本当の敵



このままではキリが無いから、今目の前にいるフィーラー達と同時に本体も叩く。
そう判断したあたしたちは、二手に分かれて戦う事になった。





「んじゃあ、俺はデカブツだな!」





大物が大好きなバレットは真っ先に本体の方に駆けて行く。
レッドもその後を追った。

本体を叩くのはバレットとレッド。

残ったあたしたちは、ふたりのところに分身であるフィーラーを行かせないように足止めする。





「お前の相手は俺だ!」

「絶対そっちには行かせないから!」





クラウドと、ティファとエアリスと一緒に残りのフィーラーを倒す。
4人で武器を構え直し、あたしたちは再びフィーラーと対峙した。

そして弱らせて隙を生む度に、バレットやレッドに叫んだ。





「バレット!レッド!やっちゃってー!!」





その声に答える様に、ふたりは本体に向かって攻撃を放つ。
すると、ぼろりとまた崩れ、光が走った。

光はあたしたちの傍でまた弾ける。

するとやはり見たことのない光景が、頭にパッと浮かんだ。





「…クラウド…セフィロス…」





見えた姿を思わず呟く。
今度見えたのは、剣を振りかざし真っ直ぐにセフィロスに向かって行くクラウドの姿。

これも、あたしたちが捨てようとしている未来の一つ?

そして戦い、崩して光が溢れる度、知らない景色は頭をよぎった。





「っ…」





弾けるマテリア。ぽちゃん、と水に沈む。
それと…祈りを捧げる女の人。

あれは…エアリス?

顔は、よく見えない。
だけど、エアリスによく似た特徴の女の人が手を組んで祈る姿が見えた。

そして、これがトドメだと言うかのようにバレットとレッドが最後の一撃を放ったとき…もうひとつ、見えた。





「え…」





森のような場所。泉があって、その中に誰かいる。

よく、見えない…。
男の人…?

その人は、何かを抱いているように見えて…ゆっくり、泉に沈める様に、手を離す。

…男の人…いや、あれは…。





「…クラウ、ド…?」





零れた声は、彼の名前。
よく見えないけど、でもその男の人は、クラウドに見えた。

そしてその声は、なんだか少し震えた。

どうしてなのか、よくわからない。
だけど流れてきた時、すごく…悲しい気持ちになった気がして。





「やった!」

「うん」





でもその時、喜ぶエアリスとティファの声が聞こえて我に返った。

あたしたちが相手をしていたフィーラーは全部片付けた。
本体も、もうほとんど崩れている。

トドメは刺せていなかったのか…。
でも、もうあと一太刀でも喰らえばすべて崩れるだろう。





「はあッ!!」





クラウドが剣を振るう。

破晄撃。
斬撃を放つ、クラウドの得意技。

それを喰らえば、今度こそ本当にトドメだった。

バレットとレッドもこちらに戻ってくる。

皆で見上げれば、巨大なフィーラーは破裂するかのように今までで一番大きな光を放つ。

それは一気に辺りを眩く包んで、あたしたちを飲み込んだ。





「ここは?」





クラウドに声がした。

ゆっくりと目を開けば、そこは今までいた場所とは違う景色が広がっていた。

小さな光の粒がたゆたう、白い空間。
足元は、ぴたん…と水が跳ねる。





「…ううん」





クラウドの言葉を聞いたエアリスはゆっくりと首を横に振った。
エアリスも、今がどういう状況なのか把握出来ていないらしい。

皆、全員一緒にいるけれど…。

あたしは下を見つめ、ぱちゃ…と軽く水を蹴った。





「ナマエ…」

「え?」

「大丈夫か」

「クラウド」





俯いたように見えたのだろうか。
その時、クラウドが声を掛けてくれた。

あたしはクラウドを見上げ、平気だよと少し笑って首を振る。

でも、クラウドの表情はまだなんだか晴れなかった。





「クラウド?」

「…さっき、泣きそうな声、してたから」

「え」





そう言われて、一瞬困惑した。
でもすぐ、さっき光が弾けて、泉のような場所の光景を見た時だと分かった。

そ、そんなに泣きそうな声…してたかな。

確かに悲しい気持ちになった。
でもその理由もわからないわけだし、もう全然平気だ。

だからあたしはもう一度平気だと言うように首を振った。





「なんともないよ、全然へっちゃら」

「そうか…?」





そう伝えれば、クラウドの顔もやっと少し和らいだ。

でも、やっぱり…ここはどこなのだろう。
その疑問は消えていないから、あたしたちは辺りを見渡す。

するとその直後、突然クラウドがハッとしたように振り返った。





「クラウド…?」





何処かを見つめ、でもその瞳は怯えるように震えているようにも見える。
あたしもその視線の先を追ったけど、そこには何もない。

エアリスもクラウドの様子に気が付いたようでそっと顔を覗くけど、クラウドの瞳は揺れたまま。

でも、それから程なく…その空間にある異変が起きた。





「えっ…」





白く澄んでいた空間。
でもそれが突然、赤く…暗く…染まっていく。

不穏な雰囲気。
その場の誰もが感じ取った。

次の瞬間、目の前で急に大きな爆発が起きた。





「うっ…!」





あまりの衝撃に目を閉じる。
でも、そうして次に見た景色は荒れていた。

ボロボロに崩れた大地。
衝撃に破壊されたまま、辺りに漂う岩。

そしてその中心にいたのは…。





「セフィロス?」





クラウドが呟く。
その声に見れば、そこにあった人影は確かにセフィロスだった。

セフィロス…。
今の爆発は、セフィロスの仕業なの?

そう見つめていれば、その端正な口元がゆっくりと笑みを作る。

そしてセフィロスは片手を軽く上げた。
するとそれに合わせて辺りの瓦礫が集まり出す。

…まさか。

ちょっと、嫌な予感がした。
でもその予感はすぐに確信に変わる。

セフィロスが手を此方に振りかざせば、瓦礫は一斉にあたしたちの元に降り注いできた。





「うわああ!!」

「きゃああ!!」





あたしたちは慌てて後方に逃げた。
でもその衝撃は尋常じゃない。

瓦礫の直撃こそ免れたけど、振ってきたその衝撃であたしたちはバラバラにふっとばされてしまった。





「うっ…よ、と…!」





列車、建物の破片。
色んなものが一緒に飛ばされてる。

あたしはそれを剣と魔法でどうにかいなし、なんとか足場を見つけて着地することが出来た。





「皆…っ、どこ…」





立ちあがって、辺りを見る。

皆…どこだろう。
本当にバラバラになっちゃった。

なんとか合流しないと…。

でも、飛ばされた時、セフィロスが向かった先だけ見えた。

長い髪をなびかせてセフィロスが一直線に向かった先は…クラウドの元だった。





「クラウド…」





それが見えたから、クラウドのいる方角だけは何となくわかる。

それにセフィロスと戦ってるのなら、助けに行かないと…。

道も、それしかわからない。
なら、迷ってる暇なんかない!





「クラウド…っ!」





あたしは走り出した。

クラウドが飛ばされた先。
セフィロスが向かっていた場所。

運命の分かれ道で、力になるって言った。

だから、行かなきゃ。

ただ、真っ直ぐに。
瓦礫を飛び越えて、あたしはクラウドの元に向かった。



To be continued


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