駆け抜けた先で



フィーラーに助けられつつも、あたしたちは何とか神羅の追っ手から逃げ切る事が出来ている。

罠やバリケードも突破し、ヘリも落とした。
あちらさんもそろそろネタ切れではないだろうか。

でも本当に、もう結構神羅側の手は潰したと思うんだ。

しばらくはバイク兵たちの姿も無い。
道なりに進む途中、あたしはちょっとクラウドに話しかけた。





「ねえクラウド。フィーラーたちのおかげもあるけど、あたしたち結構いいペースで逃げられてるよね?」

「ああ、悪くない」

「だよね!」





クラウドは一瞬だけ振り返って答えてくれた。
それだけでちょっと嬉しい。
運転してるからすぐ前見たけどね。

でも、そうして目の前にある彼の背中をまじまじと見て、あたしは思い出したことがあった。





「ていうかさ、クラウド、バイクの運転めちゃくちゃ上手いね!なるほど、これは納得した!」

「納得?なにがだ?」

「ジェシーがね、上手いって言ってたの」

「…そんな話してたのか」

「うん!」





ふと思い出したジェシーの言葉。

そうそう。
パラシュートで降りてる時、そんな話もしてたんだよね。

まあクラウドが凄いのはこっちのバイクから見ててもわかったけど。





「ごうかーく!って言ってた」

「…他に何か言ってたか」

「え?他?んー、もうちょっと荒くても良かったけど〜…とか?」

「…それだけか?」

「うん?なにかあったの?」

「いや…」





それだけか…とは。

なんかちょっとクラウドの様子がおかしい。
これと言って特別変な事は言ってなかったと思うけど、何かあったのかな。

でも口調的にあんまり教えてくれる気無さそう。





「うーん?まあでも、バイクの心得とか無いあたしでも上手いのわかるよ。ていうかよく剣使いながら運転できるね?」

「ソルジャーはバイクでの任務もあったからな」

「そっか!でも本当、手足みたいに操ってるよね!さっすがー!」

「ふっ…じゃあ、ご褒美でもくれるか?」

「え?ご褒美?もしかして、ジェシーはくれたの?」

「………。」

「え、なんでそこで黙る?」





急に黙ったクラウド。

え、だって急にご褒美とか言うから、そうなのかなって思うじゃん。
あたしの頭にはその発想が欠片も無かったから。

やっぱりクラウドちょっと変じゃない?

でも否定しないってことはやっぱ貰ったってことだよね?

あたしはきらりと目を光らせた。





「えー!なになに?何貰ったの?」

「……貰ってない」

「いや、間。嘘ってバレバレだよ。えー、むっちゃくちゃ気になるじゃん!おーしーえーてーよー!」

「……。」





背中でわーわー騒いだけど、だんまりを決め込むクラウド。

ご褒美ってクラウドから振って来たんじゃないか!
ジェシー何あげたんだ一体!!

教えて貰えなくてなんだか凄くモヤモヤする…!

でも、それ以上突っ込むことも出来なかった。
その理由は凄く単純だ。

直後、ティファが側道を見ながら叫んだ。





「何か来る!」





皆もその声にすぐ反応した。
なぜなら皆も側道からするその音には気が付いていたから。

大きな音。
なにか、凄く大きなものがこちらに向かってくる音。

そしてそれはあたしたちの真横までやってくる。





「うわ…」





それを見上げたあたしはあんぐりと口を開けた。

な、なんだコレ…。

そこに現れたのは、馬鹿でかい装甲車のようなモノ。

頑丈なタイヤがいくつも付いていて、上はドリルや火炎装置が搭載された人型のロボットのようになっている。
これ…また神羅の最新鋭の機械兵器?

物凄く嫌な予感がする。

そいつは側道の壁を破壊し、あたしたちと同じ車道へと飛び出し襲い掛かってきた。





「くっ…ナマエ、やるぞ」

「うう、了解…!」





まあ襲ってくるなら戦う以外の選択肢は無いんだけども!

クラウドはあたしが頷いたのを確認してギュンッとアクセルを入れた。

でも、これって神羅も出すモン出したって感じがする。
つまりコレを倒せば追っ手も落ち着くかもしれない。

そんな希望を見つつ、あたしとクラウドはその装甲車のタイヤを叩き始めた。





「うわー!?クラウド避けて避けて潰されるー!!!」

「わかってる!!」





装甲車はデカい図体のわりに動きが多彩だった。

ふたりでタイヤを集中的に攻めていれば、まるで足を持ち上げるかの様にタイヤを上げてあたしたちを踏みつぶそうとして来た。

あたしはわーわー喚めいた。ごめん!!
でも怖いもん!?

