔色が変わった。

英雄セフィロス。
この世界で暮らしていて、まず名前を知らぬものなどいない有名なソルジャー。

顔も、新聞やテレビなんかでよく取り沙汰されてたから、知ってる。

さっき、クラウドは本当にあんたなのか…と言っていた。
その声が、なんとなく重苦しそうに感じて。

そしてセフィロスの方は、感動の再会だと…。

結構、雑な推理。
でも、ふたりの間に何かあったのかもって、それくらいを想像するのは容易い。

その時あたしの頭に浮かんだのは、クラウドとのスカイフロアでの会話だった。





「…スカイフロアで言ってた、いつか決着をつけなくちゃならない相手って、もしかして…」

「…鋭いな」





クラウドは短くそう言った。
そこで確信に変わる。

…やっぱり、そういうことか。

クラウドの言っていた因縁の相手とは、セフィロスを指していたのか…。





「そっか。わかった。ありがとう。とりあえずスッキリした」

「それ以上の事はいいのか?」

「うん。今は大丈夫。長くなるって言ってたよね。今は脱出に専念した方がいいと思うから」

「そうか…」

「落ちいたら、聞かせてくれるんでしょ?」

「ああ…ナマエには話したい」

「うん!ちゃんと聞く」





あたしは頷き、そして少しだけ微笑んだ。
するとクラウドも同じようにしてくれる。

とにかく今は、進むことに専念しよう。

そうしてクラウドは目の前にあるレバーに手を伸ばした。





「わっ、なんか出てきた」

「実験用ポッド…足場にしてやる」

「崩れたりとかは平気そう?」

「ああ。案外丈夫だ。行こう」





レバーを下ろすと、壁に沿って実験用ポッドが飛び出てきた。
横向きに飛び出たそれは、ちょうど離れた通路に面しており、足場として利用出来そうだった。

クラウドが乗っても大丈夫なことを確認してくれ、ふたりで向こう側へと渡る。

何だか通路やフロアが変に分かれてて、わかりづらくて迷路みたい。

しかも流石宝条博士のテリトリーなだけあって、モンスターもうようよだった。





「ううっ…普通にモンスターも出るとか…」

「宝条の施設だからな」





あたしは「はあ…」と息をついた。

モンスターって宝条博士が関わってるんだよね…。
多分、実験中のサンプルモンスターとか、そういうのも混じってる。

…放し飼いですか、この野郎。





「ううー…また出たし!」

「やるぞ」

「はあー…りょーかい…」





歩く度にうようようようよ。
いくらクラウドと一緒とはいえ、連戦だとうんざりしてくる。

よいしょ、とまた剣を構えたその時、タタッ…と何かが近づいてくる音が聞こえてきた。





「手を貸そう」

「あっ、レッド!!」





足音の正体はレッドだった。
クラウドが「頼む」と言えば、彼は了解代わりに勢いよくモンスターに飛び掛かって噛みついてみせる。

うわあ、やるうー。

そういえばレッドが戦うところって初めて見た。
つまりは初めての共闘というわけで。

あたしたちは互いにどんなことが出来るのかを確認しながら、その戦闘を終えた。





「レッド!よかった、無事だったんだ!」

「ああ」

「ていうか強いんだね!?頼もしくてびっくりした!」

「そうか。力になれたなら何よりだ」





戦闘終了後、あたしはガバッとレッドの傍にしゃがんで再会を喜んだ。

レッドめっちゃ強かった!
体当たり、噛みつき、魔法まで使えて、その戦い方はかなり多彩。

すごいねー、強いねーと褒めまくる。
するとわりと満更でもなさそう。

何が得意なのとか色々話したいところだけど、今はそれどころじゃないか…。

再会の喜びはこれくらいに、あたしたちは互いの状況の確認を始めた。





「そちらはふたりか」

「うん、レッドの方は…」

「ティファたちは?見たか?」

「近くにはいないようだ」

「そっか…」

「探すぞ」





レッドもある程度周りの探索はしてくれていたようだけど、他の3人の手掛かりは無し。

まあでもレッドと再会出来たのは良しだ。
こうしてあたしたちはレッドを加え、再び探索を続けた。





「……。」

「あっ」

「どうした?」





先に進むと、またさっきみたいにポッドを足場に出来そうな場所が出てきた。
それに気づいたクラウドとあたしが足を止めると、レッドが不思議そうに見上げてくる。

でも、さっきと違ってちょっと問題あり、かな。

あたしたちはレッドにそれを説明した。





「あれを使えば、向こう側へ行ける」

「うん、ポッドが出て来るの。でも、そのレバーが向こう側だね…」





さっきと違う問題。
それは操作するレバーが渡った先にあるということだった。

これじゃどうしようも出来ないな…。
魔法でも撃って動かせないか試してみるか…?

そうと考えていると、それを見たレッドは「ふむ…」と足場の際まで進んだ。





「私なら跳べそうだ」

「え?」





どゆこと…?
っと思った瞬間、レッドは壁際の金網を器用に蹴っていとも簡単に向こう側に渡ってしまった。

…ええっ!?!?





「レッドすげえ!!!!」





その見事な身のこなしに、あたしは思わずパチパチと拍手しまくった。

いや、え!だってそんな簡単に!!
こういうとこも渡れちゃうの、君!!

レッドは拍手に気をよくしたのかフッと軽く笑いこちらに振り返った。

…やっぱ褒めると結構喜んでくれるよね?

まあそれはともかくで、レッドはレバーに飛び掛かるとこれまた器用にそれを下ろしてくれた。
おかげで先程と同様、足場代わりのポッドが飛び出てくれる。





「これでいいかな?」

「すっごいレッド!!本当助かった!!ね、クラウド!!」

「あ、ああ」





あたしの興奮は相当だったか。
同意を求めたクラウドはちょっと困惑してた。

でもレッドへの感心は同じだったらしく、すぐに頷いてくれた。

いや、まじで凄いぞ、頼もしいぞレッド。
この調子なら、逸れた皆の場所にもちゃんと行けるかも。

こうしてあたしたちはティファ、エアリス、バレットを探すべく、また先に進んだのだった。




To be continued

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