クラウドはハンドルを切り、踏みつけようとしたタイヤをサッと避けてくれた。
うん!やっぱお上手な事で!!?

でも、ちゃんとダメージは蓄積されているはずなんだ。
だってあたしたちの攻撃、ちゃんと入ってるもの。





「はあッ!」

「っサンダガッ!!」





また隙を見て、クラウドが剣で叩きあたしが魔法を放つ。
これで何度目かな。

でも今のダメージはひとつの転機だったらしい。

その時、ボンッ、と車体の主要部が破損したのが見えた。





「よし、あと一押しだ!いけんぞ!」





荷台から撃ってくれていたバレットもそれを見てグッと指を立てていた。

うん、やっと終わりが見えたかも!
あと一押し、それはきっと間違いない。

その気持ちからか、あたしはその時ふと続く道の先を見た。





「あれ?あそこ…」





そこで道が切れているのを見つけた。

あそこ…工事中?
先にはまた道が続いているけれど、一か所だけ道に穴がある。

多分バイクとトラックで全力疾走すれば乗り越えられる幅だろうけど…。





「クラウド、ナマエ!」





その時名前を呼ばれた。
声の主はトラックの荷台、レッドのものだ。

レッドも道が切れているのを見たらしい。
勿論、クラウドも気が付いてる。

あの穴はピンチじゃない。
チャンスだ。

あれを上手く使えば、装甲車をそこに落とせるかも。

確認はしてないけど、3人とも同じことを考えているのはわかる。
なんか以心伝心って感じ?

なんにせよ、察したあたしは少し前の方に体を詰めた。

するとそれを見計らったように、レッドが空いた部分に飛び移ってきた。





「わっ、と…レッド、いらっしゃい」

「邪魔するぞ」





タンッ、とあたしの後ろに軽く着地する。
トラックの荷台からこんな狭いところに随分と器用な事で!

まあでも、これで準備万端。

あとは一気に、皆で叩く!





「頭を頼む!」

「了解した!」





飛び移ってきたレッドにクラウドは装甲車の上部を頼み、レッドもそれを了承した。

クラウドは剣を構え直す。
ここまで魔法で戦ってたあたしも今回は剣を抜いた。

そしてクラウドはレッドも乗せたままバイクの速度を上げる。

まっすぐ向かうはトドメを刺すだけの装甲車。

傍まで来ると、レッドはバイクから飛び上がり頭部に向かった。
その一方であたしとクラウドは下部。





「ふっ!」

「それっ!!」





クラウドは大剣を突き刺しバイクの勢いで亀裂を入れていく。
あたしはクラウドみたいなパワーは無いけど、さっき組み替えたぞくせいのマテリアを使って魔法で剣の強度を上げながら同じように突き刺した。

三つの傷はトドメ。

頭部を攻撃したレッドはまた器用にトラックの荷台へと飛び移り、クラウドもまたバイクのスピードを上げる。
程なくすれば、辿りつくはさっき見えた道路の切れ目だ。

バイクとトラックは全力のスピードでその切れ目を飛び越える。

けど、致命的なダメージを負った装甲車はそこまでのスピードを出せない。
失速したそれは、切れ目を飛び越えることは出来ずにそのまま落下していく。

そしてドンッ、と大きな爆音が響いた。





「クラウド!やったあ!!」

「ああ、やったな」





それを見たあたしはクラウドの背を軽く叩いて喜んだ。
クラウドも小さく笑って応えてくれた。

でも、その喜びもそう長くは続かない。





「っ…!」

「?、クラウ…、ド」





クラウドが突然息を詰める。
だから声を掛けたけど、その理由は聞かずしてすぐにわかってしまった。

前方にはハイウェイのゲートが見えた。

そしてその前にひとつの人影…。

ゆらりと長い銀髪がなびく。
それは先ほど宝条博士の研究室で見た者と同じ。

…セフィ、ロス。





「っ」





キキーッ!!!
大きなブレーキ音が響く。

それはバイクも、トラックも。

その衝撃に、あたしは咄嗟にクラウドの腰にしがみ付いてしまった。

止まった車体。
あたしたちは再び前を見る。

…まぼ、ろし…?

そこにはもう、セフィロスの姿は無かった。



To be continued


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